表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/77

1年後 (完結)

読んでくださっている方、ありがとうございます!

1年後。


私の庭に、オレンジ色の花びらに黒い線がうごめく花が咲きほこった。


「うわあ! すごいね! 素晴らしいよねっ!!」

興奮気味に言う私のそばには、首をかしげるアルがいる。


「素晴らしい…のか? まあ、数が多い分、不気味さは圧巻だ…。しかし、ライラは、あの時の花をよく育てようと思ったな…」

そう、このオレンジ色に黒い線が入っているこの花は、パトリックとアンナさんの黒い煙をすい取った時の種から咲いた花だ。


こぼれ落ちた種を、全部回収して保管してくれていたアル。

私が喜んで植えると言った時、アルは驚いた顔をしてたっけ…。


「誰からの邪気であっても、自分の手のひらからでてきた種なんだよ? やっぱり、植えたいよ!」


「ライラは死にかけたんだぞ?!」

と、アルが納得のいかない様子で言った。


でも、どんなことが起ころうと、やっぱり、どんな花に育つのか興味のほうが勝ってしまう。


パトリックとアンナさんのあの出来事から取れた種だが、数が多かったので、裏庭を全て私の庭にしてもらって、ひとつ残らず植えた。

そして、1年かかって、今日、一斉に花が咲いたのだ。


そういえば、昨日、やっと魔力治療院から退院したパトリックから謝罪の手紙が届いたのも偶然とは思えない。


パトリックは、お兄様のルドルフ様の監視の元、厳しいと評判の他国の学園に留学するそうだ。


手紙には、「いつかライラに直接会って謝りたい。そうなれる人間に生まれ変わりたい」と書いてあった。

が、正直、私としては、もうパトリックに謝ってもらいたいとは思ってない。

パトリックへの複雑な気持ちは、彼からすい取って生れでた種を植え、世話をしている間に、とっくに、消え失せたから。


殺されかけたけれど、アンナさんに対しても同じだ。


私の身近な人たちは、この1年、私に二人のことを耳に入れないよう気を使ってくれていた。


なので、アンナさんのことも、私がしつこく聞いて、やっと、お父様が言葉を濁しながら教えてくれた。

それによると、アンナさんは、未だ不安定な精神状態のままで、拘束されて治療を受けているらしい。


自分の魔力の限界を超えて魅了をしたため、魔力のコントロールがきかない状態だったアンナさん。

そんな状態で魅了の対象者が離れてしまったことで、魔力が逆流して自分に魅了をかけ続けている状態になっているそう。そのため、他者が認識できなくなるという深刻な状況に陥っているみたい。


お父様は、裁きが受けられないことを悔しそうにしていたけれど、私としたら、その状態がまさに罰せられているように思える。



「長かったな…」

アルがつぶやいた。


「ほんとだね。1年もかかったもんね。アルも気持ち悪そうにしながらも、よく手伝ってくれたよね。ここの花たちに愛着がわいてきた?」


「…いや、まったく。…でも、花として咲いて喜んでいるような気がするな」


「やっぱり?! アルもそう思う? 私も毎回思うんだよね。…それにしても、ちょうど、アルがいる時に咲いてくれて良かった」


「花も気を使ったんだろ」


「そりゃあ、1年も世話してもらったんだもん。花たちも感謝してるよ」


アルは、学園が休みの日には、王都から辺境まで通って、この花たちの世話を手伝ってくれた。


私の変わった能力は限られた人にしか言ってないから、庭が広くなっても私が一人で世話をしている。

だから、アルが手伝ってくれて、本当に助かった。


「いや…そうじゃなくて、この花が咲いたら、ライラに言おうと思ってたことがあって…」

そう言うと、アルは手に持っていたバケツをおろし、私の方にむきなおった。


「俺はライラが好きだ。俺と結婚してくれ」


「え? …えええええっ?!」


「これからもライラと一緒にいたい。どんな不気味な花でも、育てるのを手伝う。どうだ?」


「…どうだって言われても。…アルは王子でしょ!」


「辺境伯に婿入りできるよう、とっくに外堀は埋めている。俺が、1年も、ただただ、のんきにここへ通ってたと思うか?」

そう言うと、切れ長の目を細めて、意味ありげに微笑んだ。


「だから、他のことは何も気にするな。すべてはライラの気持ち次第だ。これから先も俺と一緒にいてくれないか?」

アルの紫色の瞳が、まっすぐに私を見つめてきた。


突然の告白に驚いたけれど、すぐに心は決まった。

私は、いつの間にか、アルが来てくれる日を心待ちにするようになっていたから。


「…アルといると楽しい。アルと一緒にいたい」

そう答えたとたん、アルにやさしく抱きしめられた。


その時、いっせいにオレンジ色の花がちりはじめ、ちった先から、光の粒にかわっていく。

そして、心地のよい風にのって、光の粒は光の帯となり、空へとのぼっていった。


土に戻った自分の庭を見ながら、アルに声をかける。

「これからもどんどん不気味な種を植えていくけど、手伝ってくれる?」


「もちろんだ! 任せとけ」


「じゃあ、手始めに、王都でしか手に入らないような黒い煙をつけてきてねー。珍しい種ができたらいいなあ!」


「おい! ライラは花の種さえもらえればいいのか?!」


「そう、私は、花の種さえもらえれば満足なんだよ…。なーんて、そんなことを思ってた時もあったな」


でも、今は、アルと一緒にいられたら、それだけで大満足だ。


(完)


これにて、完結となります。

読みづらい点も多かったことと思いますが、読んでくださった方、ありがとうございました!

そして、ブックマークしてくださった方、評価、いいねをくださった方、励みにさせていただきました。ありがとうございました!


本編は完結しますが、ライラ視点では語れなかったことなど、また改めて書ければと思っております。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