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6 荒ぶるススキ野

本編の該当箇所


17 騎士は逆チート「さとり」を使えるようになった!

18 清純派ナイト・ルシーズ

 「(もう…ホントやだ。何なのホント、本編ではモブキャラで隠しキャラとして出てくる上にイマイチ物足りないエンディングだったくせにさぁ!しかもさ、バッドエンドがメンヘラでとある主要キャラと丸被りだったんだよね。)」

 だからメンヘラって何だよ。


 『めっちゃやりこんでるやんw』


 「メンヘラ、とは?」


 『君の仕えている皇女様の事だよ。』


 皇帝の娘の事をメンヘラと言うのか?それとも害悪客の事か?


 「あなたは知らなくて良い事なんです!」

 『そんな卑猥な単語でもあるまいし、ケチらずに教えてあげれば良いじゃん。』

 卑猥な事言ってたらそれこそ問題だろ。それでもルシーズのままで対応しなきゃいけない職場だからちゃんとするけど。


 「分かりました。」

 まあ良い、ここで追及して変に疑われるのも面倒だ。


 私は話を変える事にした。

 「時に皇女様、今向かっているアイダルタル領ですが、後継者の双子は共に有名な美青年だそうですよ。」


 『アイダルタルって事はもうそのバッドエンド傾向が被ってる主要キャラじゃん。』

 脚本を手抜きしたみたいに言うな。


 『ちなみに、アイダルタルの双子の弟は攻略キャラの内正規キャラの1人なのでもちろんメンタリズムのチートをかけている。そのシーンにいるというか、画面に映ってさえいればシズとほぼ同時にサトリが発動するようになっている。』

 ありがた迷惑だ。


 「ああ、聞いています。よく貴族のご令嬢たちの噂の的ですからね。ふふっ、良い性格しているそうじゃないですか。」


 「(何でも、こっぴどく振る兄とものすごく困惑した表情になる弟がいるんでしょ?態度に出しちゃうんでしょ。)」

 そうそう。


 『そういう設定なのは合っている。公式版攻略サイトにも載ってた。だが、原作ではその噂を覆す事によってそいつルートになる。その意味では今の状況が異常だということに変わりない。』


 大丈夫だ、ちゃんとウノもこの後出てくる。今、裏方が頑張ってアイダルタル領を作っているから待ってほしい。


 『しっかしノアさん、ガチでこのゲームやってるんだな。まさか、リスナーじゃなくて俺と同じでゲーム実況者なのかな?』

 どうだって良い。


 『いや…待てよ。これは新作ゲームのはず。リリースされてからまだ1月しか経っていない。ゲームもやって、攻略サイトにもばっちり目を通すなんてこのやりこみ様…。』

 転生者だからだよ。


 『開発者にこういう人、いたっけ?』

 開発だったら取引先といえど、容赦しないで良いって社訓にあるので違いますね。


 『わざわざ俺のハック邪魔するほどの暇人はいないはずだ。ますます謎が深まる。』

 転生者だからだよ(2回目)。


 そんな応酬を1人でしていると、皇女様の視線に気づいたのですぐ話を戻す。

 そうそう、トピアス・ウノの良からぬ噂の話だったか。


 「さすがに皇女様がお相手ともなればむげには出来ないのでは?」

 実際、今の自分たちが取引先の圧力かけられてこうなってるので。


 「やだやだ、顔ばっかり良い男なんて性格が歪みまくっているに決まっていますよ!」

 フユさんに100回謝れ。あっ、ヒデツグの事なら事実だから問題ない。


 「(実際に本編ではサイコパスとヤンデレの双子だったし。顔は結構タイプなんだけど、やっぱり総合的に見るとルシーズが1番だよな。あっ、本編の話ね?今はイメージぶち壊しだけど。)」


 『遠まわしに俺がモテなさそうって言ってる?』

 あ?お前、そんなに顔に自信があるのか?バッドエンドのシリルじゃないけど顔の皮剥ぐぞ。


 「ふふっ、お褒めいただき光栄でございます。」

 でも今はルシーズだから彼らしく対応してやる。


 『解釈都合良過ぎだぞ、シズ。』

 「褒めてないですよ。」

 2人して何だ…私が笑ってる内だぞ?


 「左様でございますか。」

 「左様ですよ。」


 肩の辺りをスッと冷気が駆け抜ける。フユさん…そっか、我慢します。

 空間内のどこかでフユさんが胸を撫でおろしている気がする。


 「(ああ、本編でのルシーズ、めっちゃカッコよかったのにな~!)」

 『それは言えてる。』


 また肩の辺りを冷気が駆け抜ける。ありがとうございます、フユさん。


 「(普通、乙女ゲーで「イケナイ事」っていうのはお転婆だったり濡れ場だったりするんだけど、ルシーズの所で彼が言う所のそれは、宮殿の長い廊下を走ったり主人公が彼に告白したりするシーンで使われるから本っ当に綺麗なんだわ。)」


 この部門では、アダルティな内容の案件を受注しなくても良いという労働規約なので、拒否権はありますね~。


 「(もうしびれるって言うかさ…うん、あれでルシーズに落とされた人は星の数ほどいるに違いない。罪な男だよ、あんたは。)」


 それが仕事ですので。


 『キター!この動画名物、乙女の妄想!!

