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人形列車 鉄亜鈴城9


「惜しかったね~」


 途中でリタイアした私をリニスが出迎えてくれました。

 次の走者の和希さんはスタート地点に立っていて、もうすぐチャレンジするみたいです。


「はぁ………はぁ………。というか、私レベルなら壁をクリア出来たら勝利でいいのは?」


 自分の予想以上の結果に驚いていると、突然シャンティに誰かからの通信が入ってきました。


「さくら~。通信が来てるよ~」

「通信? 誰からですか?」

「えっと。望からだけど」

「わかりました。繋げてください」

「はいは~い」


 通信を繋いでホログラムの画面を表示すると、そこには必要以上にアップになっている望さんの姿がありました。


「はろはろー。望だよっ」


 望さんは列車から降りた時のロックミュージシャンのような格好をしてました。


「…………望さん。まだその格好をしてたんですね」

「これからお城でカラオケコンテストがあるんだよ!」

「そうなんだ~。頑張ってね~」

「うん。頑張るよ! …………ってか何で桜ちゃん達は忍者の格好してるわけ?」

「忍者の里なので、どうせなら忍者の格好をするのも悪くないと思ったんです」

「ござる、ござる~」

「おお!? いいねぇ~。望も後で忍者になりたいな~」

「だったら望も後で私達みたいに忍者の修行をしましょうよ」

「修行ってそこのアスレチックみたいな所?」

「あれ? 何で望さんがアスレチックの事知ってるんですか?」

「え? だってここから見えてるし」


 そういえば通話の最初にお城にいるとか言ってたような。


「シャンティ。望遠鏡モードでお城を見て貰えますか?」

「お城って、あそこに見えてるのでいいの?」

「はい。お願いします」


 通話画面の横に新しい画面を出してお城の天守閣を拡大すると、そこには望さんの姿がありました。

 それに気付いた望さんは、こっちに向かって手を振って答えます。


「あっ。みんなそこにいたんだ」


 ちなみに望さんの視力は10.0なので、あっちはマテリアル・デバイスの機能などを使わなくても余裕で直接こっちの様子が見えてるみたいです。


「望みさ~ん。出番ですよ~」


 通信越しに誰かが望さんを呼ぶ声が聞こえてきました。


「あっ!? そろそろ望の出番みたい。ちょっと行ってくるよ」

「では後でこっちで合流しましょう」

「ばいば~い」


 望さんとの通話が終了してから数秒後。

 すぐに和希さんのチャレンジが始まりました。

 

 和希さんは持ち前の身軽な身体能力を活かし、本物の忍者のような立ち回りでどんどんステージを進んでいきます。


「わぁ~!? ねえ桜。あれが忍者?」

「そうですね。実質忍者です」


 私が登るので精一杯だった壁も1回でてっぺんを掴み、体を振りながらジャンプして一回転しながら着地をするといった離れ業も披露してくれました。

 

 その後も和希さんは危なげなくステージを進み、時間にかなり余裕がある状態でファーストステージをクリアしちゃいました。


「よーし。次は私の番ね」


 和希さんがステージから降りると、続いてやる気満々のリニスがスタート地点に立ってステージ攻略に挑みます。


「なあ。あいつはどれくらい動けるんだ?」

「多分、私と同じくらいですね。ファーストステージクリアは難しいと思います」

「だったら少しでも進めるようにアドバイスしてやるか」


 私達の声援を受けながらリニスの挑戦が始まりました。

 そんなに動けないだろうと思ってた私の考えとは裏腹に、無駄のない動きでどんどんアトラクションをクリアしていってます。


「なんだ。結構やるじゃないか」

「そ、そんな。ただの食いしん坊だと思ってたのに、動ける食いしん坊だったなんて!?」


 そのままリニスもファーストステージをクリアして、ゴール地点でVサインをこちらに向けてきました。

 私も良くやったとピースを返したのですが、なぜだか和希さんは難しい表情を浮かべています。


「…………何かアイツ。動きに無駄が無かったな」

「あの。そんなに良いプレイスタイルだったんですか?」

「良いと言うか、全ての行動が完璧なタイミングだった。身体能力がそんなに高くないみたいだからタイムは普通だけど、失敗する気配すら感じなかったぞ」

「そうなんですか」

「あんな人間離れした奴を見るのは久しぶりかもな」


 ギクリ。

 さすが和希さん、鋭いです。

 

「いえ~い。2人とも見てた~?」

 

 私の心配なとつゆ知らず。

 ステージをクリア出来てごきげんなリニスが帰ってきました。


「はい。ちゃんと見てましたよ」

「ふふん、さっすが私の従者ね。…………っと。そう言えば出口でスタッフの人からカード貰ったんだけど、これって何なの?」


 リニスの手には忍者の絵の付いた、黒色のカードが握られていました。


「それはセカンドステージの参加証だな。この先にあるセカンドステージに入るのに使うんだが、ついでだし行ってみるか?」

「そうですね。せっかくなので、行きましょうか」

「行くでござるぅ~」


という訳で、私達は次のステージへと進む事にしました。

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