詩版「異国のバナナ売り」
高層の数本のビル
それとは不釣り合いな
裏通りの泥の道
突貫工事の急成長は
暗く細いその通りを
ドヤ街ごと
置き去りにした
深夜2時
つまらぬホテルの一室
逃れる為に外に出た
裏通りの読めない文字の看板
街灯はチカチカと
定まらない
消えては点き
点いては消える
その灯りの下
リヤカーのタイヤに
右足を乗せ
安タバコを一服する男
バナナ売り
売れ残りのバナナは
リヤカーの奥底に少し
「ひとつ買わないかい?」
私はダンマリを決めて
その街灯の下を
通り過ぎた
振り向くと
バナナ売りは
私に向かって
アカンベエをしていた
富国からきた私が無視をし
貧国の男が私を見下す
身体を返した私
「一房くれ」
彼がリヤカーの荷台
その底から取り出したバナナ
腐っている
「いくらだ?」
「ノーマネー」
バナナを私に渡すと
タバコを咥えたまま笑った男
小銭の枚数を数えていた
私は左手に一房ぶら下げ
その場を後にした
そこから
三つ目の街灯
パーン!
銃弾の音
バナナ売りはリヤカーの荷台の底
仰向けに
崩れ落ちた
何かに巻き込まれた
貧困の国の男
富の国の私は
関わらずと
その場を
足早に立ち去った
腐ったバナナを抱え
※この作品は同名タイトルで短編小説としても投稿しております。
『短編版. 異国のバナナ売り』
宜しかったら是非ご覧になってみてください