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ゲームキャスターさくら  作者: てんつゆ
格闘ゲーム編
32/128

格闘ゲーム編9


「忍さん。もし決勝で当たったら最初のセットは本気でやって、次のセットからは流れに任せた必要のない対空多めでお願いします」

「なんでいきなり八百長の相談するのよ……決勝なら別にどっちが勝ってもいいんだし、本気で対戦してもいいでしょ」

「むぅ。それはそうなのですが、私が優勝しないとガイドブックが……」


 そうこうしてるうちに忍さんの名前が呼ばれて壇上へと出ていく事になりました。


「あっ、そういえば桜。あんたの本体、ゲームのバージョンが古かったからアップデートしといてあげたわよ」

「……えっ!?」

「まったく。桜の事だからどうせアップデート忘れてるだろうと思って確認してよかったわ。今回は細かい修正だけだったから良かったけど、今度から注意しなさいよね」


 その細かい修正部分が凄く重要だったのですが……。


「そんじゃ。おっさきぃ~」


 忍さんはそそくさと要件だけ伝えて、壇上へと向かってしまいました。

 普段協力ゲームをする時は私の事をよく分かっているので非常に助かっているのですが、今回はその事が少し裏目に出ちゃったかもしれません。


 ……まあ過ぎた事は仕方ないので気を取り直して対戦に備える事にしましょう。

 これまでの対戦で色々と布石は撃ってきたので、まだまだ使えるネタはあるのですから。

 舞台裏に1人残された私はなにやら得体のしれない怖さと緊張感に押しつぶされそうになりました。


「こ、こんな時は伝説のゲーム、スーパージェネシックアワーの動画番号を言って落ち着かないと。…い、13869948………13869948…………いちさん……」

「そして最後に、桜選手入場です!」


 3回目の詠唱の途中で私の名前が告げられました。

 まだ心の準備は完璧とは言えませんが、覚悟を決めて胸を張って舞台裏から壇上に向かうことにします。


 今回のは公式大会では無いのですが、大勢の人のが見守る中でゲームをするという事は思ってる以上に緊張して意識が飛んでしまいそうになります。

 今のうちに少しでもこの感覚になれておく事にしましょう。


 ……と、思いつつも結局頭の中が真っ白になってしまい、なんだがよくわからない挨拶をしてから壇上から降りました。

 壇上を後にした私はすぐにベスト8の決勝トーナメント表を確認すると、忍さんがAの1で店長がAの3、そして私が反対側のBの4になってます。


 Aブロックは忍さんと店長のどちらかが残ってくれたらいいのですが、Bブロックは私が勝ち上がらないといけないので責任重大ですね。


 どうやら時間も押しているようで、すぐに忍さんの試合が始まりました。


 ここからは1回負けたら終わりのルールになっているので、慎重な立ち回りでゲームをしないといけません。


 流れで大会に参加したとはいえ、忍さんも色んなゲームを得意とするマルチプレイヤーなのでかなりの熱戦を繰り広げています。


 忍さんのプレイスタイルは遠距離からビームを撃って相手を近づかせずに倒すといった、普段の忍さんの性格とは真逆の丁寧なプレイスタイルだったのでちょっと笑ってしまいました。


 相手との距離管理が完璧で、甘えた飛び込みは全て対空ビームで撃ち落としていたので思うように動けない相手の人はちょっとだけイラついてるようです。

 最後に忍さんの超必殺ビームが相手の体力を削りきり、決勝の1回戦は忍さんが見事勝利を収めました。




 ――――続く2回戦。重量キャラを扱う店長とスピードキャラを使う人との対戦が始まりました。


 超火力で一気に試合を決めたい店長と素早い動きで相手を翻弄したい相手の戦いは、店長のキャラが中々相手を捕まえる事が出来ずに攻撃の隙を疲れてチクチクと細かい攻撃を刻まれてしまっています。


 起死回生の大振りも待ってましたとばかりに前転でかわされてしまい、逆に相手の高火力コンボを受けてしまい敗北してしまいました。


 そしてBブロックの第1試合はトリッキーキャラを使う人が勝利し、最後は私の番。

 相手の人は私と同じキャラを使うみたいで、くしくも同キャラ対戦となりました。

 お互いにやりたい事は全て解っていて、やられたくない事も全て解っている完全に同じ条件の戦い。


 ………………と、思いがちですが。実は同キャラ戦でもキャラのダイヤグラムが有利になる場合があります。

 それは、キャラカラー。背景と似たようなカラーを選ぶ事でこちらの位置や攻撃がちょっとだけ把握しずらくなるといった…………まあ、ほとんど誤差みたいな物なのですが、少しでも相手より有利になる事が出来るなら私は迷わず使います。


 相手が使用するキャラを事前に調べていた私は、キャラ選びが始まった瞬間に速攻でキャラとカラーを選びました。

 ステージ選択権は事前にジャンケンで手に入れていたのでステージ選びも隙はありません。


 対戦内容は実力的にはほぼ五分といった感じでしたが、キャラカラーで見えづらい攻撃が何回かラッキーヒットしてくれたおかげて何とか勝利する事が出来ました。

 さて、試合はどんどん続きます。決勝進出を賭けベスト4まで残った忍さんの対戦が始まりました。

 キャラ的には忍さんの方が微不利といった感じですが、忍さんならやってくれるはずです!!


 試合はまず忍さんが距離を取って牽制にビームを撃ったのですが、相手は前転でくるりとビームを避けながら近付いてきました。


 忍さんは近距離でも意地になってビームを撃ち相手はそれを前転でかわしたと思ったら、実はビームを撃つ動作をしただけのフェイントで、忍さんは相手の前転の無敵が無くなった隙にコンボを叩き込みました。


「おおっ!? 忍さん、凄いです!」

「ご~ご~忍~」


 私とシャンティは少しでも頑張ってもらう為に観客席から忍さんに声援を送る事にしました。

 会場の皆も忍さんのスーパープレイに盛り上がっているようです。



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