人形列車 月の色4
「う~ん」
「……………ん? 望、どうかした?」
「ねえ。なんで忍ちゃんはポーズしないの?」
「べっ、別にいいでしょ、そんなのしなくても!」
「え~。せっかく望がやる気を出してたのに、これじゃあ気合が入らないよぉ…………」
そんな忍さん達がゴタゴタしている間に対戦相手の2人もデバイスの準備を始めるみたいです。
「神聖なる霊鳥よ」
「私達に勝利を」
「エスカレーション!」
2人は私達が使っているような普段一緒に行動しているタイプのデバイスでは無く、どこからか転送されてきたデバイスを装着し、ゲーミングの準備を完了させ2人でポーズを決めました。
―――――そして、それを羨ましそうに見つめている望さんの姿が。
「ほぉらぁ~。あっちはちゃんとやってるのにぃ~」
実を言うと、望さんの実力はやる気に左右されすぎるのが難点です。
絶好調の時はやる気補正だけで本来の実力の500%以上の力が出せたりもするんですが、その逆も。
つまり調子の悪い時は極端に動きが悪くなってしまうんです。
忍さんもその事は知っているので、あんまり望さんのテンションを下げる事はしたくは無いはず…………。
「…………アルティ。ディスパージョン」
「は~い」
音声に反応したアルティは忍さんの体に装着されているマテリアルデバイスを解除して、元の姿に戻りました。
――――――そして、忍さんは「はぁ」と深いため息を1つ吐いてから。
「行くわよ、アルティ! コンバージョン!」
「了解。マテリアルデバイス・トランスフォーム」
みたいな感じで気合を入れた掛け声を発すると、再びアルティが分離して忍さんの体に装着。
そしてちょっぴり頬を赤く染めながら、「ビシッ!」っと指差しポーズ。
「ね、狙った相手は外さない! 百地 忍よ!」
みたいな感じで何とか決めた感じなんですが。
「…………う~ん。30点?」
「望がやれって言ったから、やったんでしょ!!!!」
「わ~。忍ちゃんが怒った~!?」
と、望さんの一言でブチギレた忍さんは望さんを追いかけはじめました。
あっけにとられた忍さん達の対戦相手は、その場でおいかけっこを始めた2人を見つめていましたが、「ハッ」とすぐに目的を思い出して通信を接続。
「私達を無視するなーーーー!!!!」
「勝負よ!」
「望! ちゃんとやってあげたんだから、真面目にやりなさいよ!」
「おっけー、おっけー。望に任せてよ!」
全員のデバイス間の接続が終わり、全員の見ている景色が同時にゲームの世界に変化していきました。
「アルティ。クラスはいつもので行くわよ!」
「了解。マジックガンナーだね」
「それじゃあ、望もいつもので!」
「…………にゃ、にゃわん?」
なぜか望さんの言葉にごんすけが困惑しています。
「望。なんか変な設定とかしてないでしょうね?」
「う~ん。特に何もしてないと思うんだけどなぁ………………」
「じゃあ、なんでごんすけが困ってるのよ!」
「それは、え~と……………ああ~っ!?」
「なんか思い出した?」
「よく考えたら、望。いつものとか設定して無いじゃん!?」
「…………は?」
望さんは基本的にその場のノリで使うクラスを決定していたのでした。
「ちょっと! すぐに対戦が始まるから、早く決めなさいよね!」
「え~。そういわれても、こんなにあったら迷っちゃうよ」
そうこうしているうちに出撃ゲージもあと僅か。
「別にどれでもいいでしょ!」
「ちっちっち~。忍ちゃんは分かってないなぁ~。タッグ戦はクラス相性とかあるんだよ?」
「じゃあ相性のいいのを選びなさいよ!」
「そうだねぇ~。それじゃあ――――――」
そして出撃ゲージが0になる瞬間。
「よ~し。だったら望はこれっ!」
パッと目についたクラスを選択すると、両手にそのクラス特有の装備品が現れました。
忍さんの選択したクラスは。
マジックガンナー
攻撃 A++
防御 F
速度 D
射程 超・長距離
魔力を込めた銃弾で戦う遠距離クラス。
火力と射程距離に特化しているので、相手を遠距離から一方的に倒す事が出来る。
反面。防御は薄く速度も遅い為、近接クラスに接近を許したら何も出来ずに一方的にやられる可能性が高い。
遮蔽物に隠れたり、味方に守ってもらいながら固定砲台として戦うのが基本的。
1発の火力の高い銃弾を扱うから連射は出来ずリロード時間も長いので、高いエイム命中率が求められる中級者向けクラス。
そして望さんの選んだのは。
にゃんにゃんテイマー
攻撃 C
防御 B
速度 D
射程 近~中距離
猫ちゃんを召喚して戦うクラス。
召喚した猫ちゃんには能力があり、それを上手く使えるかが勝負の分かれ目。
対戦フィールド 山岳
身を隠せる樹や岩が多め
忍さん達は下 相手は山頂からのスタート