 この異常事態だって言うのに、どストライクな女に興奮するとは…。』


 楽しそうだな。出来ればカフェなんかの公共の場で興奮して恥をさらしてほしいものだが。


 「皇女様、妄想はイケナイ事とは申し上げませんが、さすがに私でそのような事をお考えになるのはおやめくださいませ。ちょっと気恥ずかしいもので…」


 『お前、デレてんじゃねぇよ。』

 デレる演技だ…あっ、フユさんありがとうございます。

 右肩がだんだんひんやりしてきた。


 『皇女がここまで汚れ仕事やってんだからさ、お前は皇女をカモフラージュするためにもっともっと…ヨゴレロよ。』


 今度は左肩にきたか。

 「レフ君が風邪引いたらいけないから…」とか思っていそうだ。フユさんの優しさは荒んだ心を癒してくれる。

 ただ、右肩から左肩に対象が変わった所でそう変わらない気もするんだが…そこはフユさんのたまに出る天然だ。


 「不意打ち禁止です、隠しキャラ!」

 『メタ発言するなって!』

 ホントだよ。まあ、マニュアル通り知らないフリをするけど。


 「その隠しキャラというのもどういう」  「シャラップ!」

 言葉遣いには気を付けてくださいね~。


 『シズの暴走を食い止めるの、楽しいわ~。』

 道のすぐ傍のススキ野がざわっと揺れた。フユさん、外しましたよ。


 『あっ、いや、ノアさんの暴走を食い止めながらシズの綺麗なツラと体裁に泥塗るの、楽しいわ~。何かコントみたいになってきたわ~。』

 ススキ野が荒ぶっている。今日は風が強いな~(という事にしておこう)。


 「私の妄想は聞かなかった事にしてくださいよ!」

 「…ええ。」

 無茶だろ。


 裏方でこの道長いフユさんですら、動揺のあまりススキ野上空で冷風を吹かせているんだから。「あわわわわ…」という心の声が聴こえてきそうだ。


【第3回反省会議】


フユ(ウノ):「本っ当に申し訳ない!」

レフ(ルシーズ):「いえ、ノアさんもオトセンさんも気づいていなかったので大丈夫だと思いますよ。」

フユ:「気を引き付けてくれてありがとうね…今度から気を付ける!」


エベッカ(シリル):「ね~フユ君、あれってフユ君自身が暴走したんじゃないよね?どういう事故なの?アイダルタル入ったら僕が裏方入るから何かあったら教えて。」


フユ:「俺ね、裏方に入った時は空間内に密度調節して魔力を放ってるんだよね。それで決めた空間に命令を出してすぐ発動するようにしてるんだけど、レフ君への暴言がすごくて俺が軽くパニック起こしてススキ野上空に魔力を追加しちゃった。」


エベッカ:「あ~、じゃあ僕には出来ない芸当だから大丈夫だ。空間内に魔力を拡散しておくとか君みたいな魔力量がえげつない人しか出来ないやつだもの。」


コレット(事務):「それで、すでに自然な風が起こるよう命令を出していたものだから風が強くなっちゃったわけですね。」

フユ:「はい…本当にすみません。」


ヒデツグ(ヨナーク):「ところで、レフの傍に寄ると涼しいんだが、何かあったのか?」

フユ:「ああ、それは…」

レフ:「私がキレそうな時に、フユさんが冷風を放って落ち着かせてくれていたんだ。」


ヒデツグ:「ああ…顔が良くて性格が歪んでるって、ばっちりお前の事だもんな?」

レフ:「いや、お前だろ。」


ヒデツグ:「誉め言葉として受け取っておく。」

レフ:「褒めてないぞ。」


ヒデツグ:「…レフ、この後ヨナークのバッドエンドの練習に付き合え。お前のバッドエンド回避イベントでも良いぞ。死なない程度に潰す。」


レフ:「ハッ、甘いな。エベッカさんに顔の皮剥いでもらった後、ウノのバッドエンドごっこをしよう。自傷してより長く気を保っていた方が勝ちだ。」


フユ:「ちょっと、ケンカやめなよ…しかも何その気が触れたとしか思えない遊び。」


ヒデツグ:「おう、良いな!」

エベッカ:「バカなの?!やだやだ、僕しないよ!」

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