人形列車 人形使い2
想像以上の美味しいお弁当に満足していると、列車が止まりアナウンスが流れ始めました。
「到着したみたいだな。これからどうするんだ?」
「えっと。テーマパークに行こうと思ってるんですけど、他に行きたい所とかありますか?」
「望は食べ歩きツアーがしたいなぁ~」
「あっ、それもいいかも!? ねえ、桜。どっちも行くってのは?」
「――――流石に時間的に厳しい気が」
「じゃあ二手に分かれて後で合流する事にするか?」
「そうですね。本当は皆でテーマパークに行きたかったんですが、他に行きたい所があるならそっちに行った方がいいですし」
―――――――と、いう訳で。
桜、リニスチーム。
和希、望チーム。
に分かれて午前中は行動して、夕方頃に落ち合う事になりました。
列車から降りてしばらく歩くと、それぞれの目的地へと誘導する電子案内板が出てきたので、ここでいったん別行動です。
「んじゃ、また後でね~」
「終わったら連絡する」
「はい。楽しんで来てください」
「それじゃあ、望。お土産よろしくね~」
「おけー。じゃあモダン焼きを買ってくるよ」
「また粉もの!?」
2人と分かれてから私達はテーマパーク行きのバスが出発するバス停まで行くことにしたのですが、ちょっと知ってる気配を感じた私はとっさに足を止めました。
「ちょっと止まってください!」
「あれ? 急にどうかしたの?」
「このパターンも今回で3回目。なので多分この先には……………」
私は壁に張り付きながら向こう側を見てみると、売店で買い物をしている忍さんを発見。
「ほら。やっぱり忍さんがいました」
「あの子も桜の友達なの? だったら――――」
「はいストップ!」
「はい?」
「毎回旅先で友達と会うのは2回で終わりにして、今回はあえてスルーする事にします!」
「ええっ!? せっかくあそこでスタンバってるのに!?」
「スタンバっててもですっ! ―――――という訳でシャンティ。ステルスゾーン展開!」
私は手を前でクロスさせるポーズを取りながらステルスモードの発動を指示し、誰からも察知されない状態になりました。
これでもう忍さんどころか道行く人にだって姿を見られる事はありません。
「これで安心です。それじゃあ行きましょうか」
私達は人にぶつからないよう注意しながらテーマパークへの道を進みました。
予想通り誰も私の事を見る人はいなくて、なにか可笑しいと思っても何事も無かったかのように皆が自分達の目的地へと足を進めています。
「わ~。ほんとに桜を見る人が誰もいないね~」
「なんとか成功したみたいですね。これで忍さんに気付かれる事も…………あれ?」
「どうしたの?」
「ちょっと見失っちゃったみたいです」
ステルスモードは姿を隠す事と引き換えに、視界が悪くなるといった弱点があるのが難点です。
本当は光学迷彩の機能のついたキグルミでもあれば良かったんですが、あいにくそんな都合のいい物なんて無いので、現状のこれでなんとかやりくりしないと。
まあ忍さんの姿が見えないって事は、たぶんどこか他の場所に移動して行ったんでしょうね。
そういう訳で、もうステルスモードは解除しても良さそうですが、一応念の為に出口まではこのまま解除しないで進みましょう。
「ふう。とりあえず忍さんには後で連絡する事にして―――――」
「………………あたしがどうしたって?」
「えっ!?」
突然後ろから忍さんの声が聞こえてきました。
私の姿は見えてないはずなのにどうしてバレたんでしょうか…………。
「てかそんなの取りなさいよ」
忍さんにステルスモードを強制解除され、私の姿が現れました。
「ああっ!? 私のステルスダンボールが!?」
「こんなんでステルスになるわけ無いでしょ!!!!」
「そんな事ないです。スネークはダンボールで完全に隠れて基地に潜入してましたし、私もさっきまで誰にも見られませんでした」
「それは誰にも見られてないんじゃなくて、見なかった事にされてただけでしょうが!」
「ええっ!? そんなはずは…………」
「それにダンボールの後ろからシャンティがついて行ってたから、桜だって事もバレバレだったんだからね!」
ま、まさか完璧だと思ったステルスモードにそんな弱点があったなんて。
「わかりました。次からはシャンティも入れるくらい大きいダンボールを用意します」
「よけい不審になるだけでしょ!!!!」
忍さんにバレてしまったので不要になったダンボールを折りたたんでいると、リニスが話しかけてきました。
「ねえ桜。バレちゃったけど、これからどうするの?」
「そうですね。というか、そもそも何で忍さんがここにいるんですか?」
「え? 昨日の通信で部活の合宿に行ってるって言ったじゃん。それで合宿が終わったからちょっと買い物して帰ろうかなって思ってたんだけど」
そういえばそんな事いってたような?
「えっと。今後の予定とかってどうなってるんですか?」
「特に決まってないけど?」
「じゃあ、あなたも一緒にテーマパークに行きましょうよ!」
「そうですね。暇な忍さんもいれて3人で遊んだら楽しさも3倍です」
「暇ってどういう意味よ! ―――――って、そっちの子は桜の知り合いなの?」
そういえば忍さんは初見でしたっけ。
私は列車で知り合った少女の事を忍さんに説明して。
「あー、そうなんだ。よろしく」
「うん。よろしくね~」
あっさり友達になってくれました。