5 レフとルシーズの狭間で
「早く着かないかな~。」
「次の町まではこのままのペースだとあと30分、といった所でしょうか。」
ちなみにこの30分は仮想空間に次の街区を形成するための時間稼ぎだ。引継ぎは上手くいったものの、細部は作られていないので本部スタッフの方で世界を作り上げている。
「(この2人きりの状態が半時間も続くのか?!やってられるか!)」
『おっ?おっ?おっ?』
キましたか。
「止められますか?」
「いいえっ、止めません!」
煽りが足りなかったか。
「(危なかった…)」
そうそう、それで良いんですよ。
「(ていうかさ、な~んで豪華絢爛な感じの貴族恋愛のはずがこう…RPG系になってるのさ。)」
『俺も商売になってないから案件元から怒られるんだよ。』
こっちも大損害受けてるんだ。
『もう既にバグかアンチのハックか分からない現象が起きてるけど、チートプレイのアプリは正常に起動しているみたいだし、見てて面白いからもう付き合うよ?』
面白い、で済まされるなら良かったのに。仮想空間の維持がどれだけ大変だと思ってるんだ。
「(確かに推しと2人きりっていう状況は美味しいよ?うん、すっごく美味しい!)」
のんきで良いな…と遠い目をしそうになるのを必死にこらえる。
『マジで?!推しなの?!あれ…じゃあ初見プレイじゃないって事?』
だから面倒なんだよ。ネタバレするせいでストーリーを新しく考え、仮想空間も大半を修正しているのだから。
「(だけどさ…何か読心術とかいうチート使ってくるし、性格割と悪いし、何なの?)」
『チート…まさかノアさん、俺のリスナー?!
そうか、君はハック先特定して接続させるぐらいの技術を持つファンまたはアンチなんだね(歓喜)!この世界でオフ会だね、ノアさん!』
そこで盛り上がるな。本部の室長として言い渡す…コホン、お客様の好きにはさせません故。
「(猫かぶりか、コラ!)」
ええ、そうですよ?レフはルシーズとは違いますので。
「ふふっ、皇女様がどのような夢をお描きになっていらっしゃったかは幼い頃より伺っておりますのでよく存知上げております。ただ…私のせいで時間が少なくなってしまい申し訳なく思います。どうです、今の内に引き返して恋愛を楽しみなさるのは?」
『シズ、その笑顔イケメン過ぎてうざい。』
この顔をお褒めいただき、ありがとうございます。
「また馬鹿にして!」
推しだったら多少の八つ当たりは許してくださいますよねぇ?
【第2回反省会】
ヒデツグ(ヨナーク):「おい、ルシーズが遠い目を隠しきれてないぞ。レフが出てる。」
レフ(ルシーズ):「ぐっ…そう言われると…」
エベッカ(シリル):「いや、あれでも耐えた方だって。良いよねぇ、ノアさんもオトセンも。それなりにメリットあるんだも~ん。バカ見てるのは僕たちだけ!」
レフ(ルシーズ):「…しかし、私はあの空間ではルシーズ。確かに今回は気が緩んでいたと思います。心してルシーズを演じます。」
フユ(ウノ):「あの、レフ君だけ抱え込むんじゃなくって、俺達もじゃんじゃん頼ってね!この後の引継ぎで俺達の振る舞いも学べるし、お互いにとって大事だと思うんだ。」
ヒデツグ:「それもそうですね、こうして共有はしますけど、やはり肌で感じるのが断然仕事の質が上がりますから。」
コレット(事務):「キャストだけでなく、事務方にも遠慮なくやってほしい事を仰ってくださいね!」
レフ:「皆さん…ありがとうございます!」
ヒデツグ:「…しっかしエベッカさん、やたら機嫌良いですね。」
エベッカ:「レフ君に惚れた!『本部の室長として言い渡す…お客様の好きにはさせません故』!」
レフ:「【魅了】スキル使って低音ボイスで言うの、やめてくださいよ。」
フユ:「ほんと、ほんと。本家を超えるモノマネをしないの。」
エベッカ:「えへへ~、でも心強かったよ。レフ君がリーダーで良かったって思った!」