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忘れられていた

水曜日 空港近くのカフェ 端の席 

「どこから話そうか。そうだな。あれは、一週間位前の話かな」

 愛嬌はそう言って事件のあらましを語り出しました。

 空から降ってきた少女、玄関から礼儀正しく入ってきた追跡者、夜の会話、それからの二人の動き、学校の休みにかぶせて行われた弾丸旅行。

 金髪の彼女は、目の前の男が自分よりも若いという事に驚きました。

 話の内容は、いまいち理解出来ないので驚きもありませんでした。

「一つ良いですか」

 食後の紅茶を飲みながら、愛嬌に向かって質問をします。

「なぜあなた方はそんな事をしたんですか?関係ないでしょう?警察にしゃべるか、そのまま無視しるのが普通なんじゃないですか?」

 ニコラを経由して伝えられたその質問に二人は顔を見合わせ

「まぁ仕事というか、なんだろう」

「言ったって信じないだろうけど、まぁあれだ。そう言う運命なんだよ。星の元に生まれたというか天命が下されているというか」

「天命?誰からくだされるの?」

 ニコラは言葉の訳し方が解りません。

 そもそも天命が下される、と言う事自体がいまいち解らないのです

 それに応じて愛嬌は答えます。

「中国の最高神、天帝から下される命令の事。中国版王権神授説的な物だと思って貰えばいいが、世界の最高神である天帝から命じられる、だから天命。まぁ義務というか試練というか」

「答えにくい何か。と言う事にしておいてくれ」

 仕方がないのでニコラはそのまま訳します。

 納得出来るような納得出来ないような答えを聞いて、金髪の女性はもうすこし詳しく聞きたいと思いましたが、聞いてもどうせ答えてくれないだろうと思い直してふたりに続きを促しました。


 愛嬌と探偵は語ります。

 探偵への仕事の依頼、結果、そうして行動を開始、そうして結果。

 かなり簡略化し、そして出てくる人間についてなるべく話さない事によって、この出来事を、紅茶が冷める前に語り終える事が出来ました。

「まぁかくいう訳で僕とこれはここに存在している。方法は特に言わないが、教主を燃やしたのは僕だ。特殊な装置で燃やした、とでも思っていてくれ」

「もう一つ、質問いいですか」

 何?、とニコラは聞きます。

「なぜそれを私に言うのですか。そして私はなぜここにいるのですか?」

「それはだなぁ」

 しかたがないので、探偵は正直に言います。

「忘れてたんだよ」


「忘れてたってひどい。下手すると焼け死んでたのよ」

「仕方ないだろう。本当に忘れてたんだから」

「みんなすっかり忘れしてたんだ。いや本当に」

 そんな風に三人は日本語で会話しますが、金髪の彼女には通じません。

「何か、まずい質問でしたか?」

とニコラに尋ねました。

「いや、そうじゃないんだけどね。まぁ簡単に説明するように頼むわ」

 そういった意味合いの言葉を、日本語と英語で両者に話しました。

 仕方ないので、愛嬌は語りだします。


「まぁ、君も僕等をトイレに案内した事は覚えてるよね」

「えぇ、あぁあなたも魔術師なのですか?」

 ニコラの翻訳を聞いた彼女は、あの時かけられた何かも一緒に思い出しました。

 魔術が使える、そうであれば最低でも、教主を燃やした方法と言うのに察しがつくし目的も魔術がらみであろう、そう彼女は思いましたが

「彼らは使えないわ」

とニコラの否定でまた謎が深まりました。

 はっきり言ってしまえば、おそらく彼女の謎に答えが出ると言う話し合いではないのです。彼らの話は彼女に向けられていないのです。


「いいかい?あの時君にかけたのは、まぁ魔術ではないが似たようなものだ。僕は奇跡と呼んでるし、これはオカルトと呼んでる。君らが使う魔術よりもっと怪しいものさ。君に対して施したのは一種の催眠導入の催眠術だととってもらっても構わないんだが、ともかく強力な奴を君に仕掛けたのさ。それこそ半日は何があっても起きないくらい強力な奴を」

「こっちの計画としてはまぁ、あんたが見つかったら見つかったで、魔術結社の襲撃と思わせておくことができるから残しておく気だった。火事になればきっと客を避難させる段階で誰か気づくだろうし、それならあんたも女だったのは想定外だったけど、魔術結社か敵対組織の襲撃って早合点して、そう証言してくれるだろう。そう思ってね」

 愛嬌と探偵は、計画の後半を説明します。

 しかし、それなら、

「なぜ私をここに?実際そう思い込んでいましたのは確かです。なら確かだからこそ、そのまま置いてくるべきでは?計画と違うじゃないですか」

 ごもっともな指摘に二人はすごく答え辛そうにしています。

 そんな二人を見て、ニコラも答え辛そうでしたが金髪の彼女に言いました。

「忘れられてたのよ」

「はい?」

「そのままよ。あなたは同志からも彼らからも忘れられて、そのまま放置されてたの」

「え」

 二人は、金髪の彼女の表情からニコラの発言がどのようなものだったか理解しました

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