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Little Snow Monster

作者: 時結莉黒

時結莉黒ときゆいりくろです。


今年は雪が少ない気がします。

『冬にはねばけものがでるんだよ』

むかしむかし、小さい頃におばあちゃんからよく聞いた話。幼心にずっと信じていたが年を重ねる度にその感情は薄れていった。そんなものは存在しない、と。それだったのに…。


(目の前にいるこの正体は…?)


冬の肌を刺すような寒さと都会の息苦しさの中、俺の家の前に"それ"は居た。いや、あったの方が正しいな。


『純白で丸くて、小さな目を持っていてね』


幼い頃の記憶を少しずつ手繰たぐせる。


おばあちゃんが言っていたそのまま、小さな目でそれは俺を待っていたかのように。そして、俺が近づくと嬉しそうに飛び跳ねた。


(どうしたものか…)


第一、これが俺にしか見えないのか、もしくは誰にでも見えるのか…。

しばらく遠い目をしながら「それ」を見ていると、急に動きを止めピーピーと鳴きはじめた。そのなき声 (?)は耳につくような嫌な音だった。

「あ゛あ゛うるせぇ!黙れ!」

俺が怒鳴ると「それ」は鳴くのをやめた。その代わりに俺の肩に登ってきた。

「降りろ、気持ち悪い!」

俺は肩の「それ」に言った。だが、すれ違う人々は俺を一瞥して通り過ぎていく。

(これは他人には見えてないのか…)

俺は「それ」をどうにかしようととりあえず握り家の中に入れた(投げた)。

「それ」は意外にも弾力があったらしく壁にぶつかってもすぐつぶれるようなことはなく、自然に跳ね返ってきた。

俺の前に止まると短い手で頭(なのかわからないが)を抑える動きをした。目もうるんでる気がする。

(痛覚はあるっと…)

俺はその日から「それ」を飼うことになってしまった。


俺がコートを脱いでいると「それ」は懲りもせず俺の肩に登ってこようとした、が俺は「それ」を掴み手頃な箱があったのでそこにいれておいた。

コートを脱ぎ部屋のストーブを点ける。部屋の温度は5℃。寒いな。

「それ」がはいった箱を持ちテーブルの上に置く。何も知らないで見るとただのぬいぐるみの様だ。彼女のいない独身男子にとってかなりの癒し…。いや、そんなこと考えている場合ではない。

「お前は喋れるのか?」

ピーピーと声は発するが俺が理解できる言語ではない。

「何で出来てるんだ?」

「それ」を掴むと表面はふわふわしていたがさっき見たように弾力はあるみたいだ。俺が指でつつくとくすぐったいらしく身体をくねくねしている。だが何で出来てるかは分からなかった。

触ってみて手と目と口はあった。足は… ないと思う。

俺がうーんと悩んでいるときゅ〜という音が聞こえた。その音の元は…

「お前かっ!」

「それ」が目を伏せてお腹(なのか)を抑えている。

「俺も腹減ったな、何食わせればいいんだ?」

俺が台所に行こうとすると「それ」も肩に乗ってきた。最初に乗られた時よりは悪い気はしなかった。

一人暮らしの冷蔵庫に大したものははいっていないが、買い物に行くのも億劫おっくうなので飯はなんとか作りあげた。

皿に盛ると「それ」は短い手を必死に伸ばして何かを取ろうとしているので俺は適当にハムを与えた。「それ」は少し口に含むとすぐに吐き出してしまった。合わなかったようだ。どうしたものかと考えていると「それ」は冷蔵庫の製氷機の辺りを指した。

俺は「それ」に氷を与えると喜んでガリガリと食べ始めた。



『明日から急激に冷え込む模様で、都心でも初雪が降るでしょう。足元にお気を付けてください。』


俺が「それ」と暮らしはじめてしばらく経った頃、俺と「それ」はテレビを見ながら飯を食っていた。この頃になると「それ」のだいたいの意思はわかるようになっていた。

「だってさ、雪なんて電車止まるだけだからめんどいんだよなぁ。」

ふと、「それ」は氷を食べるのをやめて遠くの空を見ていた。


その目は寂しそうだった。



次の日たまたま休みだった俺は「それ」を連れて出掛けた。出掛けた場所は、俺のおばあちゃんの家の近くだ。なんで俺がここに来たのか実際のところ俺自身わからない。でも、「それ」をここに連れて来たかったのだと思う。

「それ」は少し懐かしそうに周りの景色を見ていた。


空を見上げた「それ」はピーピーと泣きはじめて俺の顔にくっついてきた。

俺が「それ」を剥して手の上に乗せると


少しずつ溶けていった。


「おい、なんで溶けでんだよ。」

「それ」はピーピー鳴きながら上を指した。


空からは純白の雪が降ってきた。


その時俺はあの時の話を思い出した。



『冬にはねばけものがでるんだよ』

『ばけもの?』

『純白で丸くて、小さな目を持っていてね

初雪を知らせてくれるんだ。』

『俺も会えるかなぁ?』

『きっと会えるよ。』



「お前…もしかして…」


こうしているうちにもどんどん溶け消えてゆく「それ」の表情は泣き顔ではなく憂いを帯びた笑顔の様に感じた。


「ありがとう。」


俺のその言葉を最後に「それ」は消えてしまった。


雪は世界を、白く染め上げた。



「っていうことがあったんだよ。」

俺の不思議な日々から何年か後晴れて結婚し子どもができた。あの日みたいに寒い日に語ってやった。

「わたしも、会えるかなぁ?」

「会えるよ、きっとな。」


初雪が降って街を白に変えてゆく。


どこかであの声が聞こえたきがした。

改めましてお久しぶりです、時結ときゆい莉黒りくろです。皆さんいかがお過ごしでしょうか?


なんとか2016年書き納めできました。


これはずっと温めていた話でやっと書けました。(連載書けよ( ∩ ˙-˙ )⊃)


2017年は更新ペース上げたいです。頑張ります。


拙い内容と文章ではありますが、ここまで読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、何かありましたら教えて頂けると嬉しいです。


Twitterやってます、よかったらフォローよろしくお願いします!

@nagaserin1

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