バトロワ編7
――――ここは大空を滑空する飛空艇の上。
飛空艇の中には私達と対戦するチームの人たちがどんどんと転送されて来ています。
ここにいるのはまだ全員ただの冒険者。
どうしてわざわざ「まだ」なんて言葉を使ったのかというと、プレイヤーは対戦中にどんどんクラスアップしていきソードマスターなどの上級職になることが出来るのです。
序盤は地味な技や魔法しか使えないのですが、終盤ともなると強力な攻撃が行き交うような戦場になって凄く派手な戦いになるんですよ。
クラスは装備する武具によって決定されるのでアイテム運に見放されると終盤なのにあまり強くない下級クラスで戦う事になってしまいます。
そう、さっきまでプレイしていた私のように……。
けど下級クラスのままだと勝つのが絶望かというとそうではなく下級クラスには下級の良いところがありますし、上手く先手を取ることが出来たのならこっちが有利に戦いを進める事も出来るのです。
――――それにこれは噂なのですが、最終局面まで下級職で行くことが出来た人物にだけ手に入れる事が出来る伝説の隠し装備があるとか無いとか言われているので、それを手に入れる為にあえて下級職プレイをしている人達もいたりします。
――――私は飛空艇から体を少しだけ乗り出して下を覗き込みました。
ちなみに現在の飛空艇はまだ空に停止していて、動き出すのはプレイヤー全員が転送されて来てからです。
そこには広い森や草原が広がっていて、所々に大きな神殿がいくつか建っています。
私は飛空艇の上から全体を見るこの景色がとても好きで、ついつい対戦の事を忘れて見入ってしまいました。
「桜、どこに降りよっか?」
後ろから聞こえる忍さんの声に我に返り、対戦モードへと頭のスイッチを切り替える事にします。
「そうですね。今回は無難に――――わわっ」
――――ガコン。
と音が鳴りゆっくりと飛空艇の上のプロペラが回り始めました。
どうやらプレイヤー全員の準備が整って参加者が全員この船に乗ったみたいです。
そして飛空艇は北へと向かってゆっくりと空を進み始めました。
ゲームはもう始まってしまい、ここから先は誰かに倒されるか最後の1チームになるまでこの場所からはログアウトできません。
他のチームの人がどんどん下に降りて行きます。
私達も先を越されないようにすぐに動くべきか、それとも資材の沢山ある場所に降りて戦いで有利になるように行動するか、あえて資材の少ない誰も行かなそうな場所に降りて戦闘を回避するか――――今回の私達のプレイは放送されているから、なるべく長く残っていたいのでここは――――。
「よしっ、とりあえず今回は火の神殿の近くに降りよっか」
「――――え!?」
「それじゃあ桜、行っくよぉ~」
「――――あっ、忍さん!?」
忍さんは私の制止を聞かずに1人で飛び降りてしまいました、
デュオは常に2人1組で行動するのがセオリーで、バラバラに行動してしまうと2VS1になって圧倒的に不利になってしまうため私も続くしか選択肢はありません。
私もすぐに忍さんの後を追い掛けて、飛空艇からダイブしました。
火の神殿の中には沢山の炎を宿した武器がある人気スポットの1つです。
つまり人気スポットと言う事は――――――。
私は左右を見渡すと、私達以外にも沢山のチームが火の神殿を目指してダイブしているみたいでした。
やはり最初からかなりの激戦になるみたいです。
私はチームチャットを開いて忍さんに連絡を入れました。




