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前編

クリスタルファウンテン シーズン4 は、ダークな大人の側面を描いています。

強欲で、自己中心的な大人がわんさか。。。

うそだー、こんな大人たち、嫌だーと言いたいけど、ないとは断言できないのが世の中ですよねぇ。

クリスタル・ファウンテン シーズン4

散りゆく薔薇のレクイエム


 俺がこの病院を設立したのは、そうだなぁ、もう15年も前になるか。あの頃は33歳の若さで院長に就任したことを快く思わない者もいたが、そんなものは気にしない。病院と言えば看護婦は山のようにいるし、女医だっている。俺は就任以来しばらくの間、めぼしい女を順番に味見して暮らしていたものだ。


 ところが、そのことをうるさく意見するやつがいた。山野だ。アイツはオヤジに気に入られているものだから、病院設立時から俺の監視役をしていたんだ。

 女もギャンブルも、酒すら飲まない。面白みのないやつさ。しかし、大学での成績は群を抜いて優秀だったし、正直、俺一人では経営など自信はなかったからな。ヤツの採用には反対しなかったのさ。


 ヤツのいいところはバカ正直で責任感があるってことだ。おかげで病院経営はすぐに軌道に乗った。そこで、頃合を見て俺の息のかかった看護婦に言い寄らせて、それを看護師長に目撃させた。まあ、言い逃れる方法はあっただろうに。ヤツはさっさと病院を退職して、山奥に引っ込んじまいやがった。ちょっと弱みを握っておきたかっただけなんだが。まったく、張り合いのない奴だぜ。


 その頃には、俺も院内の女には飽きてきていた。そんな時、財界の人間の紹介で診察に来たのが本能寺絹代だったのさ。

 ダンナが海外に長期滞在しているっていうのは、周知の事実だったし、ちょっと物は試しに声を掛けてみたんだ。


「本能寺さん。少し顔色がすぐれないようですが、先日のお薬はお体に合いませんでしたか?」

「いえ、大丈夫ですわ。少し、スケジュールが詰まっていたので、疲れがでたのかもしれません。」


 もともと絹代は低血圧だったのだ。顔色が悪いのは当たり前だった。おまけにその頃のテレビへの露出度の高さを思うと、疲れているのは当たり前。

 俺はすかさず誘い出した。


「オーバーワークは禁物ですよ。どうです。今度私の別荘にいらっしゃいませんか?黒岩岬の先にある島なんですが、穏かでいいところですよ」

「まぁ。素敵ですわね。主人は仕事が忙しくて旅行にもいけないんですもの。お邪魔しようかしら。」


 いつの話とは言わないまま、俺は絹代の出方を待った。このまま何も言い出さなければ、脈がなかったってことだろう。それはそれで、無理強いしてこじれてしまうよりいい。ターゲットはいくらでもいるんだからな。


 しかし、絹代からの連絡は早かった。その日の夜には秘書から連絡が入ったんだぜ。飛んで火にいるとは、あの女のことだ。



 今時の女ってやつは、どうなってるんだろうと思うことがある。絹代を初めて抱いたのは、黒岩岬の別荘に連れて行った日の夜だ。もう10年近くになる。つまりそれは絹代が45歳の時だった。

 しかしその体に老化は全くと言うほど見られなかった。滑らかな肌はエステの成果なんだろう。髪の先からつま先まで、年齢を感じさせるものは持ち合わせていなかった。


 絹代はよほど飢えていたんだろう。初めての夜は大変だったぜ。プライドの高い女ほど、欲望が強いという話は聞いていたが、ここまでとは思わなかったよ。

 俺はたっぷりとサービスさせてもらったよ。後からいただく報酬に見合うだけわな。


 

 絹代は、普段講演会やなんかで全国のあっちこっちに飛び回っているから、今までの女のようにべったりとしなだれかかるような女じゃなかったよ。お陰でこちらも、時々はほかをつまみ食いしながらじっくり楽しめる。そういうところもおれは気に入っていた。


 それから随分と月日がたったある日。絹代は自分の娘を極秘で見てもらいたいと言ってきたんだ。つまり、院長特権で後に医療行為を行った事実がわからないようにしてほしいってことだ。

 金持ちには金持ちなりの悩みがあるんだ。連れてきた娘は原型が分からないほどの厚化粧をしていたが、まだ高校生だった。裏から手を回して、産婦人科医に極秘の診察を頼むと、案の定妊娠していたんだな。ふふ。

 親が親なら、子も子だな。親子して、よくやるよ。


 VIPルームを貸して人目を避けて処理を行った。帰り際、娘はけだるげな表情でじっと俺を見定めるように眺めると、ばかばかしいといわんばかりにぷいと空を見上げてタクシーに乗り込んでいったよ。

 絹代かい? もちろん来てなかったよ。スケジュールが詰まってるんだってさ。娘を気にしている風でもないし、アイツはやっぱり母である前に女なんだろうな。


 その娘、美優とか言ったなぁ。12月の初めだったか医学会の集まりがあって、とある大学に出向いたときばったり出会ったんだ。2年も経って大学生になったからか、随分といい女になっていたよ。

