飛行機墜落 高度1万メートル、フライトeスポーツ2
「それで、デバイスはこれを使えばいいのか?」
「あの。私のデバイスは飛行機に預けてあるので、出来ればそれを使いたいのですが――――」
私は緊急時に慣れない端末を使うのを不安に思いキャビンアテンダントさんに尋ねると。
「でしたら奥のスキャナーにお荷物をお預けした際にお渡ししたカードキーを認識されると、フライト中ですがお客様のお荷物を一時的に返却する事ができます」
と、特別に使うことを許可してもらえました。
「こっちも自分のが使えるならそれを使いたい」
パーカーさんも自分のデバイスを使いたいみたいで、私達は奥に設置してある機械にカードキーを読み込ませると、機械が飛行機の荷物置き場とリンクして私達のデバイスが転送されてきました。
「あれ? もう着いたの?」
スリープモードから復帰してちょっぴり眠そうなシャンティが呑気な声をあげました。
けど、今は状況を説明している時間が惜しいので後で説明する事にします。
「シャンティ、緊急事態発生です。急いでゲーミングの準備をしてください」
「――――え!? 状況がよくわかんないけど、とりあえず解った」
「では、行きます。シャンティ、コンバージョン!」
「了解、桜。コンバージョンスタンバイ」
「スタート、アーーーップ!」
私は急いでスーツを装着して、この飛行機の管理ネットワークに飛び込む準備を終え――――。
っと、そう言えば決めポーズを忘れてました。
「桜花爛漫 風宮 桜 参上ですっ!!!!」
ポーズがビシッと決まった所で、パーカーさんの方も携帯デバイスのスリープモードを解除して今から装着するみたいです。
パーカーさんのデバイスは真っ黒な影の様な色をしたカラス型のデバイスで、とてもクールなイメージがしました。
「行くぞ、ハヤテ。コンバージョン!」
掛け声と共にカラス型デバイスのパーツがパージされパーカーさんの体に装着されていき、最後にビシッとポーズを決めて装着が完了。
「色即是空 仙道――――くっ!?」
「きゃっ!?」
パーカーさんのポーズが終わる前に一瞬飛行機が激しく揺れてバランスを崩してしまいそうになりました。
早くしないと危ないかもしれません。
……………それにしても。
「ん? どうかしたのか?」
「いえ、そちらも装着した後にポーズをとっていたので――――」
「何を言ってる? 着替えた後にポーズを取るのは常識だろ?」
「えっ!?」
これは思いもよらない場所で同好の士に会っちゃいました。
やっぱり着替え終わった後のポーズの重要性も、理解る人には理解るみたいですね。
「…………それにしても」
パーカーさんのスーツはカラス型デバイスと同じ黒を基調としたシュッとしたスマートな服装なのですが、インナーが真っ黒なレオタードになっていてちょっぴりえちえちな感じになっています。
「――――ちょっと派手な服ですね」
「そうか? たまに珍しがって見る奴もいるが、真っ黒で地味だと思ぞ?」
まさかの無自覚!? いえ、もしかしたら邪な目で見てしまった私の方がおかしいのかもしれません。
――――けど、私が同じ服を着ろと言われたらちょっぴりどころじゃないくらい恥ずかしいような…………。
「そんな事より早く始めないか?」
「――――っと、そうですね。それでは行ってきます」
「どうかお気をつけてください。操作は基本的にはブレマジと同じですので、後は音声ガイドに従っていただければ大丈夫だと思います」
一足先にパーカーさんがログインしていったので、私もすぐに後に続かないと。
「ではシャンティ。行きましょう」
「オッケー、桜。飛行機のネットワークに接続するね」
私はキャビンアテンダントさんに挨拶をしてからシステムを起動させると、視界が一瞬真っ暗になった後に体全体が光に包まれていく感覚になっていきました。
――――そして、しばらくすると私は真っ暗な空間に立っていたのでした。