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人形列車 月の色10

「はあっ…………はあっ…………」


 威力に耐えられなかった杖は半壊し、使い物にならなくなっていました。

 魔力を全て使い果たしたから、もう魔法を使う事は不可能。


 けど現時点で審判の判定がされないので、まだゲームは続行中。

 と言う事はつまり……………。


 緊張感に包まれながら、私は棒としての意味しか持たなくなった杖を強く握りしめる。

 

「ちょっとビックリしちゃったかも」

 

 崩れた瓦礫の壁を吹き飛ばしながらマリアさんが飛び出てきて、10点満点の着地を決めてからスカートに付いた汚れを軽く払いました。


 チャージが足りなかったので、まだ体力が1割くらい残っているかも。


 ―――――いえ。

 足元に人形が2体転がっているので、攻撃が当たる瞬間この2体の人形でガードしていたら、2割以上残っている可能性だって…………。


「ふふ。時間切れまで逃げて、今回も引き分けにする?」


 残り時間を確認しましたが、流石に今の状態で逃げ切れるようなタイムは残っていません。


 マリアさんの人形は時間経過で復活。

 比べて私はもう魔法が使えない。


 マリアさんはゆっくりと近づきながら勝ち誇った顔で宣言しました。


「これで、マリアの勝ちね!」

「――――それはどうでしょうか?」

「どういう事かしら?」

「こういう事ですっ!」

 

 私はメニュー画面からリタイアを選択。


「そこまで! 勝者、マリア・ローランド!」 

 

 ジャッジがマリアさんの勝利を告げた瞬間バイザーを外すと、列車は駅のホームに突入していきました。


 ――――そう。

 別に私の目的は勝負に勝つことでも、ゲームのタイマーが0になるまで逃げ切って引き分けにする事でも無く。


 列車が駅に到着するまで時間を稼ぐ事なのだから。


 列車の天窓から落っこちるように中に入り、近くにある棒に捕まって列車が止まる衝撃に備えます。


 そして、列車が駅に停車したのを確認すると、リニスと一緒に扉が開くのを恐る恐る待つことになりました。


 これは流石にこんな人がたくさんいる場所では襲っては来ないだろうって、お願いに近い賭け。

 

 走るのが完全に止まった列車は、警笛を鳴らしてからゆっくりと扉を開いていきました。

 そして扉が完全に開き終わると、そこには1人の人物が私達を出迎えます。


「ナイスゲーム。なかなか良い試合だったぞ」

「あの。マリアさんは?」

「あやつなら列車が止まる前に飛び降りて、どこかに行ってしまったわ」

「―――――そうですか」


 もうこれ以上のゲーミングは無いと思った私は、マテリアルデバイスの装着を解除してから列車から降りる事にしました。


「ちょっと待て。あやつから言伝を預かっているから聞いていくといい」

「マリアさんからですか?」

「うむ。次に会った時もゲームで遊ぼうと言っておったぞ」

「……………」


 流石にしばらくは会いたく無いような…………。


「さくら~。早く行きましょうよ~」

「えっと…………」


 私達が降りた列車を見ると先頭車両以外が無くなっていて、駅にいるお客さんがかなり困惑しています。


「後の事はワシに任せていくがいい」

「えっ!? いいんですか?」

「なに。良い対戦を見せてもらったお礼だ」


 ジャッジさんは親指を立てて、キラリと白い歯を見せました。

 まあ私達がここにいても出来る事は状況説明くらいしか無いので、ここはお任せするのがいいのかもしれません。


「すみません。では、お願いします」


 私達はジャッジさんの言葉に甘える事にして、列車を後に目的地の教会を目指す事にしました。


「シャンティ、目的地までのナビをお願いします」

「オッケー」


 駅の門をくぐり外にでると、街頭が夜の街を作っています。

 辿り着けるかちょっと心配だけど、ナビさえあれば問題ないと思います。


「ついたよ」

「って、早すぎです!?」

「いや、だってすぐそこだし」

「すぐそこ?」

「ねえ、桜。あれの事じゃない?」


 リニスが指をさした方を見ると、なんと目的地は駅前徒歩2分の場所にあったのでした。


「えっと…………確かに同じ紋章です」


 リニスの入っていたカバンと紋章と教会の入り口上部に付いている紋章を見比べると、デザインは完全に一致。


「どうやらここで間違いないみたいですね」


 教会の大きな扉を押すと、ギイギイと鈍い音をたてながらゆっくりと開いていきます。

 時間が遅いからなのか礼拝に訪れている人は1人もいなくて、唯一中にいた神父の格好をした男の人が、私達の来訪に気が付くとゆっくりと近付いてきました。


「あれ? こんな時間にどうかしましたか?」

「あの。このカバンなんですけど」


 私は神父さんにカバンの紋章を見せると、納得した様子で。


「なるほど。君が報告にあった子だね」


 と、何か合点がいったみたいな表情を浮かべました。


「…………報告?」

「もうすぐ準備が終わるみたいだから、ちょっとだけ待っててくれるかな?」

「…………準備?」

「――――あれ? もしかして何も聞いて無かったりする?」

「えっと」


 キョトンとしている私に状況を理解した神父さんは、現在私が置かれている状況を説明してくれるみたいです。


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