フォールガールズ3
「おい。そんなに大勢つれてピクニックにでも行くつもりか? あいにく弁当は2人分しか用意してないから人数を減らしてくれないか?」
「ピクニック? ……………って、何してるんですかーーーー!?」
「私も連れてってもらうわよ!」
「じゃあ私も一緒にいく!」
どうやら何人かのプレイヤーが私にしがみついてきて、そのせいで体が重くなって上に登れなかったみたいです。
そうこうしているうちに、他にも私にしがみついて登ろうとするプレイヤーがどんどん集まって来て、シーソーの傾きが大変な事になっちゃってます。
「――――ふむ。どうやらこの手を離したら、かなりのプレイヤーに差を付ける事が出来そうだな」
「駄目ですッ! 絶対に離さないでください!!!!」
「そうは言っても、この状態で上がってこれるのか?」
「が、頑張るので、もうちょっと待ってください!」
私は必死にジタバタして他のプレイヤーを引き剥がしていき、何とか軽くジャンプ出来るくらいの状態に持っていく事が出来ました。
このままだと和希さんも巻き込んで落っこちでしまいそうなので、これがラストチャンス!
「えいっ!」
ジャンプした私は必死に左手を伸ばして、何とか先の足場に引っ掛ける事に成功しました。
それと同時にシーソーは一気に傾いて垂直になってしまい、乗っている人が全員落下してスタート地点へと戻されていきました。
「ふぅ。何とかなり――――――」
「こ、こうなったら道連れよ!」
「ええっ!?」
安心した瞬間。
なんと、1人落ちずに残ったプレイヤーが、私の足を掴んで私もろとも落下しようとしてきたのです。
「は、離してください!?」
「うるさい! お前も落ちろ!」
和希さんは私の右手を掴んで引っ張り上げてくれているので、ここは私だけで何とかしないと!
というわけで私は気合を入れながら登る事にしたのですが、
「ファイト~」
「…………ん? どうかしたのか?」
和希さんはキョトンとした表情で私を見返してきました。
「ええっ!? もしかして和希さん、あの有名なCMを知らないんですか!?」
「知らないな。だいたいそれは今必要なのか?」
「崖を登るのには絶対に必要なんです! なので、私がセリフを言った後に和希さんは一発って言ってください!」
と、いう訳で仕切り直しですっ!
「ファイトぉ~」
「い、いっぱ~つ!」
気合満タン全力フルパワーを得た私は、なんとか上半身だけ足場に乗せる事が出来ましたが、足を掴んできたプレイヤーはまだしぶとく私の足を掴んだままでした。
…………ここまでしぶといと逆に尊敬しますね。
「ま、まだ諦めて無いわよ!」
その瞬間、垂直になっていたシーソーが1回転して水平に戻り、
「ぐふっ」
そのまま私を掴んでいた人の頭に直撃して叩き落としちゃいました。
「け、計算通りっ!」
私は胸を張って勝利表明をしたのですが、和希さんは私の無事を確認した瞬間、走り出してしまいました。
「だったら続きの計算は学校でやるんだな。私は遅刻しないよう急ぐぞ」
「あっ。ちょっと待ってください!?」
まあ先のステージに進むのに人数制限があり、アピールしている時間があればどんどん進んだ方がいいので、私もゴールに急ぐ事にした方がいいかもしれませんね。
今の所、私達の前を走ってるのは20人くらい。
大きなミスさえしなければステージクリアなら余裕で出来そうな感じです。
――――しばらく平坦な道を進むと途中で道が2つに別れていて、それぞれの道の先に巨大シーソーが1台づつ設置してありました。
「どっちに行く?」
「ここは二手に分かれましょう。私は左に行くので、右は任せます!」
「了解だ」
一緒の方向に行っても良かったのですが、やっぱり自分の力だけで突破したいって気持ちや、さっきと同じ攻略の仕方じゃつまらないってのもあったので、いったん分かれる事にしました。
それに和希さんより先に攻略して待ってたら、ちょっとカッコいいかもってのもありますね。
私の方にあるシーソーは相変わらず数人のプレイヤーが苦戦中で、お互いに相手を上に行かせないよう牽制しあってるようでした。
まあ今回は人数も少ないので、ぱぱっとかわして余裕でクリア出来そうですね。
私は人数の多い方に思いっきりジャンプして飛び乗ると、乗った側が一気に下に傾きます。
そして私は、すぐに上にあがった反対側に移動すると、自分の足よりも低い位置に足場が見えました。
あとは向こう側にジャンプするだけ。
「よしっ。せ~~の―――――」
「おっとごめんよ」
「…………えっ!?」
ジャンプする瞬間。
私は誰かに押し飛ばされ、その衝撃でシーソーから突き落とされてしまいました。
手を伸ばしても掴めそうな物はどこにも無く、私はそのまま地の底へと落下していき、気が付いた時には和希さんと分かれた分岐点まで戻された状態に。
「おい。大丈夫か!?」
突然投げかけられた聞き覚えのある声の方を向くと、そこには第2のシーソーを突破した和希さんの姿がありました。
「すみません。ちょっと失敗しちゃいました」
「待っててやるから、すぐに来てくれ」
「えっと…………」
状況を確認すると、私が落ちてチェックポイントに戻されてからかなりの人数に追い抜かれてしまってるみたいで、私の到着を待ってたら和希さんもゴール出来るか怪しい感じが…………。
「私の事はいいので、先に行っててください! このままだと2人共リタイアになっちゃいます!」
「いいのか?」
「はい。絶対に追いつくので、ゴールで待っててください!」
「了解だ。絶対に追いつけよ」
和希さんは後ろを向いて手を上にかかげながらゴールへと駆け出しました。
「――――私も急がないと」




