飛翔せよ! アメリカンラーメン3
――――――ある日。
注文する時にラーメン以外にメニューは無いのかって聞くお客さんが多かったので、現在はスーパーで絶賛買い出し中です。
「えっと。後はお米を10キロ買って――――」
私はお米にはそんなにこだわりは無いので、とりあえず売上1位のお米を買ってさっさとお会計を済ませないと。
そんな感じでお米コーナーにやってきたのですが、あるチラシが目に止まり私は足を止めました。
「こっ、これはっ!?」
――――そう。
チラシには私の良く知った友達の姿が映っていたのです。
「なんで望さんがここに?」
なんと! そこには満面の笑顔で米俵を持っている望さんがいました。
「いつからお米作りを!? てか、これって」
ノゾミヒメ。
それが望さんが作ったと思われるお米の名前でした。
「自分の名前をつけちゃってる!?」
そして、お米の袋にはドヤ顔の望さんがプリントされていて、かなり出来に自信があるみたいです。
「――これは買うしか無いのでは?」
「ちょっと望に連絡してみる?」
「いえ。こういうのは味を確かめてから感想を言ったほうが喜ぶと思います」
「確かにそうかも。じゃあ今回買うのはこれにする?」
「はい。せっかくなので、ちょっと多めに買っていきましょう」
と、いう事で。
私はノゾミヒメを20キロ購入して屋台へと運び、さっそく今日の営業開始です!
「それでは忍さん。お願いします」
「オッケー」
今回も自転車でスタンバイしている忍さんに屋台を飛ばしてもらう事になってます。
「あっ。ちょっと待ってください」
「ん? 別にいいけど、どうかしたの?」
「ちょとこれを設置しようと思って」
私はダンボール箱から炊飯器を取り出しました。
「じゃーーん。これでチャーハンが作れるようになります!」
「あ、メニュー追加するんだ」
「これもお店が好調なおかげです」
「じゃあ飛行システムも何か追加したの?」
………………あ。
メニュー追加の事だけで頭がいっぱいで、すっかり忘れちゃってました!?
「ではさっそく炊飯器を設置っと」
「こらー。やっぱり忘れてるんじゃない!!!!」
「……その。次はかならず追加するので」
「まったく。次は絶対にやりなさいよ?」
「はい。メモ帳に書いておきます!」
とりあえず炊飯器をキッチンの横に置いて、コンセントに接続っと。
…………あれ? そういえば炊飯器を追加したら更に電気消費量が上がって忍さんの負担が増えるような……。
ま、まあ。忍さんならなんとかしてくれるはず…………たぶん。
「じゃあ今日はどこに行くの?」
「そうですね。数日前に行ったマンション街がかなり売上がよかったので、今回もあそこにしましょう」
「りょーかい」
私達はマンション街に向かいすぐに営業を始め、今回も順調に売上を出していってのですが、突然なにかの接近を知らせる緊急アラートが鳴り始めました。
「えっ!? ちょっと、桜。何があったの?」
「何かがこっちに近付いて来てます!?」
「何かって何よ!?」
「アルティ、映像出せますか?」
「はいは~い。すぐ出すね~」
すぐにメインモニターの横に接近者をアップで表示した小さなデジタルモニターが表示され、そこに映っていた物は――――。
「や、屋台!?」
なんと私達と同じ空を飛ぶ屋台が、凄いスピードで近付いて来ていたのでした。
「な、なんで他にもこんなのがあるのよ!?」
「多分この屋台が儲かってるって聞きつけて、参入してきたんだと思います」
「どうするの? ライバルがいたら売上減っちゃうじゃない」
「大丈夫です。私のラーメンが負けるはずは―――――はうぁ!?」
ガン!
と、突然強い衝撃が屋台を突き抜け、ぐわんと屋台が大きく揺れて私は尻もちをついてしまいました。
「い、いったい何が!?」
状況を理解出来ずにいると、突然外部からスピーカーで拡張された音声が聞こえてきました。
「がーっはっはっは。今日からこの周辺の空はワイのビッグバンラーメンが占拠した。落とされたく無かったら、今すぐのけい!」
「はぁ? そっちがその気なら、こっちもやってやろうじゃない!!」
相手の挑発に乗った忍さんは負けじと屋台をぶつけ返し、状況はどんどん大変な事に。
「し、忍さん。このままだと屋台が壊れちゃいます!?」
「だったらどうするのよ?」
「ちょっと説得に行ってきます。忍さん、あの屋台に近付けてもらえますか?」
「いいけど、無理そうなら私に任せないさいよ?」
忍さんに謎の屋台の横に付けてもらい、私はそのまま敵地へと乗り込む事にしました。
ロープを体に巻いてからハッチを開けると、強い風に押され少しだけ後ずさり。
ちょっと怖いですが…………これもお店の売上の為!
「えいっ!」
まずは大きな筒のついた砲台からワイヤーの付いた吸盤を発射して相手の屋台と固定。
「よしっ、後は――――」
あっちの屋台までジャンプ!!!!
…………みたいな事は流石に出来ないので。
1人用の小型ゴンドラをワイヤーに接続してから乗り込み、ゴンドラの操作ボタンを押すとゆっくりと空中を進み始めました。
入り口までたどり着いてから、外側についている緊急開閉ボタンを操作して扉を強制開放。
そして開閉が終わって安全を確認してから、シャンティと一緒に突入開始!
「だ、だれや?」
突入に気が付いたライバル店の店長が立ちはだかって来ました。
「ここはワイが商売するって言ったやろ?」
「いえ。むしろ私のほうが先に始めてたので、この一帯は私の物です!」
「ほう? そこまで言うなら覚悟は出来てるみたいやな? だったら――――」
「ゲーミング勝負です!」
お互いにマテリアルデバイスを装着して、光速無線通信をリンク。
「バトル!!」
すぐに店長さんとの対戦が始まり、そして――――。
「クランク・インパクトぉ!」
「な、なにぃ!?」
VRハイパーもぐら叩き勝負に勝利した私は、無事ビル街での営業権利を勝ち取り、その日もまずまずの売上で営業を終えました。