第5話 『ツンデレ姫の条件』
「アンタ魔導書がいくらかかるか知ってるの?最低でも10億ベルトよ!」
「え、え、え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、嘘だろぉぉぉぉ!?」
「そんなことも知らないの?アンタ本当に何も知らない馬鹿ね。」
少しベルトについて説明しよう。ベルトとはお金の意味である。また、ベルトはこの世界では共通な通貨だ。お金の数え方は一、十、百、千、万...という感じになっている。基本的にはビールが5ベルト、この店の料理がだいたい50~100ベルト、普通の家だと350万ベルトする。因みに、ゼルの1ヶ月の給料は5000ベルトだ。
1ヶ月の給料では、計算しても絶対に追いつけないとすぐに察したゼルは絶望的な顔だった。例えば、目の前で限定商品がなくなってしまう顔とおんなじだ。そして、セリアの言ってた通りゼルは何も知らない馬鹿だと、思い出した。
「そもそもアンタの頭はどんだけ空っぽなのよ。空っぽなのによく働けるわね、世間知らずの馬鹿。」
いつもなら普通に反論しているのだが、今回はさすがに反論しきれないいや、できない状況に立っている。それもそのはず、魔導書は誰でも知っている有名な魔法アイテムだから、みんな欲しがるためそのものがいくらなのか普通なら必ずや、調べるはずなのだ。しかし、ゼルはみんなの期待にこたえるかのようにそういうこと全てやっていなかったのだ。今回については誰でもあきれてしまうほどひどいときっと感じるだろう。
「もうダメだ...まさかそんなに高いとは思ってもみなかった。」
今のゼルの声はいつもよりかすれて聞こえる。身体も壁に寄りかかっている状態。まるで、自分は常識を知らないことに絶望を感じた人みたいだ。また、その姿はセリアにとったら今日一番の笑いどころだ。そして、彼女は腹を抱えながら人を馬鹿にするように笑った。
「本当にアンタて最高だわ。」
「お褒めいただきありがとうございます。」
ゼルはセリアの笑っている姿や発言にイライラしながら、感謝の言葉を言った。でも、すぐに彼女の笑いは治まった。笑いが収まった後は深呼吸をして普通に会話を始める。
「まぁいいわ。このことは秘密にしてあげよっか?」
彼女の発言は自分にとっていいことを言ってくれた。もし、これが彼女じゃなかったら多分簡単に『お願いします!』と言ってただろう。なぜなら、周りの人に常識も知らない子と思われたくないからだ。でも、この理由だったら彼女にも承諾してるだろう。問題はこっからだ。彼女は自分の損することが気に食わない性格だから、必ず条件を出しに来るからあまり彼女には承諾したくはない。しかし、前者の問題の方が苦しいからしぶしぶ承諾をした。
「このことを秘密にしてあげる代わりに1つ条件いいわよね?」
「別に構わない。で、条件てなんだ?」
「私と今から一年のうちに一緒に買い物に行くこと」
ゼルは知っている。女の人のショッピングがどれだけ辛いのかをよく知っている。