彼ら
「あと30分もない。手早く聞きましょう」
愛嬌は場を仕切り直すようにはっきりと言いました。
「貴方はその魔術の使い方を知っている」
「そう」
「そしてこの魔女の教主にその技法を教えた」
「…そう」
「どうして?」
「………」
探偵の横からの言葉にニコラは沈黙を守ります。
「言いたくない事か」
「えぇ。時が来たら、話せるかもしれない」
その言葉に、皮肉な顔を浮かべながら愛嬌は首をかしげますが、時間がありません。深くおう事をせず話を続けます。
「じゃあ続けましょう。その教主はやり方を完璧に知っている。そして魔術を使う事が出来る?」
「えぇ。恐らく完璧に知っているわ。」
「じゃななぜ、貴方を抜きにして使わなかった?」
「その魔術には私自身が要るの」
「生け贄でも使おう、って事かい?」
探偵は聞きます。
ニコラは、そんなところ、と言って詳しく説明を続けます。
「私の血、血液が居るの。黒魔術に近いんでしょうね」
「だから、君の身だけ逃げれば取りあえず発動が出来ないと」
「えぇ。彼は、それに気づいて、私を連れ戻して血を奪った。もうどうにもならないわ」
「まだどうにかなるさ」
探偵は悲観的になるニコラを慰めてるのか、それとも本心からなのか、そんな台詞を吐きます。
「だろう?」
「無責任だな」
愛嬌は考えます。
「君が魔術を使えないって事は?」
「知ってる人は知ってるし、知らない人は知らない。あまり興味がない人が多いから、わざわざ聞かれないの」
「そうか、どっちの数が?」
「大半は知らないでしょうね。私の、私が持ってる唯一の魔術は彼と私しか知らないはず。彼が言ってなければの話だけどね」
「なるほどねぇ」
「まぁこんなもんだろう。いい加減でないと見つかる」
探偵はそう言って、話を遮ります。愛嬌はまた首を振りました
「連れだそう。とも思ったがそれじゃぁ全く解決しやしない」
「とりあえず出てから算段を考えよう。囚われのお姫様を救う昔話と魔王退治のRPGじゃぁ筋書きを大幅にかえなきゃいけない。ここではもう会わないと思う。と言うか、次会うときは日の光の下で会いたいね」
「ありがとう。でも」
あなた達は何か方法があるの?と彼女は聞きました。
彼等はであって何日もなく、魔術の事など殆ど解らず、そして教主が悪巧みしてるから、私が助けて欲しいと言ったから、ただそれだけで彼女自身を助けようとしています。連れ出すだけならきっと出来るでしょう。
ただこの話は、それだけじゃもう終わらない話です。
そして当たり前の如く存在している彼等の自信から彼女ですら思いつかなかった事ですが、彼ら自身がこの話に付き合う必要はないのです。それが、当たり前の如く関わりこの物語を終わらせよう動いているしている。
「方法は考える物だ」
「そう言う事でね。火曜にやろうって事なんだろう。その魔術を、なら当日に仕掛ける」
彼等はそう言って、疲れたように手を振り扉から出て行きました。