表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

第8話・レミ覚醒!?VS魔剣将

隔週水曜予定です

「最近、誰かに尾行されている気がするんです」


 ある日アカネが突然、そんなことを言い始めた。

 アカネの容姿はそれなりに可愛いが、女性慣れしてきた昨今見返すとそれなり止まり。対して元貴族のレミは育ちが外面に出ているのか文句なしの美少女。

 俺がストーカーなら、狙うのは確実にレミの方だ。


「実はレミも尾行されていたりする?」

「いいえ、私は以前一回だけ変な視線を感じて以降は、そういうのはないです」


 一応一回だけあったのか。


「うーん、でもアカネに熱心なファンがいるとして、尾行する必要があるか? アカネは以前寿引退したいと言ってたし、告白はウェルカムだろ?」

「相手は限定します。具体的には資産1兆以上の人がいいです」


 アカネは譲らない。

 少し考えてみよう、俺たちの知名度が今どれくらいかを。


「中級モンスターの撃破コンプリート半ばということで、冒険者である我々は世に知られてきているな」

「それ以前に街の支配者、大富豪として大抵の人に知られていると思いますが」

「それはまあそうなんだけどさ。だとしたら尾行されるのはアカネじゃなくて、俺になるわけで。アカネが尾行される理由がないんだよな」


 自称引退希望の魔女を追い回す理由……なんだろうな。

 いや待て、尾行がアカネの妄想だとしたら。

 前の世界にも『集団ストーカーに追われていまぁす!』と叫ぶ危ない人がいた。いわゆる被害妄想というやつだ。


「アカネ、最近色々あったから少し疲れているんだろ。宿に戻って数日ハーブでリラックスしながら過ごすといいよ。グリーンハーブ出しておきますねぇ」

「なんだかすごい屈辱的ですが……。お給料もらいながら楽させてもらえるのなら、文句は言いません。数日休ませてもらいます」


 アカネは少しだけ機嫌を悪くしたような顔をした後、一人先に宿へと帰っていった。

 そして連絡を絶った。


「参ったな、どうもアカネが尾行されてたのは本当の話だったみたいだ。変な奴に襲われていないか心配になるが」

 

 考えてみればこの世界に来てからほぼ毎日アカネと一緒だった。

 ここに来ての不本意な別れ。

 レミはアカネを慕っていたようで、やはり浮かない顔をしている。

 二人でお通夜のようになっていると、やがて冒険者ギルド経由で一通の手紙が届いた。


「どうでしたか?」

「……アカネの居場所を知っているから指定した場所に来いって書いてある。これは行くしかないな」

「もちろん私も行きます!」


 二人で急ぎ向かったのは、街からかなり離れた場所にある廃墟。


「ふふふ、来たか」


 廃墟では黒い鎧と黒い兜という格好の、実に怪しい剣士が一人で待っていた。


「約束通りきたぞ! アカネは無事か? アカネを返してくれ!」

「ふはは、そう焦るな」

「わかった。アカネを無事返してくれたら、身代金として金貨10万枚を払おう。なんなら金貨100万枚を支払う」


 剣士はしばらく沈黙した後に回答した。


「ふは、えっ? うむ……正直提示された額が凄すぎて驚いてしまったよ。貴様、この世界の道理に疎い転生者だな。いいか、この世界では貴族の身代金でも金貨100枚が相場だ。安易に10万だの100万だのと値を釣り上げて驚かせるものではない。まず金に頼ろうとするそのさもしい発想が我には許せない」


 誘拐犯に説教されてしまった。


「人質を取ったお前にだけは言われたくねぇ! 一体何が望みなんだ!」

「我の目的は……貴様と勝負することだ、娘!」


 剣士が示したのは意外にもレミ。


「我の名は魔剣将ゼテネギア! かつて大陸を支配した十六魔将の一人だ! そして剣聖フォルテに封じられた紅の剣の悪魔でもある! 封印を解きこの世界に再び復活したが、すでに仇敵のフォルテは寿命で死亡し、恨みを果たすべき相手もいない……と諦めていたが、ここ最近になり剣聖フォルテの技を使う少女がいるとの噂を聞いた。人質を取ったのは我との一騎打ちを断れないようにするため。さあ娘よ剣を抜け、尋常に勝負しようではないか!」

