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ゲームキャスターさくら  作者: てんつゆ
格闘ゲーム編
31/128

格闘ゲーム編8


「シャンティ、次を勝てば決勝トーナメントです」

「……なんかほとんど対戦してなかった気がするんだけど?」

「予想以上に欠席者がいましたからね。エントリーだけして大会に出ないのはあまり良いことではありませんが、やむお得ない事情の人もいるので仕方ないです」

「そんなもんなのかな~。…………っと、それより相手が来たみたいだよ」


 対戦台にプール最後の対戦相手が到着したので、私は握手をしてから対戦の準備を始める事にしました。


「よろしくお願いします」

「よろしく~」


 まあ準備と言っても今日はVRゲームでは無い普通の据え置き型の家庭用ゲームなのでパッドを本体に認識して完了なのですが。

 私はゲーム機にパッドを繋いで認識する時に今から使う本体が自分が家から持ってきた物だという事に気が付きました。


「…………おや?」

「あれ? 桜。どうかした?」

「いえ、なんでも無いです」


 パッドの認識が終わりボタンのセッティングを終えてからお互いに使用キャラを選び、プール最後の相手との対戦が始まりました。

 流石に最後まで残ってるだけあって、相手の人は中々の立ち回り能力とコンボ精度を持っているようでちょっぴりピンチかもしれません。


 私が押されている事を心配してか煽っているのか解りませんが、シャンティが私の周りをヒュンヒュンと飛び回しながら話しかけて来ました。

 必要以上に飛び回っているので少し気が散って鬱陶しいです。


「桜、桜、ほらゲージが溜まってるよ。早く超必殺技を出さないと!」

「あ~もう。うるさいですね…………超必殺技ならすぐに出してあげるので、じっとしててくだ――――ひゃうっ!」


 シャンティに気を取られてしまったせいで超必殺を出すタイミングを逃してしまい状況はさらにピンチになってしまいました。


「…………しかたありません。ここは――――」


 私は超必殺コマンドを入力しコマンド完成と同時にガードボタンを押しました。

 するとコマンドが成立した瞬間、数フレームだけ無敵になる超必殺が発動して相手をカウンターヒットで吹き飛ばしました。


「お~。桜、良いパナしじゃん」

「まだ行けます!」


 吹き飛ばした相手は地面に激突する瞬間受け身を取り、速いテンポで体制を立て直してジャンプ攻撃を繰り出してきました。


 私はもう一度超必殺コマンドと同時にガードボタンを押します。


 相手の人は攻撃をしないで私の超必殺ぶっぱなしを誘った様ですが、私のキャラはガードモーションをしただけでお互い何もしない膠着状況になり、私は何も攻撃をしてこない相手を投げ飛ばしました。


「お~。桜、よく我慢したね~」

「ま、まあこんなもんです」


 これはガードモーションキャンセルと言い、相手が攻撃をしていたら超必殺で反撃し、何もしてなかったらガードになるズル技です。


 本来は今日のパッチで修正されて使えなくなる技なのですが、私はアップデートをするのを忘れてしまっていて、1つ前のバージョンで持ってきてしまっていたのでした。


 今回のパッチはこのズル技の修正だけなので、誰も前のバージョンだとは気付かなかったみたいです。

 まあ今日の大会はアップデート記念日大会とは言いましたが、誰もアップデート版で大会するとは言ってませんから大丈夫でしょう。

 つまり、今回の大会はアップデート版が配信された日にするただの非公式大会なので前のバージョンが1つくらいあっても全く問題ない………………はずっ!!


 大会の注釈にも何らかの事情でアップデートが間に合わなかった場合、バージョンが異なる場合がありますの注意書きもありましたし!


 ――――私はズル技を駆使してなんとか勝ち上がり、プールを抜けて決勝トーナメントに進む事が出来ました。

 くふふ。店長にお願いして決勝からはバージョンが1つ前の私のゲーム機を使ってもらう事にすれば、私だけが有利な状態で対戦する事が出来そうですね。

 ただ決勝は大型モニターで配信するのでズル技は少なめにした方がいいかもしれません。


「あっ、桜。結果どうだった~?」


 私が対戦の後片付けをしていると忍さんがやってきました。


「ルーザーズに落ちてしまいましたが、プール抜けは出来ました」

「そうなんだ。こっちもギリギリでプール抜けは出来たわよ。ちなみに何勝出来たの?」

「ふっふっふ。5勝2敗で余裕の勝ち越しです!」

「4勝は不戦勝だったけどね~」

「実質負け越してるじゃない!!」

「勝ちには変わりないので問題ないです」

「まあ桜が満足ならそれでもいいけど……そういえば店長も勝ち残ったみたいよ」


 さすが破壊神と呼ばれてゲームバランスの壊れた部分を見つけるのが得意なだけあって、どんなゲームでも安定した強さのようです。


「そういえば店長はどこにいましたか?」

「え~っと、受付の辺りでみたけど」

「では私は少し店長と話したい事があるので、ちょっと行ってきます。それと忍さんにお願いがあるのですが、このゲーム機を決勝トーナメントの壇上に運んでおいてもらえますか?」

「これって桜が持ってきたやつ?」

「はい。慣れたハードで決勝をやりたいと思って」

「別にどれでやっても変わんないと思うだけど……まあ、誰のでやるか決まって無かったし別にいいけど」

「ではお願いします」


 私は店長の元に急ぎ決勝トーナメントで使うのを私の持ってきたゲーム機で行う事を告げました。

 そして数分後。

 壇上にゲーム機がセットされプール抜けを果たしたベスト8の8人が司会の人に呼ばれた順に壇上に登場します。

 1人1人舞台裏から壇上に出ていき6人目が出ていった後、舞台裏には私と忍さんだけが残りました。



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