計画は
同日 教主の演説中 控え室
一人の少女が座っていました。彼女は、ここにいる理由がわかりません。この会合も、この組織も、この場所も、彼女には必要ない物でした。魔法が使えない魔法使い彼女はそれだけでしかありません。
世界征服が出来る魔法を管理するような大役は、彼女には似合わないんです。それは本人も自覚しています。
「皆様、今日という日に」
部屋の外から教主の演説が聞こえてきます。
どうやら説教も一番の見せ場になったようです。
予定では演説の終了時に聖句と言う事で呪いを唱える事になっています。それまでには教団の人間もその後の催し物である教会の見学会の先導と客の監視の為に教会内にあつまる事になっています。
「もう、おわりね」
そう呟いたとき、部屋のドアが開きました。
同日 教主の演説中 教会の屋根
「しかしなぁ、まったく」
教会の屋根の上に一人の男が居ました。
「出番がないと言うか、やる事が地味って言うか。魔王退治のヒーロー役だろ。俺等って」
男は一人事を呟きながら屋根の上に油をまきます。監視の目は全て屋内の一カ所に向けられているため、誰も彼を見る事が出来ません。仮に見たところで人が一人屋根に登ってようが気にする人は居ません。
今時の人は空を眺める暇なんかないんです。
「どっちかつうと、悪人のやり口じゃないか」
そういって導火線を油の上にセットします。本来は爆薬などに使う物ですが、どんな状態でも確実に燃えるという特徴を持っています。直接手で付けるのと違い場所から確実に燃やす事が出来ますし、逃げ遅れるなどの事故を防ぐ事にも有効です。
「まぁいつもの事か」
そう言って、彼はセットの完了を再度確認して、下に降りていきました。
そろそろ計画が行われる時間です。