髪と朝
短い!
風呂上がりの後、倉須院のノートの写しを使った休んでいた分の復習と、宿題をいつもより遅くまで時間をかけて終わらせる。
そして明日の授業の確認をして準備をする。そこで体育の文字を見て、新品の体操服を持ち出し補助鞄に入れる。そして念入りに時間割と見比べながら準備を済ます。
なお、この際に少しの葛藤の後に白いポーチは鞄の中に投げ入れている。
「おやすみ」
そう言って眠りについた夜。その寝顔は昨日よりは健やかであった。
そして翌朝、いつも起きる時間より少し早く目を覚ます。手早く朝食の準備と洗濯を済ますと、洗面所にて鏡と向き合い櫛を持って髪を整えていた。
「えーと……確か昨日はこうして……」
チラチラと鏡に映る時計見ながらも、姉に言われた事を思い出しながら実践していく。そうして男の時は長く見ない自分の顔を見ていると、ある事に気付く。
「……?肌に少し違和感が」
見た目の変化は無いが試しに頬を触ると、昨日よりも少しばかり張りが無く感じるのである。これが自分だけの特徴なのか、女性全体の特徴なのかは分からないが、ユウは1つの結論に行きつく。
「姉さんに聞こう」
女性の肌荒れがどれだけ早いかは知らないが、放置してたらマズいのは何となくで察した。いつ戻るかは分からないが、別性とは言え自分の体である事には変わりない。
汚いよりは綺麗な方が良い。人として当たり前の思考である。
「ニキビ対策と同じだと思っとくか……っとこれでいいかな」
梳いていた髪を触り昨日と似た髪の触感か確認し、梳いていた髪を後ろに戻し首の後ろ辺りでゴムを用いて一纏めにする。
「……よし」
変なところが無いか鏡を見て再確認。時間を確認し姉を起こしに行こうかと振り向くと、そこには寝起き姉の姿が居た。
「あっおはよう姉さん。よかった起きたんだ。ごめん今退くね」
「あっうん。おはようユウ」
姉は本当は少し前から起きて洗面所にいたのだが、熱心に髪を梳き、髪型を整えるユウの姿は完全に女性のそれであった。
それに長い髪の女性が髪を整える姿は姉にとっては懐かしい光景であった。
(いつもお母さんが先に起きてて……起きた私の髪を梳かしてくれてたっけ)
感傷に浸っている姉だが、ユウはそれが分からずに首を傾げながらも声を掛ける。
「ご飯の準備は出来てるから、先に食べとくよ」
「わかったー」
声に反応して頭を切り替える。今居るのは大切な弟なのだと。
…………
「それにしてもユウ、今日は少し明るいね」
「あー……まあ、いい加減家の中くらいは暗い顔は止めようかなと」
ユウもいつまでも曇った表情で姉を困らせるのは本望ではない。幼馴染2人が味方であるという安心感も心に少しばかりの余裕を作らせていた。なお数時間後にその余裕はすぐに埋まるのだが。
「そっか」
「だから姉さんもあんまり暗い顔すんなって。後悔も反省もしたんだろ」
「うん……困らせてごめんね。本当に」
「ん……いいよ別にっと。ごちそうさま」
朝食も澄ませ、あとは歯を磨いて出かけるだけであった。
「あ、姉さん。帰ったら少し相談が」
「わかったー」
内容を考えずに二つ返事で返す姉であった。
……………………
髪型を変えて首元に涼しさを感じながらの登校中。昨日と変わらないずに視線を集める事となる。
「…………」
チラリと視線の先を見ると、他校の男子の視線。ある一点を凝視していたその男子と目が合ったと思うと逸らされる。
「…………」
さらに別の方向を見やるとコソコソ話す女子3人。
「……はぁ」
その視線を振り払う様に学校へ向かう足を速めるユウであった。
書きたいシーンが遠いです。




