第1話 『遅刻の罪』
朝の6時だ。俺は街の中を走っていた。何故、街の中を走っていたのかというと、それはただ単純なことだ。そう遅刻したのだ。俺は両親がいないせいか、自分に必要な金は自分で稼がなくてはならない。その為今はバイトをしている。バイト歴は、もう10年ぐらいになる。
「やっと…着いた…今日は…どんな説教だろう…」
息を切らし、顔には汗だらけ。そして、目の前にはドアと大きな看板があり、看板には『うまい酒、うまい話、うまい依頼ならここギルティビール』と書かれている。俺から言わせてみれば、なぜ『ギルティ』と入れたのかが不思議で仕方なかった。
しかし、今はそんなことよりも言い訳を考えるほうが先だと俺は思った。が、どうやらこの世界の神様は遅刻という罪を許さなかった。
「今日はどんなお仕置きをしようかな」
ドアが開いた瞬間に、一人がたいのいい男が笑顔で握り拳を作りながら言葉を発した。
「あのう、怒ってますか?」
もう、見ただけでわかるぐらいに怒っている。だが、少しだけお仕置きが軽くなる希望があった。なぜなら、どんなゲームも勝てる確率があるように、今回の怒りも沈む確率があるんじゃないかと思っていたが、現実は厳しい。
「怒っているにきまってるだろうが~~~~!!」
ボコッと殴られ、その音は結構鳴り響いた。そして、その痛みはとても痛かった。俺はその痛みに耐えて、店の中に入っていった。
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俺の名はゼル。髪型は黒の天然パーマ。服装は普通の黒ズボンとワイシャツに黒のベスト、赤いネクタイだけだ。ちなみに、この服装がギルティビールの制服だ。
前にも言ったが、両親はいない。お金もない。そして、何もできない。本当に役に立たないのである。しかし、この16年間役立たずは役立たずなりに普通に過ごすことはできた。このように、過ごすことができたのはすべてラウズと言う先ほど殴った人のおかげだ。また、服装はギルティビールの制服だ。
彼は、俺が6歳になる頃に雇ってくれた。理由はわからないが俺については、よく把握していた。しかも、雇うだけではなく住む部屋までくれた。見た目は怖いくせに、内心はとても優しい。
「今日のお仕置きは決まったぞ」
ラウズはバックルームからしゃべりながら、カウンターに来て今日一番の笑顔でこちらをみる。
「出来れば、楽なのがいいんですが。」
多分、こんなこと言っても楽なお仕置きはないだろう。と思っていたが、今回のお仕置きは特殊すぎた。
「今日以内に来ると思う依頼がある。それに、引き受けるのとこの本を肌身離さず一生持つことだ。」
ラウズの声がいつもより低く感じた。