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人形列車4

「えっと、それじゃあ……………」


 メニューを軽くみただけでも、どれも美味しそうで何にするか迷ってしまいます。

 ここは無難にハンバーグ定食。

 もしくはラーメンや炒飯を頼んで、うちのお店と味を比べてみるのもいいかもしれないですね。

 あえて一発目から変わり種で攻めていくのもありかも…………。


「ううっ、こうなったら!」 

 

 私はガイドブックを開き食堂のおすすめランキングのページを開きました。


「決まった。これですっ!」


 私が選んだの一番人気のアルタイル定食!

 やっぱり迷った時は一番売れてるのを選ぶのが間違いないですね。


 これはハンバーグ、唐揚げ、ウインナー、フライドポテトなど人気のおかずが少しづつ盛り付けられている贅沢セットになってます。

 そして何より特徴的なのは、ご飯の形が私が今乗ってる列車の先頭車両の形をしたオニギリになっている事!

 さり気なく添えられているデザートのプリンが付いてるのも高ポイント。

 よく考えたら、もうこれしか無いってくらいのお弁当です。


「えいっ!!」


 指先に気合を入れてボタンをプッシュ。

 これで注文完了!


 ――――と思ったのですが。


「おや? ボタンが反応しません」

「もしかしたら壊れちゃってるかも。とりあえず乗務員さん呼んだら?」

「そうですね。とりあえずそうしますか――――」


 私は何気なく注文ボタンを連打したら、何故かその瞬間だけ正常に戻ったみたいで。

 ピッ、ピッ。

 と、2回注文ボタンが押されてしまいました。


「ええっ!?」

「何やってんの…………」

 

 そして下から出てくる2枚の注文終了のレシート。

 間違いなくアルタイル定食が2人分注文されちゃってます。


「え……えっと……そ、そうです。今日は凄くお腹が空いているので、1人だと足りないと思って、あえて。そう、あえて個注文しました!」

「だったらちゃんと全部食べなよ?」

「だ、大丈夫です…………たぶん」


 こうなったらなるべく沢山歩いて、少しでもお腹を空かせたほうがいいかも…………。


「で、では次に行きましょう!」


 その後も機内図書館や娯楽室など一通り見て回って、とうとう先頭車両まで到着しました。


「ふぅ。長い旅も遂にここで終わりです」

「ここまで来る必要あった?」

「ま、まあせっかくなので、全部見ていきましょう」


 私はそのまま先頭車両に入ろうと扉を開けるボタンを押したのですが、ロックがかかっていて動きませんでした。


「あれ? 開かないですね」

「お客さんは入れないんじゃない?」

「えっと。ちょっと待ってください」


 私はガイドブックを見ると、先頭車両は運転制御に使う機械が置いてあるので、一般の立ち入りは禁止されてると書いてありました。

 ――――まあ、当然と言えば当然ですが。


 ちなみに列車の運転は完全にオートなので、メンテナンスやトラブルがあった時くらいしかこの扉は開かないぽいです。


「これ以上は行けないので部屋に戻りましょうか」 

「そろそろ、お弁当も届いてる頃だしね~。――――2人分の」

「ちゃ、ちゃんと食べるので大丈夫ですっ!」


 私達はそのまま後ろへと引き返し、いま来た道を戻る事にしました。

 そして、いくつか車両を移動したら一般車両へと到着たのでした。


 この列車は客室以外にも普通の座席のある車両も用意されていて、一駅だけの旅を楽しみたいって人も気軽に利用出来るようになっています。


 座席にチケットを認識させる事で、その場所が次の駅までの指定席になり、空いてる席は入り口の電子掲示板に表示される仕組みになっているのですが、どうやら今回は全ての座席が空いているみたいです。


 まあ、私はここには特に用が無いのでそのまま素通りですが。

 

 ――――半分くらい歩いた辺りで急に列車がガコンと大きく揺れ、私は持っていたガイドブックを座席の下へと落としてしまいました。


「ああっ!? 私のガイドブック!?」


 直後。車内アナウンスが流れ、列車の揺れに対する謝罪の言葉が放送されましたが、今の私にはそんな事どうでもよくって――――。


「早く拾わないと!」


 私は体を屈めて座席の下を覗き込むように探すと、何とか目当ての本を見つける事が出来ました。




「ふぅ。危うく無くしてしまう所でした」

「そんなでっかい本とか普通無くさないと思うけど」

「そんな事ないです。少し前に…………あれ?」

「ん? 桜、どうかした?」

「いえ。何か奥に落っこちてる物が……………」


 手を伸ばしてそれを取ってみると、少し古めのトランクケースが出てきました。

 大きさは小旅行で使うくらいで、所々に宝石で綺麗な細工がしてあります。


「――――これは? 誰かの忘れ物でしょうか?」

「前に座った人が忘れていったのかもね」

「それにしても、だいぶ古い物ですね。売ったらかなりいい値段になるかも」

「…………売るの?」

「…………まったく。シャンティは私をどんな風に思ってるんですか。忘れ物は乗務員さんに報告です!」

「けど、それって本当に忘れ物なのかなぁ?」

「誰か他にお客さんがいたらその人のだと思いますが、この車両は誰も乗ってないので持ち主はもう列車を降りてしまったんじゃないでしょうか」

「まあ、持ち主が戻ってきて荷物が無かったら乗務員に聞くだろうしね~」

「ではさっそく、よいしょっと――――」


 私はトランクケースを持ち上げようとしたのですが、思ったよりずっしりとした重量があり持ち上げるのが少し大変でした。

 決して運動不足で体力が無いから重く感じたわけではありませんから!


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