表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/128

人形列車 雪菓子の律2


 園内がライトアップされてお洒落空間になってからも更にどんどん人が増えてきていて、少し進むのも大変になっています。


「あら? 桜じゃない」

「――――え?」

 

 人混みで騒がしい中、私の後方から透き通る様な声が聞こえてきました。

 その声に反応して、いったん足を止めて後ろを振り返るとそこには――――。


「マリアさん!? 何でここにいるんですか?」


 列車の旅に出る少し前に、自動販売機の近くで知り合った少女が立っていました。


「何でって。マリアも旅行を楽しんでるのよ?」

「あれ? マリアさんはお使いを頼まれてたんじゃ?」

「そうだったんだけど、頼まれた物が手に入らなかったの。だからお家に帰るまで列車旅行を楽しんでるってわけ」

「なるほど、そうだったんですか」

「ね~、さくらぁ~。話なんてしてないでアイスぅ~」


 急に立ち話を始めた私に待ちきれなくなったのか、リニスが会話に割って入って来ました。 

 

「あら? 桜のお友達かしら?」

「はい。実は列車で友達になったんです」

「私はリニス。あなたも桜の友達なんだ」

 

 マリアさんはリニスの名前を聞いた瞬間、なにかを思い出したかのように一瞬だけピクリと反応しましたが、すぐに普段のちょっぴり背伸びした女の子の表情に戻りました。


「マリアよ。桜とは列車に乗る前にちょっと知り合っただけで、友達ってほどじゃないかもね」


 マリアさんはちょっぴり意地悪な笑顔を浮かべました。


「だったら、今からお友達になりましょう!」


 私は笑顔で手を差し伸べると、マリアさんは驚いた顔をしながらも少し笑って。


「そうね。2回も会ったんだし、もうそんなに知らない仲じゃないかもしれないわね」


 と、ちょっぴり戸惑いながらも私の手を取って握手してくれました。

 にへらとした笑みがこぼれ、今の私を鏡で見たら相当面白い顔が映っているかもしれません。


 ――――ふぅ。ともかく、これで新しい友だちゲットです!


「そういえば旅行って、もしかしてマリアさんもアルタイル号に乗ってたんですか?」

「ええ、そうよ。気ままな1人旅ってわけ」


 探索してた時には会いませんでしたが、多分部屋でくつろいでいたか入れ違いになってた感じでしょうね。

 意外と乗客も多かったので、見逃してたかもしれません。


「だったらこの先の街でも一緒になりますね!」

「フフ、そうね。けど、マリアは1人で行動するのが好きだからもう行くわね」

「ええっ!? 一緒に行動してくれないんですか?」

「マリアは自分の行きたい所しか行きたくないの。それじゃあ、ごきげんよう」


 マリアさんはスカートの端を掴んで、軽くお辞儀をしてここから去ってしまいました。

 そして、立ち去る時にマリアさんの首から下げているフクロウの彫刻が掘られてたアミュレットが、軽く風に揺れた時に私と目が会って優しく鳴いているように感じました。


「ほぇ~、何か猫みたいな子ね~」

「そうですね。自由気ままって感じがします」


 マリアさんの足元を見ると、猫型デバイスがじゃれ合うようについて行ってるのが見えました。

 凄く可愛いデザインで何だか子猫が一緒に歩いてるみたいに思えます。

 

 …………ん? マテリアルデバイスを持っているって事は、もしかしてマリアさんもゲームをするんでしょうか?


 これは今度聞いてみた方がいいかもしれませんね。

 ひょっとしたら一緒に遊べるかもしれないですし。


 ――――それからマリアさんと別れた私達は、人混みをかき分け目的のアイス屋台の前へと到着しました。

 人はそこそこ並んでますが、すぐに順番が回ってきそうなので最初のお店はここで決定です!


「では並びましょうか」

「アイスっ! アイスっ!」


 …………しかし、ここで私はある重大な事実に気が付いてしまったのです。


「あの。そういえばリニスはお金とかって…………」

「え? お金?」


 やっぱり持ってるわけ無いですよね…………。

 ああっ。列車の外での買い物は私のお小遣いで払う事になっているので、無駄使いをするわけにはいかないのですが。


「ん? どうかした?」


 流石にここまで来てやっぱ駄目とは言い辛いので、私が2人分の支払いをするしか無さそうですね…………。


「いえ、なんでも無いです。アイスは3段でいいですか?」

「何段まで行けるの?」

「えっと。最高は10段って書いてありますね」


 ガイドブックにはグラグラで倒れそうな10段アイスを絶妙なバランス感覚で支えている店長さんらしき人物の写真がありました。




「じゃあ私も―――――」

「駄目です!」

「ええ~っ!? なんでぇ~」

「屋台のメニューに素人は3段まで書いてありますよね? これは慣れてない人が10段アイスを食べようとすると、こぼれ落ちて大変な事になっちゃうからなんです」


 それに値段も倍くらいになってしまうので、私のお小遣いも大変な事になっちゃいます。


「う~ん。それなら仕方ないかぁ…………」

「とりあえず3段5段みたいな感じで、順番にステップアップしていきましょう!」


 そういう事で3段と5段のおまかせアイスを注文して、リニスには3段のアイスを渡すと。


「あ~っ。桜だけずる~い」

「私は中級者ですからね」

「じゃあこっちも5段にしてよ~」

 

 みたいな感じで、うらめしそうに私のアイスを見つめてきました。


 うぐっ。

 このままだと凄く食べづらい…………。


「…………すみません。こっちも5段にしてください」

「あいよー」


 3段アイスを5段にして渡すとリニスは満面の笑みで受け取り、早速パクリとアイスを食べ始めました。

 それに続いて私も一番上に乗っているバニラアイスをパクリといくと、バニラビーンズの甘い香りが口の中いっぱいに広がって自然と顔がゆるくなっちゃいます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