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クラスと幼馴染

「じゃあここで待っててね」

「はい」


 生徒が誰も居ない廊下で谷先生に言われた通りにユウは教室の前に待機する。先に先生が入り落ち着いたタイミングで呼ぶという段取りである。


「はーい。皆さん席についてますね」


 谷先生が入った事により1つの席に視点が集まりクラスメイトの誰かが質問する。


「センセー那谷がまだ来てませーん」

「学校に来てるとは聞いてまーす」

「サボリですかー?」

「誰かと駆け落ちですかー?」

「でも高橋さんここに居ますよー?」

「不倫ですか?」

「サイテー」


 好き勝手言っているクラスメイト達と何故か話が飛び火している高橋に谷先生は苦笑いする。落ち着いてと宥めながらも事情を説明する。


「えー那谷君ですが諸事情により見た目が大きく変わっていまして現在教室前に待機中です……前以てこれだけは言っておきます。彼は好きでその容姿になった訳では無いです。彼自身も未だに自分の状況に困惑しているという事も理解しておいて。では那谷さん(・・)入って」


 呼ばれたユウは不安と緊張の中、深呼吸の後教室の扉を開ける。


「…………」


 視線が一斉に集まる。誰も何も言わない。ユウが教壇の横に立ちクラスメイトに顔を向ける。誰だお前はと言わんばかりの視線の雨に負けそうになる。幼馴染2名の顔を見る。

 阿久根は特にリアクションは無い。しいて言うなら頑張れといった感じである。高橋は大層驚いている。だよなと内心苦笑い。


「では自己紹介を」

「この度、事情により女子になってしまった那谷ユウです。いつ戻るか分からないが今後ともよろしく」

「……」

「……」


 時間が止まったかの様に全員押し黙る。何のリアクションも無く内心泣きそうになっているユウ。


「え……」


 誰かが息を漏らす。それに釣られてクラスメイトが現実を認識してそして。


「「えええええええ!!??」」


 言葉が弾ける。


「え!?ちょ!?お前が那谷!?ウッソだろお前!」

「転校生じゃなかったのかよ!てか誰も気づかんわ!」

「校門前で見かけたけどそりゃ先生も怪訝な顔するわ!」

「何で!?そんな美人さんになってんだよ!」

「てか本当に那谷なのかよ!?」

「ホントにユウだぞ」

「てか何で阿久根が知ってんだよ!こいつ学校には居るって言ってたぞ!」

「あっ!そういやそうだ!」

「こんな状態になってんなら説明しとけよ!」

「「そーだそーだ!」」

「説明しても理解できねーだろ。ユウが女になったとか。最悪俺の頭が疑われるわ」

「「ごもっとも!」」


 などとコントを噛ましている男子連中に対して女子はと言えば。


「えっ嘘マジ?あれが那谷?」

「背が私達と変わんない位になってんじゃん」

「てか何あのスタイル」

「女子に喧嘩売ってるとしか思えないわね」

「これは後で確かめる必要があるわね」

「高橋さんは知ってたのかしら?阿久根くんは知ってた様だけど」

「う……ううんメールでは明日来れるとだけ聞いてたし最初わからなかったよ」

「ちょっと高橋さん。嫁として男子に負けるってどうなの?」

「だからまだ嫁じゃないってばーそもそも付き合ってすらいないし……」

「まだとは付けるのね」

「あーほら泣かない泣かない。チャンスはこれからもあるから」

「そう言われてもう8年近く経ってる……」

「よーしよーし私達が悪かったから。泣かないで高橋」


 不穏な事を言いながら高橋をいじっていた。混沌とした空気の中で谷先生が手を鳴らす。


「静かに。那谷さんは席に座って。質問は朝のホームルーム後にしておいてね。じゃあ始めます。日直!」


 谷先生に促され一番後ろの席に着く。視線をヒシヒシと感じながらも問題なく進むホームルームであった。


…………


「それで那谷くん?なーんでそんな姿になったのかしら?」


 朝のホームルームが終わり1限前の休み時間。クラスメイトに囲まれながら倉須院が皆を代表して質問する。


「姉さんの謎の発明品のせいです。はい」

「何で女子に?」

「女子力うんぬんと訳わからんものに反応したとか。本来は女性に使う物っぽい」

「その容姿は指定できるのかしら?」

「姉曰く出来ないと。そもそもここまで変わる事例が過去に無いと」

「……いつ戻るかわかってるの?」

「一番大きく変わった人で1週間だからそれ以上かかるって言われてる」

「なんで昨日休んだの?」

「着る服がなかったんだよ。30センチ差の男物なんて合う訳ないし……それに色々必要だったから」

「女子制服の理由は?」

「学校から指定された」


 などなど10分間の質問攻めに合い最終的に本人かどうかの確認まで行われた。1限目が始まり皆が席に着くのであった。


……

…………


 4限目が終わり昼休み。他のクラスメイトからの質問も大量に飛んできて休む事も出来ずにいた為、机に突っ伏している。なお今は他のクラスの生徒が女子になったユウの姿を一目見ようと廊下から凝視されている。


「お疲れさん。災難だったなユウ」

「がんばってユウさん?ユウくん?」

「今まで通りユウくんで頼む」

「わかったよユウくん」


 昼食は倉須院は用事でおらず3人で食べていた。そこでユウはずっと聞きたかったある質問をする。


「そういやさ。なんで阿久根は下駄箱時点で俺だってわかったんだ?自分で言うのも嫌だがかなり変わってるだろ」

「あっそれ私も気になる」

「あーそれか」


 阿久根はどこから話そうかと迷いながらも言葉を紡ぐ。


「えーとまずユウだと確信したのが下駄箱で自分の所に靴入れようとした時だな」

「ふむふむ……ん?その前に疑いは持ってたと?」

「まあ一番最初に実は女子になってんじゃね?って思ったのが昨日の放課後だからな」

「えっ!?そんなに早く!?」

「メールでは言ってなかったよな?」

「昨日購買で謎の女性2人の目撃情報というか噂があったんだよ。それでその1人の特徴がどう考えてもお前の姉貴だったからな。お前んちに妹居るとか聞いた事ないしな」

「あの時か……」

「でも私その噂朝少し聞いただけだったよ?」


 高橋の疑問にそりゃそうだろうと阿久根が苦笑い。


「その噂広まったのが男子だけなんだよ」

「なんでだ」

「ユウの容姿が良すぎてだな。まあ男子特有のアレだ」

「ああ……アレか」

「アレ?」

「高橋さんは知らない方がいいよ」


 遠い目をするユウ。それを見て特に言及する事無く聞き流す高橋であった。


「まあ他にもあるんだがな。鞄についてる俺があげたマイナーゲーのストラップとか生徒手帳のしまってある場所とか。そんな所だ」

「はえー阿久根くん良く見てるんだね」

「まあ伊達に幼馴染やってねーわな」

「私も一応幼馴染なはずなんだけどなぁ……」

「高橋は……まあ今後頑張れ」


 そうして昼休みの時間が少し過ぎて行くのだった。

 高橋さんはクラス公認の主人公の嫁扱いです。ちなみに姉も認めてます。

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