第7話 『痛い』
「おい!てめえ裏切ったな。」
「あら、何のことかしら?」
ゼルの怒りの発言にセリアは、『私は何にも関係はありません』と主張するように言葉を返す。
「とぼけるんじゃねぇ!てか、何でさっきの条件に応じたんだよ?」
さっきの条件とは、『正直に言えばゼルを貸してあげる』というゼルにとったら何の利益にもならない条件だ。しかし、それはゼルだったらの話だ。そう、ゼルだったら。
「べ、別にいいじゃない。わ、わ、わた、わた、わた、私が条件に応じようが応じまいが私の勝手でしょ。」
セリアは動揺している。言葉もおかしくなっているがそんなことよりも、彼女の顔がトマトのように赤いことの方がおかしい。いや、おかしいのではない。分かる人には分かることなのだ。しかし、ゼルは分からないから何かが怪しいという目でセリアを見る。一方、ラウズは頑張れという目でセリアを見るだけでなく、心の中では早くゼルが気づけばいいのにと思っている。
「何よ。二人とも私を見て、顔に何かついてるわけ?」
「怪しいという文字がついてる。」
「てめえは少し黙れ。」
ゼルの反応に飽きれたラウズは、自分が何をするのか思い出しゼルを一発殴った。
「イタあぁぁぁぁぁぁぁぁ!なんで?なんで?俺殴られた?なんで?」
「理由は単純だ。お前はこの俺様にハゲと言ってしまったからだ。」
不意に殴られたせいか、痛みより殴られた理由の方が知りたかった。だから、痛みが急に消えた。その後にラウズが殴られた理由を言ってくれた。その瞬間にゼルは想い出した。裏切りがどうのこうのじゃない、ラウズのことをハゲといった時点で言い訳が通用しないということを思い出した。
「あっ、そうだった。思い出した、思い出した、思い出した。俺ラウズにハゲて言ったんだった。」
「うるせぇ、クソガキ!」
今回は無意識のうちにラウズのことをハゲと呼んでいた。その時のゼルは悪意が全くなかったが、ラウズには悪意があったと勘違いして殴ってしまった。
「イタあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
痛い、とても痛い、かなり痛い。この痛さを表現にすると、絶対に壊れない固い岩に殴ったあとの手みたいに痛い。痛すぎて気絶する直前だった。いきなり目の前の景色が変わった。その景色は自分では見たことのないような場所だった。
「(なんだ、これ?)」
疑問しか浮かばない。自分の目に見える景色には疑問しかない。なぜなら、そこに映ってるのはウエディングドレスを着たセリアだった。