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ドラゴンキラーはおよびでない  作者: 坪倉凛
1章 竜殺しは修行中
5/23

4 サラマンダー虐殺

何話か投稿する予定

とりあえず1話目

 翌朝。

 素振りを軽めに済まし、朝食を摂った俺は、サーラに連れられて洞窟を歩いていた。

 今まで洞窟の中を歩いたことは無かった。というか「その辺に魔物いるから、勝手に出歩くなよ」とサーラに言われていたのだ。

 今は、サーラと一緒なので魔物は出てこない。サーラに歯向かう馬鹿は、この洞窟にはいない。魔物でも、自分の命は惜しいからな。


 この大星窟は、四属性及び聖魔月陽の魔力が交差する特異点らしい。元々はただの山だったが、その魔力により、大きく構造変化が起こり、洞窟が生まれた。そのせいか、洞窟ではそれぞれの魔力の影響を受けた八ヶ所のセクションに分かれている。

 例えば、サーラが普段いる場所は月の魔力のセクションである。

 そして、今から向かうサラマンダーの巣は、言わずもがな火の魔力のセクションだ。

 俺たち二人は、歩いてそのセクションを目指していた。横道が多く、とてもじゃないが道順は分からない。


「サーラ、この道はどうやって覚えたんだ?」

「覚えてなどおらん。火の魔力を辿っとるだけじゃ」


 火の魔力を探知し、その方向へ進んでいるということだろう。その理屈は分かる。俺だって、少しくらいは探知出来る。しかし、


「いや、強い魔力が多すぎて分からないんだけど……」


 八つの魔力が交差するせいで、どこから何の魔力が流れているかなんて、まるでわからない。


「まー慣れじゃな。ぬしももっと鍛錬を積めば、いずれ出来るようになろうて」

「そーかい」


 こともなげに言うサーラに、俺は真面目に受け取らないことにした。

 火魔術ですらマトモに扱えない俺に出来ると思えない。


 しばらくすると、先ほどまでの白濁色の滑らかな岩肌が、ごつごつした赤黒い岩肌へと変化していた。どうやら、火のセクションに入ったようだ。辺りが少し暑くなった気がする。

 しばらく赤のセクションを歩いて行くと、左右への分かれ道が現れた。

 ぴたりとサーラが足を止めた。


「ここじゃ。右奥には火蜥蜴の巣がある。儂が行けば火蜥蜴どもは逃げるじゃろうから、儂はここで待っておる。取り逃がしても問題ないが、全滅させるつもりでやってこい」


 右側を指差すサーラ。なるほど、この距離なら分かる。右は火で、竜殺しのスキルのせいか、竜っぽいものを感じる。

 背中に吊るした大剣を手に持ち、深呼吸。緊張で手汗をかいていたので、それを服で拭う。心臓の鼓動が聞こえる。


「大丈夫じゃ。ぬしなら遅れはとらん」


 サーラの励ましに、思わず苦笑いが出る。どうやら傍目から見ても、相当肩に力が入っていたようだ。

 後ろを振り返らず、片手を上げてサーラに礼を言った。そして俺は、右の道へと入って行った。

 徐々に暑さが増す。背中にじっとりと汗をかく。額の汗をぬぐいながら進むと、やがて開けた広場と、そこで蠢く赤い生き物が見えてきた。

 赤熱したような岩肌の広場。そこに、数十匹の真っ赤な蜥蜴。大きさは、一メートルから二メートル程度。比較対象がサーラのせいか、小さく見える。

 俺が広場にたどり着くと、サラマンダーたちが一斉にこちらを向いた。


「「「「「「シャーー!!!!」」」」」


 甲高い鳴き声と共に、数匹が俺に向けて飛びかかってきた。

 ――あ、これはダメだ。殺らなきゃ、殺られる。

 どこか冷静な頭でそう分析していた俺は、恐怖より先に体が動き、大剣を横に振るった。

 向かってきたサラマンダーが、真っ二つにぶった切った。

 ぶちゃり、と血液やら内蔵やらがぶちまかれた。


「…………あ、あっけないな」


 酷い血臭に胃から込み上げてくるものがあったが、無理矢理飲み下すように我慢する。

 見た目はさして問題ない。生き物を殺す忌避感も、思っよりは薄い。


 仲間が一撃でやられたからだろう、サラマンダーたちに動揺がみられる。どう動くか迷っているようだ。

 俺が一歩踏み出すと、別の十数匹が口から炎を吐き出した。俺の顔ほどもある火球が十個以上も迫りくる。

 大した火力じゃない。大剣でレジストするほどじゃないな。

 最も弾幕の薄い箇所を見出し、防御魔術展開。そのまま突っ切る。

 防御魔術は魔力を用いて魔術抵抗を高める技術であり、俺個人としては体術に近い印象だ。なんかこう、気とかそういう類の。

 目論見通り、ノーダメージで炎球を受けきった俺は、そのまま火を吐いたサラマンダーたちに斬り掛かって行く。

 蜥蜴は首切っても生きていそうなイメージだったので、脳天向けての唐竹割で斬り殺す。斬り捨てる度に、ぶちゅぶちゅと血と肉片と内蔵と脳漿が弾け飛ぶ。

 俺の暴れっぷりを恐れてか、奥の方にいたサラマンダーたちが奥穴へと逃げ出し始めた。サーラの口ぶりから、無理して全滅させる必要は無いみたいなので、自分に向かってくる奴らを皆殺しにした後、追いかけられる範囲で斬殺して行った。

 動くものがいなくなった後、辺りには蜥蜴の死骸でいっぱいになっていた。


「……案外、やろうと思えばやれるもんなんだな」


 初の実践だし、サラマンダーとか強そうな名前だったのだが、やってみるとあっけなかった。殺戮への忌避感も、命の危険と天秤にかけたら簡単に殺せた。

 サーラとの修行の成果と、『竜殺し』のスキルのおかげなのはわかっているが……なんていうか、拍子抜けだ。


 ……まあ、いいや。とりあえず先にスキルの効果を確認しなきゃな。

 いつもだと、訓練後に能力が上がった気がするなー、とかなり漠然とした感じ方だっが、果たして今回はどうだろうか。


 目を瞑る。

 ……これは?

 自分の中に、今まで感じたことの無い赤い炎のようなものを感じた。それを、全身に行き渡らせ、自分の中へ浸透させる。

 

 できた。サラマンダーを殺して得た力を、自分の体に吸収した。

 なるほど、殺せば竜から力を奪って自分の中にストック出来る。それを自分と融合させて、能力を向上出来るのか。

 何となく体も軽くなった気がする。訓練のときと比べて、どの程度の変化か分からないけど……それはサーラと戦ってみたら分かるだろう。

 しかし血臭が酷い。燃やすなりなんなりして処分しないと、他の魔物が寄ってきそうだ。

 サーラに頼んで燃やしてもらおう――そう思って引き返そうとしたとき、がくりと膝が抜け、その場に倒れ込んだ。

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