「待て、勝負なら俺が相手をする! レミを傷つけないでくれ!」

「だーかーらーさー、我は魔剣将でゼテネギアで紅の剣なわけ。仇はあくまでも剣聖フォ

ルテだ。それなのに知らない魔法使いと勝負する理由がどこにあるんだ? わかったらお

前は指でもくわえながら大人しく勝負の行方を見ていろ!」


 悪魔の説教は辛らつだ。


「でもレミは……」

「大丈夫です、ユウタ様。なぜか今、私は負ける気がしません。絶対にゼテネギアを打ち破って見せます」

「レミ!?」


 レミは裁きの聖剣を鞘から抜くと、臆する様子もなくゼテネギアと対峙する。対するゼテネギアが抜いた剣は鮮血の真紅。

 ゼテネギアの本体は剣で使い手は操られているだけの一般人ではないか? と推理する。

 代償魔法で介入してもいいが一般人を吹っ飛ばすのは気が進まないな。

 俺は覚悟を決めて二人の勝負を見守ることにした。


「死ねっ、小娘!」


 闘牛士のように剣を構えて、直線上に突きの連打を叩きこむゼテネギア。

 剣閃があまりに速すぎて、すべての動きを目にとらえることができないほどだ。

 対するレミは動に対して静。

 最小限の動作で突きを躱しまくり、あるいは切り落としの一閃で紅の剣を払う。

 レミってあんなに強かったのか。

 違う。

 彼女は今剣に使われてるのではなく、剣を使っているのだ。

 俺が呆けたように驚いているとレミ、いやレミの姿をした誰かが笑った。


「相変わらず突撃しか能がないのだな、君は! 剣技はその名の通り技であり、技術。つまり……実践経験により継承された力のことだ!」


 レミ(仮)は宙に高く跳ねると、驚くことに高所から鎌鼬の一閃を放った。


「絶影の太刀・一の型、飛燕閃空!」


 風の刃は紅剣を振るう相手の体を直撃する。

 だが不可解にも刃はゼテネギアの持ち主には傷をつけていない。

 それでもゼテネギアは苦しみの悲鳴を上げた。


「ぐっ……! この技は忘れようもない、我に初めて傷を与えたあの技! 悪魔の魂にすら傷をつける絶影の太刀! 貴様、生きていたのかフォルテぇぇぇえ!」

「いや、死んだはずだが剣を受け継いだ娘と妙に相性が良いらしくてね。霊体ながらつい体を借りてしまった。だが望みはこのフォルテとの再戦なのだろう? なら決着をつけようじゃないか!」


 レミ、いやフォルテの猛反撃の数々に、ついにゼテネギアは膝を屈し倒れた。


「……我の負けだ。人質はこの廃墟の隠し扉の奥にいる」

「素直でよろしい! じゃあ介錯といこうか! 再封印のためにまずは所持者から殺す!」


 豪快に剣士の首を刎ねようとするフォルテを、さすがに俺は止めた。


「待ってください、その、フォルテ……さん? 剣を持っている人は一般人だから殺さないで欲しいですし。そもそもその体はレミの物なので、可能ならレミに返してもらえませんか?」

「ああ、君が私の愛剣ヴャスリーグに8千万も払ってくれた奇特な買い手か。ふむ……どうやらさっき言ったように、私の剣とこの体の持ち主はとても相性がいいようでね。私もこの世に未練があるわけじゃないけど、時々でいいから、この子に憑依させてもらえないかな? 剣の腕前は保証するし、なんなら大人のお姉さんのあれやこれを知りたくないかい?」

「いえ、フォルテさんがそう言っても、体はレミのものなので、そういうのはなしでお願いします」


 レミの顔をしたフォルテさんの誘惑に、俺は鉄の自制心で耐えた。


「じゃあレミちゃんには時々憑依させてもらうだけってことで。ゼテネギアの剣は多分壊せないだろうから、湖の底にでも沈めればいいと思うよ。またね」


 フォルテの幽体が抜けたのか、レミがガクッと体を落とす。


「大丈夫か、レミ」


「あ、私意識が朦朧としていて……それよりアカネさんを助けないと」

 レミの言葉に初心を思い出し、隠し部屋を探すと、あっさりとアカネは見つかった。手を縛られてはいるが、すやすやと寝ており無事な様子。

 寝ているのは良かった。

 アカネの身代金に金貨百万枚払うと言ったのを聞かれていたら……と思うと少し気恥ずかしいし、今後色々とタカられるという確信があったから。

 アカネが起きたら、厄介だったゼテネギアを湖にでも捨てに行くか。


(残金1兆7千億2003万円)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