 高校時代のあばずれが、よくもまあ変身したものだぜ。俺は笑いを堪えるのがやっとだった。


「やあ、君は本能寺さんのお嬢さんではないですか?」


 俺がしらじらしく声をかけると、見る間に真っ青になりやがった。


「随分と大人らしくなられましたね。 お母様もお喜びでしょう」

「え、ええ。母は忙しい人なので、あまりよくわかりませんが…」


 戸惑った様子がいかにも令嬢らしくなってやがる。ふん、どんな風に化けてるんだ。俺はふと、化けの皮を剥いでやりたい気分になったんだ。


「今日は冷えますねぇ。どうです、今から暖かいお店で食事でも。」


 俺は楽しげに娘の腕を取った。


「いえ、あの、ほかに予定が…」

「どんな予定です?過去のことをしゃべられたら困るんでしょ?口止め料にちょっと食事ぐらい、付き合ってもらってもいいでしょう」


 これ以上の殺し文句はないだろう。娘はあっさりと抵抗する力を失ったさ。まったく、かわいいもんだ。女はこうでなくちゃね。



 その日、俺は心行くまで若い肌を堪能させてもらったよ。やっぱり若い女はいいねぇ。絹代もそろそろお払い箱かな。


「また、機会があったら頼むよ、お嬢さん。」


 俺は身なりを整えてさっさと部屋を出たさ。娘はうつろな目をしたまま顔も上げずに転がってたが、枕元に1万円札を差し込んでやったんだ、文句はあるまい。


 急いで最上階のスカイラウンジに向かうと、絹代がすでに一人でバーボンを飲み始めていた。かすかに頬が赤い。ふふ、あの日は体力との勝負だったぜ。


 絹代との関係をキープしながら、俺は時々美優を待ち伏せるように大学に出向いたもんだ。

 しかし、そんな時代も長くは続かなかったよ。美優に惚れてるらしい男が突然俺の前に立ちはだかったんだ。


「美優さんに近寄らないでください!」

「なんだ、君は。僕は彼女の主治医だぞ。それにお母様とも親交のある人間だ。ヘンな誤解は迷惑だぞ」

「彼女がいやがっていることはわかってるんです。」

「君はなにも知らないようだな」


 たとえ振り向いてくれなくても、愛した女を守りたいってか。いい心構えだが、俺には興味がない話だった。


「君は彼女とどういう関係なんだ」

「どういう関係でもありません」


 まったく話にならない男だ。

 

 もみ合っているうちに美優がやってきたのだ。そしてそんな俺たちを見た美優はすぐさまくるりと向きを変えて、大学に逆戻りしていったのさ。

 そんな小娘一人、俺が追いかけるいわれもないだろう。男は慌てて娘の後を追っていったが俺はばかばかしくなって帰ったんだよ。

それ以来、美優を見かけることはなくなったなぁ。


 それからすぐ、俺は絹代の別荘でしばらく一緒に暮らすことになったんだ。院長と言っても、それほど仕事をしているわけではない。オーナーという立場に近い俺は、後のことを副院長に任せて絹代の所有する瀬戸内海の島に移ったんだ。


「まったく、とんでもないことをしでかしてくださったわ。あの方。大人しく悟に代替わりしてくれたらいいものを。」

「随分荒れてるじゃないか?」

「もう、ご存じないの?将さんったら、副社長を手にかけちゃったんですって。」

「ああ、あれか。随分と馬鹿なことをしたもんだなぁ。だけど、それでいいんじゃないのかい?事実上、社長職を退くことになるだろう。」


 俺はそういいながら女の肩を抱き寄せてジョーゼットのブラウスを剥ぎ取った。


「それに、君はいつだって欲望には忠実に生きてきたんだろ?ほら、今だって。邸宅ではみんな右往左往してるだろうって時に、俺を誘惑してるじゃないか。悪い女だよ」


 女の熱い息を耳に受けながら、俺はもうすっかり手馴れたその行為を行い続けたわけだ。ほとぼりが冷めるまではつまみ食いも諦めるしかなさそうだったしな。



 半年ばかり過ぎたある日。俺は見慣れた女をテレビ画面からうんざりするほど見せ付けられることになった。気も狂わんばかりに泣き叫ぶ絹代の姿だった。

 愚かな女だ。自分の娘が死んでしまったのに、気付きもしないで1月以上が過ぎていたんだとさ。ろくに面倒も見ていなかったくせに、一緒に心中したと噂の男の両親に怒鳴り込みに行ったそうだ。


 しかしその男。どこかで見覚えがある。確かに話をしたことがあるような気がするのだが。


大人の都合に振り回される若者たちのそばで、こんなダークな展開が起こっているなんて!

とことんえぐい感じで…と思ったのですが、この程度です。はい。

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