テーマパークと異世界と
異世界へ行く方法は色々あると思うのですが、こういうのもあれば良いなと思いました。
本当はボイスサンプルを作成する予定だったのに、どうしてこうなった?
とても楽しげな声が至る所から聞こえてくる
そう私は今、友達とテーマパークに来ている。ここは皆が想像しうるであろうテーマパークである。
しかし、世界を震撼させた場所でもあるのだ。
「えー皆様あちらに見えますのは魔方陣と言われるもので、小説や漫画、アニメなどの物語の中に見られる魔法を発動させる機関かと思われます」
「この魔方陣を発見したキャストの方々にお話を聞いてみました」
「あの時どんな気持ちでしたか?」
「まさか魔方陣が他に幾つも出現するなんて思いもしませんでした」
「異世界から帰ってきた方にお話をきいてみました」
「あちらの世界に行った時は夢かと思いました」
色んな話はニュースから流れてくるけど、異世界から帰って着た者が最後に口をそろえて言う言葉は
「異世界は最高だった」と
そして何故かそのテーマパークの一角に様々なタイプの魔方陣が出現したので
テーマパークの代表取締役が「ここもテーマパークの一つにしよう」と言いだしたものだからさぁ大変
そんなもの国が認めるわけないと誰もが思っていたが、
一・魔方陣に入るのは自由だが、何が起こっても国もテーマパークも一切の責任を負いません
二・魔方陣は数十種類ありますが、どの方が行けるかも帰ってこられるかも分かりません
三・異世界から帰ってきた方は、その世界の情報を共有して頂きたく思います。
なので現在職を探されている方は、希望されれば、年齢も性別も関係なくこちらで正社員として雇用させて頂きます
この三つの条件でテーマパークとして認められたのだ。
しかも…
「あなた…」
「お父さん頑張って!」
「ああ…行ってくるよ…」
怖いもの見たさ、度胸試しもあるが、やはり三番目の条件「年齢も性別も関係なく正社員として雇用」が多くの人々の心を射止めたのだ。
「お父さんが戻って来ない…」
「あなた…」
湧き上がる拍手の嵐、周りからの絶賛の声…異世界への憧れがとても強いのか涙を流して喜んでいる人たちもいた。
しかも、異世界は様々で、時間の流れが全然違う所や、まさかの1時間以内で戻ってきて「1年あちらにいた」なんて者もいるそうだ。
家族の代表が異世界転移を果たすと、特に子供を抱える親や、要介護が必要な身内がいて、働けなくて困っていた者は、生活が困難になる可能性があると言う事で、国とこのテーマパーク両方からの支援金や、その家にヘルパーさんがきてくれたりすると言うから福利厚生もしっかりしている。
「さぁ!私たちの番だよ!」と目を輝かせながら友達はそのアトラクションの入口まで私の手を引っ張っていった。
「皆さんー!こんにちはー!」
「こんにちはー!」
「声が小さいと異世界へは行けないぞー!こーんにーちはー!」
「「こんにちはー!」」
本当にテーマパークなんだなと、このやり取りで実感が沸いてきた
「今から数十個の魔方陣の説明をしていきますー!魔方陣から帰ってきた人たちカモーン!」
モクモクッとスモッグが吹き上がり、軽快な音楽と共にキャストさんが一人づつ登場してきたのだ
「まずは元からこのテーパークのキャストで「魔方陣を見つけた」と言い残して三年後、魔方陣から帰ってきた初めての人!!赤城さん!」
まるでアイドルが登場したような盛り上がりに、逆に冷静になってきた自分がいることに気が付く
「あれが異世界から帰ってきた人…素敵だね!」なんて友達が言う…いや確かに素敵と言うか…凄い人なんだと思う、思うが…
「さて次は、魔方陣が増え始めた時、誤って魔方陣に転倒したけど帰ってきた!こちらも元からキャストの黄島さん!!」
こちらも盛大な拍手で出迎えられる
「そうだよねー転んだら異世界…凄いね」
と友達、「そうだよね」しか返せない
こんな感じで【帰ってきた人】の紹介と、この魔方陣から行ける世界の話などをキャストさんのオーバーリアクションが入った説明で聞いていく
「私の行った世界ですが、魔法は当然のように使えるようになって、手から氷が出た時なんかは本当に異世界にいるんだと時間が止まったようでしたよー!」などの話や
「僕の行った世界ですが、魔法こそは無かったものの、植物の進化が凄くて、夜でもランプとして使える物もありましたー!」とか
「この魔方陣で行ける世界は、島が幾つか浮いていて、そこには背中に綺麗な羽の生えた人たちが住んでいて、しかも友好的で楽しく過ごすことができましたよー!」などの話をされた
友達ともし行けるとしたら、どんな世界に行きたいかを事前に話し合っていたので、魔法のある異世界の魔方陣を選んだ。
「どちらが行けても行けなくても恨みっこ無しだからね…!」と期待と興奮、緊張に満ち溢れる友達に、私も緊張しているからか「うん」としか返せなかった。
どちらが先に魔方陣に乗るかはじゃんけんで決めていたので私から行くことになっていた。私は少し格好付けながら「じゃあ先で待ってるよ」なんて言ってしまい魔方陣の光に包まれながら恥ずかしがっていた。
「あれ?」
「おお、異世界に導かれし勇者よ、あなたをお待ちしておりました!」
きてしまった…本当にきてしまった…私は咄嗟に辺りを見渡したけど…美しく大きいお城の中だと言うのは分かるけど…友達の姿は無かった…私だけだった…
キャストさんの言う通り「この世界を救ってほしい、世界を救うと元の世界に帰れる」と王様言われ、仲間と冒険の旅に出ることになったのだが…
「勇者様!ドラゴンが現れました!一緒に魔法を唱えましょう!!」と異世界にきて初めて話した美しい神官様
「安心して呪文を唱えてください!!」王様の命を受けて初めから仲間になった優しい剣士
「その間俺たちがこいつらを引き付けるぜ!!」冒険の途中で仲間になったワイルドな格闘家
まさに夢にまでみたRPGの世界がそこにあった…
「「氷の精霊よ我と共に敵を芯まで凍りつかせよ!アイス!!」」
「ギャオオオオオオオオオオンンンン」けたたましい鳴き声と共にドラゴンが動かなくなったのを剣士と格闘家が確認し、歓喜の声を上げた
「やりましたね、勇者様!」美しい神官様は肩で息をして震えながら笑顔でそう言った
「…」身体がガクガクと震える…
キャストは言った「私の行った世界ですが、魔法は当然のように使えるようになって、手から氷が出た時なんかは本当に異世界にいるんだと時間が止まったようでしたよー!」と
本当に異世界があって、魔法が使えて…本当だった…手から氷が出た…凍傷になりかける位身体と手が冷えて、時間が止まったようだった…キャストは嘘は言ってない…嘘は言ってないけどおおおおおおおお!!
「これからも力を合わせて頑張りましょうね!」と神官が満面な笑みでやはり震えていた。
「「「えいえいおー!」」」
「・・・・・・・・」
三年後…
「魔方陣から一人帰ってきましたーーーーー!」
拍手に包まれる私にインタビューアーの人が「異世界いかがでしたか?」と予想通りの質問をしてきたので
私は「異世界は最高だった」と笑顔で答えたのだった。
完
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