お店を守れ!! ラーメンバトル編2
カレーとの勝負に勝利した私は容器をお店に返してから離れようとすると、さり際にカレー屋さんのお兄さんから声をかけられました。
「ところで君は、eスポーツは好きかい?」
「はい、大好きです。 ――――けど、それがどうかしましたか?」
「最近eスポーツで不正をする人が増えていてね、それで不正を取り締まる審判が導入される事になったんだ。君はちゃんとルールを守っているかい?」
そう言えば、少し前の週刊eスポーツで審判団が結成されたって書かれていたような――――。
ちなみに私は忍さんと対戦する時にしか不正プレイはやってないので実質0回です!!
「はい。ちゃんとルールは守ってるので大丈夫です!」
「……あれ? この前、忍と対戦した時になんかしてなかったっけ?」
「そうか、それなら良かったよ」
「いいの!?」
それにしても、どうしてこのお兄さんは突然eスポーツの審判の話なんてしたんでしょうか?
…………っと、そう言えば私はお使いに来てたんでした。
「すみません。お使いに行かないといけないので、もう行きますね。シャンティ、買い物ルートのナビお願いします」
「はいはいっと」
画面にルートが表示された後、私はペコリと1回お辞儀をしてから駆け出しました。
「ルールはちゃんと守るんだよ~」
一瞬お兄さんの胸元でなにやらバッジのような物がキラリと光った気がしましたが、私は買い物の事で頭がいっぱいだったので、その時は気にも止めませんでした。
そして、私がその場所から離れて少ししてから誰かがお兄さんのお店にやってきたみたいです。
「杉田さん、探しましたっすわ。早速バトルが始まってるのでお願いしますわ」
「…………やれやれ。こんなんじゃ、おちおちカレーの販売も出来んな」
「そう言わんでくださいよ。出来たばかりで今はどこも人手不足なんですわ」
「わかってる。――――それより例のファイターの手配を頼む」
「ファイターの? でも、今日は大会の予定はありませんよ?」
「なに。今日は盛り上がるバトルがありそうな気がしてな。―――――出来ないか?」
「…………まあ、杉田さんがそう言うなら手配しときますわ」
「助かる」
そう言って2人は街の奥へと消えていきました。
―――――――数分後。
お使いで頼まれた物を全て買い終えた私は、もう1つの目的地であるライバル店の前に来ていました。
「…………ここが例のお店ですか」
どうやら3階建ての中華料理屋さんで、ピークのお昼をちょっと過ぎてるとは言え店内にはまだまだ人がいっぱいいるみたいです。
「どうやら、うちのお店と同じくらい流行ってるみたいですね」
「――――こっちは3階建てだから、こっちの方が3倍流行ってないない?」
「そ、そんな事ないです。それに1階だけなら、うちのお店の方が流行ってますし、味なら絶対に負けてません!」
「その味を確認しに来たんでしょ? 早く入ろうよ」
「まったく。シャンティはうるさいですね…………そんな事くらい言われなくてもわかってます」
私は早速お店に入り、店員さんの案内で席につくとメニューをパラパラと確認する事にしました。
「ふむふむ。基本的な物はほとんど抑えてるみたいですね」
料理名の横にはサンプル画像があり、美味しそうな料理が沢山貼ってありました。
「おおっ!? シャンティ、ラーメンと炒飯のセットだとかなりお得みたいです!!」
「流石にそんなに食べられないんじゃないかなぁ…………。さっきカレーも食べたんだし、何か一品だけにした方がいいんじゃない?」
私は自分のお腹を確認してみると、二品以上注文するのはちょっと厳しい感じでした。
「むぅ。確かにそうですね…………。仕方ないので今回はこの一番目立ってる特製ラーメンにしておきます」
私はおそらくこの店の看板ぽい、メニューのど真ん中にでかでかと輝いている特製ラーメンを注文しました。
――――そして、数分後。
熱々の特製ラーメンがテーブルに運ばれてきて、私の前にででんと置かれたのです。
「それでは早速、いただきます」
こってり豚骨醤油のスープの上に麺が見えないくらいたっぷりのモヤシとキャベツが乗っています。
野菜の下はどうなってるんだろうとキャベツをお箸でちょっとどけてみると、細めの麺が顔を見せました。
――――どうやらかなりのボリュームがあるみたいですね。
とりあえずモヤシとキャベツをスープに少し浸してから食べてみると、こってりスープとシャキシャキな野菜のバランスが絶妙で、これとご飯があればずっと食べていられるように思えます。
次にレンゲにスープをちょっとすくった後に麺を少しいれて、ミニラーメンを作りパクリと一口でいただきます。
「おおっ!? これは!?」
なんでしょう。このスープは麺にも凄く合い箸がとまりません。
「…………ふぅ」
結局スープも全部飲んでしまいました。
ここが繁盛してる理由も分かる気がします。
「フフフ、満足していただけたかしら?」
ラーメンの余韻に浸っている私に誰かが後ろから話しかけてきました。
私は声がした方に振り向くと、真っ赤なチャイナドレスを着たお姉さんがゆっくりと私の方に歩いて来てます。
「えっと…………お店の方ですか?」
「ええ、私はこの店の店長をしているの。それよりあなた、拳剣軒の関係者でしょう?」
「――――ど、どうしてそれを!?」
「ライバル店の事くらいとっくに調査済みってわけ。それより私達の傘下にならない? 私達はこのラーメンで世界を征服するつもりなの」
――――せ、世界征服!?
確かに世界が取れるくらい、凄く美味しいラーメンでした。
けど…………。
「かなり美味しかったです。…………けど、この味は世界じゃ2番目ですね」
「はぁ!? じゃあ1番はどこの店なの!?」
「ふっふっふ。それは拳剣軒のラーメンです!!!!」
――――そう。
確かに美味しかったですが、私の家のラーメンの方が美味しいと自信を持って言えます!!!
「では、私はこれで失礼しますね。シャンティ、お会計お願いしますね」
「りょーかーい」
支払いを済ませた私はお店を出ようとしましたが――――。
「待ちなさい。そこまで言われたらこっちも引き下がれないわ。――――こうなったら勝負よ!」
――――店長さんに呼び止められました。
「…………勝負ですか?」
「ええ、どっちの店が上か勝負しなさい。まさか、逃げたりしないでしょうね?」
正直面倒ごとはあまり好きじゃないですが、勝負を挑まれたからには逃げるわけにもいきません!!!!
それにラーメンで世界征服なんて絶対に阻止しないと。
「わかりました。それでは…………」
私は肩にかけていたカバンから1枚の紙を取り出して店長さんに見せつけました。
「お店の権利を賭けてeスポーツで勝負です。条件は負けたほうが勝った方の2号店になる事!!」
「ええっ。何で桜が権利書なんて持ってるの!?」
「こんな事もあろうかと金庫から持ってきました!」
「ちょ、勝手に持ってきたら駄目でしょ!?」
「別に勝てばいいのです! 勝てば!」
どの道ここで負けて世界を征服されたら私のお店も取られちゃうかもしれません。
だったら今ここで止める!!!!
「いいわよ。こう見えて私もeスポーツでここの店長にまで上り詰めた実力者。そう簡単に勝てるとは思わない事ね!」