背後にご用心
「なあ、俺の携帯は?」
男が聞く。
「あっここにあるよ。はい、どうぞ」
女が携帯を渡すと満足そうに男が言う。
「ありがとな」
それに女も微笑む。
「うん」
貴方はまだ知らなくていい
「ねえ最近旦那さんとは上手くいってる?」
友達が女に聞く。
「もちろん。でも最近なんだか調子が悪そうなんだよね。あの人私には元気な姿を見せようとするから心配」
「そう。それは心配ね。そういえば…」
精々みんなに広めてね?
「んー?」
男が頭を抑えたり目を擦ったりしている。
「どうしたの?」
女が聞く。
「最近なんだか頭痛がしたり目がかすんだりするんだよな」
「そうなんだ。大丈夫?」
「ああ。病院に行こうかな」
「でも仕事休めないでしょ?」
「まあそうなんだよな」
「きっと大丈夫だよ。今日はゆっくり休んだら?」
「ああ、そうするよ」
忙しいタイミングを狙ったんだから病院なんて行けないでしょ?
「おはよう」
「おはよう。いい匂いがするな」
「そうでしょ?今日は豪華なの」
「お互い休みだからゆっくり食べられるな」
「そうだね」
精々最期の食事を楽しんで?
「ふーお腹いっぱいだ」
「それは良かった。…ところでさ」
「ん?どうした?」
「私、あなたを殺そうと思うの」
「ん…?…ハハッ急にどうしたんだよ」
「そろそろかな…」
「えっ何が…ぐっガハッゲホッ」
男が倒れるのを無表情で見つめる女。
「な…んで……」
「ッ貴方が裏切るからでしょ!?どうして…どうして浮気なんて…」
「ゲホッ…ゲホ…ッ……」
やがて男が動かなくなると女は男の側で泣き崩れる。
「…あーあ」
そこへ女の友達がやって来る。
「なっ何で…ここに!?」
「何でって私が薬あげたんじゃない」
「そっ…うだけど…私が彼を殺すなんて言ってないし…」
「随分調べたみたいだけど私があげた薬を多く飲み続けると死に至ることぐらい医療関係者としては当然に知ってるのよね」
「お、お願いこのことは…!」
「言わないわ。だって貴女も死ぬんだから」
「……え…?」
「ダメじゃない。人から貰ったものを簡単に口にしちゃ。特に私みたいな人からのはね?」
「ま…さか……」
「まだ時間はあるわ。だからいいこと教えてあげる。旦那さん、浮気なんてしてないわよ?」
「えっ……?でっでも写真だってあったし貴女も見たって!」
「ええ。でも写真は今の時代いくらだって加工出来るのよ?証言だってもちろん嘘」
「なっ何でそんなこと…信じてたのに…」
「そんなこと知らないわ。私は貴方達が憎かった。それだけよ」
「何で…じゃあ私は……」
「本当馬鹿ね。でも私の言葉で簡単に殺意が芽生えて実行しちゃうんだから。その程度の愛だったってことじゃない?」
「っざけないで!ふざけないで!誰のせいでこうなったと…!っ!?ゲホッ」
「あー危ない。やっと効いたのね。……本当、憎いぐらいお似合いね」
後日、男女が寄り添うように手を繋ぎ亡くなっている遺体が発見された。
そしてその近くのビルで屋上から飛び降り自殺した女性の遺体も発見された。この女性の遺体の顔には涙の跡が残っていたという。