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重課金オンライン 下

 NPCと会話してはいけない事を知った私達は、話さないで街を出ようとしたのですが――――。


「やあ。目と目があったら始まる課金! それがこのゲームの決まりなの!」


 と、どこぞのモンスタートレーナーみたいな感じで、強制的に課金をさせようと一方的に会話をしてくるNPCが行く手を阻んで来たのでした。


「ちょ、ちょっとどうするのよ!?」

「忍さん。落ち着いて「いいえ」を選択すれば大丈夫です!」

「えっと…………えいっ!」


 私達は今回もなんとか課金を回避してすぐにその場から離れることにしました。


「それにしてもXボタンでキャンセルって全然慣れないんだけど! どう考えても決定ボタンなのに」

「まあバッテンは間違いって意味もありますし、昔の人はこれが普通だったんですけどね。慣れないですが、とりあえずここから出るまでには対応しておかないと」


 ――――それからは、なんとか課金NPCと目を合わさないようにして入り口まで到着できたのですが、課金破産しないで辿り着けたプレイヤーは思ったよりも少なく、大半のプレイヤーが最初の街から出る事すら叶わずゲームオーバーになってしまったみたいです。


 ここまで最初の町のNPCが恐怖なゲームは、他にあんまり無いかもしれません…………。


 

 ――――最初の街から無事に脱出出来た私達はそのまま道沿いにそって歩いていると、小さな村を発見したので、ひとまず寄ってみる事にしました。


「…………ここもNPCが課金しろって言ってくるのかな?」

「まあ決定ボタンが逆になってる事が分かってれば間違って買うことも無いですし、情報だけ集めて次に進みましょう」


 村には私達より先に到着したプレイヤーが何人かいるようで、既に情報収集に入っている人もいるみたいです。


 私達が村の門をくぐると早速目があったNPCがこっちへと向かってきて、問答無用で会話が始まりました。


「こんにちは、ここは正直村よ。村に来た記念にこの課金アイテムを買っていかない?」


 最初の街で散々言われてもうなれっこになったので、何も考えずに決定しようとした瞬間、村の奥から「ぎゃあ」とプレイヤーの悲鳴が聞こえてきました。


「…………え? なんで!?」


 ここまで辿り着く事の出来たプレイヤーが間違えて高額アイテムを購入する事なんてまずないはず…………。

 だったらきっと、プレイヤーが間違えるような仕掛けが何か…………。


 その時ふと村の入り口にある看板が目に入り、急いで選ぼうとした選択肢の逆を選ぶ事にしました。


「忍さん! 今回は丸ボタンですっ!」

「え!? なんで?」

「ここは嘘つき村。つまり買わないって言ったら、逆に課金アイテムを買わされちゃいます!!!!」

「はぁ!? 何よそれ!」


 ギリギリの所で気が付いた私達は何とか高額課金を回避し、ひとまずNPCのいなそうな建物の裏側へと避難します。


「逆とかズルくない!?」

「いえ。ちゃんと村に入る時に必ず通る場所に書いてあったので、よく確認しない方が悪いって考えも出来ます」

「え~、でも…………」

「説明書を読まずに間違った使い方をして壊したら、間違った使い方をした方が悪いですよ? なので今後は立て札や周りにも注意しないと」


 ―――――その後も購入ボタンが毎回入れ替わるランダム村や1秒以内にイイエを選択しないと購入になってしまうせっかち村、課金しないとゴミみたいな物しか貰えない基本無料村など、どうにかして高額課金させようとしてくるNPCの猛攻をくぐり抜け、なんとか終盤だと思われる村に到着したのでした。


 今回もいつものように村に入った瞬間、NPCがダッシュで近づいて来て早速会話が始まります。


「やあ。この問題に正解出来なかったら課金アイテムを購入してもらうよ!」

「もう課金させる事しか考えなくなってるわね…………」

「村の名前すら言わなくなってます…………」


 ジャジャン! とクイズ番組で出題される前に流れるような音が流れ、NPCが問題を出してきました。

 選択肢が4つある選択問題なので、そんなに難易度は高くないはず。


「日本で2番めに高い山は―――――」

「北岳!」


 私が答えを選択した瞬間、ブブーと人を馬鹿にしたような効果音が流れました。


「えっ!? なんで!?」


 そして、預金残高の横にマイナス500万の数字が現れ、私の預金残高の数字が0に向かってどんどん減っていきます。


「あっ!? もしかしてこれは「ですが問題」かも!?」


 クイズ番組でよくある引っ掛け問題がまさか最初から来るなんて予想外でした。

 選択肢をよく見ると世界中の2番めに高い山が並んでいて、1つだけ漢字の北岳が目立つ意地悪な配置をしています。


「どうするのよ。このままじゃゲームオーバーになっちゃうじゃない!?」

「こ、こうなったら最後の手段です!」

 

 私は少し前に手に入れたカードを天に掲げ叫びました。


「リボ払いでお願いします!!!!」


 その瞬間。

 減っていった残高はピタリと止まり、NPCは元いた場所まで帰っていき、足元には高額課金アイテムが置かれていました。


「ふぅ、どんな高い物でも安く買える魔法のカードを持ってて良かったです」

「てか、それってどのみち後で払わないといけないんじゃ…………」

「だったら催促が来る前にクリアすればいいだけです! こうなったらもう後には引けないので、逆に課金しまくりましょう!」

「ええっ!?」


 それから後がなくなった私達は課金アイテムをリボ払いで買いまくりました。


「ちょっと!? たまった分の支払いしろって集金NPCが来たわよ!」

「だったらそれもリボ払いでっ!!!!」


 私はリボ払いの支払いを更にリボ払いで支払う事にして、どんどん課金を続ける事にします。

 しかし借金に借金を重ね続けたた結果、5分に1回はNPCが集金に来るというお尋ね者状態に…………。


「どうすんのよこれ? クリア出来なかったら大変な事になっちゃうじゃない!!」

「ゲームマスターさえやっつければ、何とかなるはず…………あっ!? いました!?」

「えっ!? ちょっと、桜!?」


 GMを発見した私は一直線に走り出し、後ろから武器で斬りかかります。


「やああああっ。廃課金クラーーーッシュ!」


 課金総額5000万の刃が煌めきながら弧を描き目の前のプレイヤーを一閃すると、そのプレイヤーは一撃で崩れ去り、直後ゲームクリアのアナウンスがゲーム内に流れ出しました。


「やったじゃない! ――――ところで、何でこの人がGMだって気が付いたの?」

「プレイヤーネームの所に赤字でGMって書いてありましたから」


 忍さんは倒れているプレイヤーの名前を見て、本当にGMである事を確認したら、


「最後まで雑すぎるでしょ!」


 と、呆れながらもクリア出来た安堵感から軽く息を吐き笑顔を浮かべました。



 それから、数日後。

 私達がゲームをクリアした事でプレイヤー全員の口座には課金したお金が戻ってきて、廃課金で社会的に死んだ人も全員無事に復活して、めでたしめでたし。


 と思ったのですが1つだけ問題が残っていて――――。


「ああっ!? これ欲しいけど今月はお小遣いが…………。そうです! こんな時はリボ払いを使えばいいのでは!?」

「ちょっと待ったーーーー! 桜、買い物はちゃんと計画的にしなさいよね!」

「うぐっ。そうでした」


 無駄遣いグセがついてしまったので、直さないといけなくなっちゃいました。



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