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秘密結社とは

「君らがどのような理由でシスターニコラを追っているかは知らないが、人の家に上がった挙げ句の行動ではないだろう。礼儀という物をわきまえないか。訳も話せぬ理由で人を追っているから引き渡せ、等と言う連中に何処の誰が引き渡す。その挙げ句、力尽くなど野蛮人がやる事だろうが」

 男の声は良く響き、そして間違っているかは別として筋が通っています。

 愛嬌の言葉に呆気にとられた二人は、膝建ちの状態で止まってしまいます。

「場合によっては警察に引き渡すつもりはない」

 その二人を見ながら、何事もなかったかのように愛嬌は言い

「さぁ、取りあえず座れ」

そう二人に向かって指示しました。


「貴方は何処まで理由を知っていますか」

 二人は座り、自前のハンカチでぬれた体をふきながら、気を取り直して愛嬌に聞きます。

「良く解らない夢物語は聞かせて頂いた」

「この学術、いやこの外国にも名が知られてる科学都市においてこのような場所が存在することも十分夢物語の類だと思うが、な」

「それも話せない事の一つだが、まぁ別の話だ。君らはその、魔術を信奉する秘密結社の一員、と言うところか」

「……まぁそう言う事だ」

 ルターは渋々といった口調で。認めます。

「魔術を、信仰する、ねぇ」

 そう言った愛嬌の目は疑いを含んだ物です。

「カルメン会のような悪魔召還や悪魔礼拝を主とする一派か?」

「いえ、我々はあくまでキリスト教の信者です。黒魔術を信仰しているということなどはありません」

「地獄の火クラブなどとは違うと言うことか?」

「あぁ言う連中は今でも確かにいるが、低俗で野蛮だと言うのが我々の殆どが抱いてる気持ちだよ」

 地獄の火クラブ、黒ミサをお遊びとして使用した放蕩貴族や不良上層階級の子弟などが集まったクラブです。その実態は高級娼婦や貴族の娘などが仮面を付け、「修道女」と称して淫猥な行為をいた悪趣味な遊びを行う秘密倶楽部でしかありませんでした。黒ミサや悪魔崇拝は、それを楽しませる演出であって、何も本気で「修道士」達は悪魔崇拝をやっていたわけではないのです。

「じゃぁ何のために集合しているんだ。何も、世界の終末が起こると信じてる訳じゃないんだろう。日本でそんな事唱えても無視されるか。そんなのはノストラダムスで聞き飽きた、もう時代遅れだから、何か別のお題目でも唱えなさいと親切な人に言われるだけだよ」

 秘密結社と言う言葉には様々な印象がありますが、それらは結局、何らかの世間的に表に出来ない理由が有って集まった人々を指す言葉です。

 先ほどから彼等の会話で何度も上げられている宗教的や魔術的な集まりの結社の他に、犯罪を主とする物、政府の弾圧に耐えるための物、政権打倒を狙うための結社などが存在した、ないしは存在しています。

 勿論名目と内容がかけ離れているものも多く、先ほどの地獄の火クラブのような、「お遊び」な所など、実態と離れている場合も多いですし、真面目に犯罪に精を出す犯罪結社までさまざまです。

「今の時代、大体の場所では結社の自由も思想の自由も認められてる。そのお陰で資本主義国である我が国やアメリカに共産党が存在出来たりナチス党も存在することが出来る訳だ。勿論思想の自由もあるわけだから、君らが鰯の頭を信じようと悪魔を信じようと、僕にも国にも文句を言う資格も権利もない」

 だがな、と愛嬌は二人を見て続けます。

「法律に反する行動を行うので有れば、それはまた別の話だ。そう言った集団であれば国家は取り締まりを行う。この時代にわざわざ秘密結社、しかも建前すら名乗ることが出来ないというのであれば怪しまれるのは当然だろう」

 愛嬌はそう言い、三人を見回して続けます。

「僕としては一刻も早く警察に届ければ良いだけの話だが、それじゃ君らが困るみたいだからここまで妥協してる。場合によっては警察に行くつもりもないし、なんならその目的に協力しても良い。だから早く話しなさい。もう夜も遅いんだから」

 彼は協力なんてするつもりはありませんが、早く話させたいが為の方便、つまりは嘘です。

 その言葉に秘密結社所属らしい、ふたりは顔を見合わせ、マルティンは

「少し彼女と相談させてくれないか。君は随分物わかりが良いみたいだから僕らの立場もわからない訳じゃないだろ」

 僕らはニンジンを追いかける馬と同じなんだから、と自分自身に対しての皮肉を一言加えて笑いました。

 無駄な一言を加えるのは、彼の性格なんでしょ

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