人形列車 鉄亜鈴城2
洗面所の窓から外を見ると動いていた景色が止まっていて、車内アナウンスが流れ始めました。
どうやら駅に到着したみたいです。
止まった時にベッドの方から「ぐえっ」と悲鳴が聞こえてきたので、たぶんどっちかが列車が止まった衝撃でベッドから落ちたんだと思いますが………。
まあ気にしない事にします。
お寝坊さんなのが悪いのですから!
洗面所から出ると、望さんは早速冷蔵庫からジュースを取り出して寝起きの一杯を楽しんでるみたいでした。
「あっ!? 桜ちゃん、おはよー」
「おはようございます」
「なんか望、正義のプロレスラーになって悪いレスラーにフォールしてた夢を見たよ」
多分押さえつけられてたのは私です…………。
「それは大活躍でしたね」
「けどあとちょっとで3カウント取れたのに急に謎の乱入してきた人に1回起こされちゃったんだ」
多分そっちも私です!?
「それより朝食にしませんか?」
「おっ、いいねぇ。ステーキでもカツ丼でも、ど~んとこ~い!」
朝から全力ご飯を食べようとする望さんに続いて、まだちょっとだけ眠そうなリニスがやって来ました。
「ふぁあああ。私は紅茶とエッグベネディクトがあれば文句は無いから」
「…………2人共わがまますぎです。ちゃんと朝食はとっておきのを用意してるので、座って待っててください」
「は~い」
「仕方ないわね。今回はそれて我慢するか~」
「出来れば朝食は毎回軽めにして欲しいんですが…………」
私はカバンの中を探していると、後ろから望さんが話しかけて来ました。
「ところでとっておきのって何?」
「ヒントはカリカリした食感の牛乳をかけて食べるものです!」
「コーンフレークじゃん!?」
朝食用に持ってきてたちょっと高めのプレミアム・コーンフレークの入った箱をカバンから取りだして、プラスチックのお皿に分けて後は牛乳っと――――。
「あっ。望はモンエナかけるから牛乳はいいから」
「わかりました」
私は2つの容器に牛乳を流し込み、望さんはエナジードリンクをコーンフレークにかけて朝食が完成しました。
「けど、これだけだと物足りなくなくないかしら?」
「ふっふっふ。リニスは甘いですね。これを見てくださいっ!」
私はコーンフレークの箱を後ろに向けて、そこに書いてあるグラフを見せました。
「ほらこの五角形のグラフを見てください。コーンフレークは栄養バランス満点でカルシウムやビタミンが一杯取れるので、むしろ朝食はコーンフレークだけで良いまであります!」
たまに10角形のもありますが、今回私が用意したのは五角形です。
「それ自分の得意な部分を書いてるだけじゃない?」
「いえ、むしろ得意な物が5個もあるんです! 自己紹介カードに得意な事を5個もかけるんですよ? それにコーンフレークはパフェのかさ増しにも使えるので特技が1個増えて合計6個です!!!!」
「望はパフェのコーンフレーク好きだけど、後1段高くしたら流石に動くよ!」
っと、そういえば重要な事を忘れてました。
「2人共、ちょっと食べるのを待ってください」
「え? なんで?」
「隠し味を忘れてました~!」
はてなマークを浮かべたリニスを後ろに私はカバンまで走り。
「え~と。これじゃなくて…………あ、あった!?」
カバンの中の目的の物を見つけたので、すぐに人数分用意して2人の元へと戻りました。
「さあ、これを付けてください!」
3人で並んで赤いスカーフを付けてから腕を組み、マスコットキャラの真似の決めポーズ!
「なにこれ、おもしろ~い」
「お~。やっぱコーンフレークといったらこのポーズだねぇ~」
「これで美味しさ100倍です!」
ポージングをして「例の腕を組んでる猫」になりきった事で、もう私達の中でコーンフレーク以外の朝食という選択肢は完全に消えました。
「いただきま~す」
ちゃんと食前の挨拶も忘れないように言ってから、実食です!
スプーンでシリアルと少量のミルクを同時にすくうと、シリアルについているお砂糖とミルクに溶けあって甘い砂糖ミルクが完成。
サクサクした食感がコーンフレークのメインではありますが、サブの主役とも言える砂糖ミルクの存在も忘れてはいけません。
砂糖ミルクがあるから汁物を挟まなくても口の中がパサパサにならずに、どんどんコーンフレークを食べ進める事が出来るのですから!
栄養グラフの五角形の一部を牛乳が担当している事もあり、栄養価も満点。
最後に牛乳だけ残った場合も美味しく飲む事だって出来ます。
――――といった感じのコーンフレークの素晴らしさを2人に説きながら朝食を食べているのですが、どうやら2人はこういった事にはあまり興味は無いらしく、普通にカリカリと味だけを楽しんでる感じでした。
これは明日の朝食もコーンフレークにした方がいいかもしれませんね。
私は少し前に動画サイトでコーンフレーク特番を見て製造者の顔まで思い浮かんで食べてるというのに。
「そういえば他の味は無いの?」
一番最初に食べ終わった望さんが、食べ散らかしたコーンフレークの欠片を口元に付けながら話しかけてきました。
「あとはチョコ味のを持ってきてます」
「じゃあ夕ご飯をそれにしよっか」
「流石の私でもコーンフレークを夕飯にするのはちょっと…………」




