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ゲームキャスターさくら  作者: てんつゆ
飛行機墜落 高度1万メートル、フライトeスポーツ
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飛行機墜落 高度1万メートル、フライトeスポーツ 完


 

 現実世界に戻った私はバイザーを解除すると、パーカーさんとキャビンアテンダントさんが出迎えてくれました。 


「――――あの。今はどうなってますか?」

「お客様、ありがとうございます。無事、ローラーの開閉口が開きました」

「それは良かったです」

「もう着陸直前で危険なので、この部屋の座席で待機をお願いします」


 よく見るとパーカーさんはすでに部屋の端っこになる椅子にシートベルトを付けて座っていたので、私もパーカーさんの横の席に座ってベルトを閉めました。


 カチッとベルトの閉まる音を聞いた瞬間、ひと仕事終えたような充実感が私を包みこんでこのまま眠ってしまいそうになります。


 ―――――っと、その前にパーカーさんに一言お礼をいっておかないと。


「あの。最後はすみません――――」

「あの状況ではあれしか方法は無かっただろ? それに私が同じ状況でも同じ事をしていたと思う」

「本当はもっと確実な方法があれば良かったのですが」

「それより何で最後に叫んだんだ? 何も言わずにあのまま後ろから撃っても良かっただろ?」

「その、なんとなく避けられてしまう気がしたので。それにフレンドリファイアはあまり良い行為とは言えませんから…………」

「あの時は前しか見てなかったから、後ろを気にかけてる余裕なんて無かったけどな」

「そうだったんですか? 序盤に私がミスショットしてしまったのを避けたのを見て、後ろからの攻撃は当たらないと思ってました」

「…………お前、よく見てたんだな?」

「――――え?」 


 私が話を続けようとした所で突然ガコンと飛行機の揺れが激しくなりました。

 どうやら飛行機が着陸体制に入ったみたいです。


「お喋りはここまでにしておくか」

「――――そうですね」


 疲れが限界にきてしまった私はちょっとだけ目を閉じると、ガタガタと揺れる飛行機がまるでゆりかごの様な心地よい物に感じてしまいそのまま眠りについてしまいました。




「――――様。――――お客様?」

「…………ふみゅ? ――――あれ?」

「お客様のおかげで飛行機は無事に着陸出来ました。後でお客様のご自宅に改めて伺いますね」

「――――えっと、ありがとうございます。ふぅ、どうやら無事に――――あれ?」


 私は隣の椅子を見てみると、そこに座っていたはずの少女の姿はすでに消えてしまっていたのです。


「――――あの、ここに座ってた人は?」

「用事があると一足先に降りてしまわれました。――――その、起こそうと思ったのですが、眠られていたので無理に起こす必要は無いだろうとそのまま…………」

「…………そうでしたか」


 もうちょっと話そうと思ったのですが、用事があったのなら仕方ありませんね。


 ――――私はベルトを外して立ち上がろうとすると、シャンティが何かを思い出したみたいです。


「そうだ、桜。さっきの子からボイスメッセージを受け取ってるよ」

「メッセージですか? ちょっと再生してください」

「おっけー」


 数秒後、シャンティに搭載されているスピーカーから音声が再生されました。


「今後対戦する事になるかもしれないが、その時に手は抜くなよ」


 …………え? それだけ!?


「手を抜かなくても勝てる気はしないのですが…………」


 私はキャビンアテンダントさんに、「ありがとうございます」とお礼を言ってから部屋を出て行きました。


「…………そう言えば、パーカーさんの名前を聞くのを忘れてました」



 ――――まあ、同じゲームをやっているのならそのうちまた会う機会があるかもしれないので、その時に聞けばいいですね。


 一応、再開の約束? のような物はした訳ですし。


 私はさっきまでの出来事を思い返しながら、忍さん達の待つ座席にゆっくりと戻って行きく事にしました。







 ――――とまあこの飛行機での出来事が私が大人気バトルロイヤルゲーム、ブレイド&マジックの全国大会に出場する最初のチームメイトととの初めての出会いなのでした。


 私は自室の椅子から立ち上がり。


「さて、今日はこれくらいにして休むとしましょう」


 と、ベッドで休もうと思った瞬間、突然部屋のドアがドタンと突然やってきた人物に勢いよく開かれたのでした。


「ちょーーーーーっとまったぁあああああ!!!!」


 ドアの向こうに立っていた人物は私に詰め寄るようにドカドカと部屋に入ってきて、私の目の前で止まったかと思うと。


「ちょっと納得いかないんだけど!!」

「忍さん。終わろうとしているのに、勝手に人の回想シーンに入ってこないで欲しいのですが…………」

「そんな事より何で私が最初のチームメイトじゃないわけ!!?」

「何でチームメイトじゃないわけ? と言われても、これにはちょっと色々と事情がありまして…………」

「色々って何よ! 私に何が足りないっていうの!」


 これは答えを間違えるとブチギレされそうなので言葉を選ばないと。


「それは……その…………実力…………とか?」

「うぐっ。痛い所ついてくるわね――――」

「忍さん、安心してください。きっとゲームが上達したらチームに入る事が出来ると思います!」

「そうね、それじゃあ私も頑張って全国大会までにゲームの腕を上げて―――――って、何で上から目線なのよ!」

「それは私がリーダーだからです!」


 ドドンと太鼓の音が聞こえるような感じで私は胸を張りました。

 忍さんはちょっとだけ後ろにたじろいた様ですが、すぐに気を取り直したようで。 


「そ、そうかもしれないけど、じゃあ私をチームに入れてくれても――――」

「そうですね。では忍さんにはオトリやマトや相手の攻撃を受ける盾の役割を―――――」

「さ~く~ら~?」

「…………すみません、冗談です。ただ全国大会は1チーム4人なので、忍さんを入れても後1人足りません」


 一応シングルの大会もありますが、私は団体戦で優勝を目指したいですね。



「それ以前にまだ飛行機で会った子もチームに入ってない気もするんだけど?」

「まあ、そのうち流れで入ってくれると思います」

「そんなんでいいのかなぁ」

「ともかく、残りのチームメイトはどんな人なんだろうとか、忍さんは無事にチームメイトになれるかどうかなど些細な謎を残しつつ――――」

「って、結局私はまだ確定じゃ無いわけね…………」

「忍さんが急に引っ越したり突然宇宙人に拐われたりする事になる可能性もありますから」


 eスポーツにトラブルはつきものですしね。

 忍さんが闇落ちしてラスボス化する可能性だって捨てきれません。


「そんな奇想天外な事なんてないわよ!」

「引っ越す可能性はあると思うのですが…………」

「無いから、ぜぇええええったいに無いから」

「し、忍さん落ち着いてください」


 私は必死にジタバタする忍さんをなだめました。


「ふんだ。絶対練習してスーパープレイヤーになってどうかメンバーに入ってくださいって言わせるんだから!」

「はい。忍さんには期待してます」

「本当かしら?」

「本当です」

「ならいいんだけど」


 ふぅ。何とか忍さんの機嫌が良くなってくれた所で、今回のお話はこれでおしまいですっ!




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