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喫茶店にて

「さっきの話の続きだが」

 マルティンは開き直ったように二人に問いかけます。

「ニコラが君らの組織、外側から言うところの魔女、に所属する理由を君らは何か知らないのかい?」

「知りません。そもそも私たちは文字通り迫害されて纏まった集団です」

 だから各団員にも秘密主義が徹底とは行かないまでも、強く存在します。と佐織は続けます。

「秘密結社という体裁も、そうするしかなかったからそうなったんです」

「まぁ僕たち魔法使えます。なんて看板掲げればそうなるわな」

 でも、と探偵は疑問を呈します。

「じゃぁ、なんでお前等の集団は自分たちの素性を言うようになったんだ?」

「それは、今の教主様が言い出した事で」

「狂人は魔法を使えると語り、善人はそんな事は無いと語る。そして、権力は無い所に物を探す。だったか。それまでも、共産主義組織やテロ組織と間違われて、何回も政府から密偵を受けていたからその対策さ。こんな過去を言ったところで誰も信じやしないから都合が良かったんだ」

 二人はそう答え

「で、その効果はあって、ただのちっぽけな犯罪組織と思われた訳か」

「ニコラはいつ頃からその組織に居るんだい?」

 二人はまた問います。

「彼女は生え抜きです。彼女の両親とも魔術が使えて、それでこの結社に入社しました」

「そこで、彼女は生まれた。まぁそのまま成り行きで結社に入社してる。そう言う場合は魔術が使えるかは大きな問題とされない」

「なるほどねぇ。家族も保護対象にはいるのか」

 マルティンはその探偵の疑問にそれは微妙だねと答え、コーヒーに口を付けます。

 二人はそれをみて、ウェイトレスに片言の英語らしき物でコーヒーを頼もうとしますが、それを見たマルティンが流暢な英語でウェイトレスにコーヒーを二つ頼みます。

「君ら英語は出来ないのかい?」

「読む専門で」

「解らん」

 マルティンは溜息をつきます。

 なんでこの連中はここにいれるのだろうと、そしてなんか問題おこすんじゃないのかと、そんな失礼な事を思っている所に、愛嬌は話しかけます。

「チップってどれくらい出せば良いんだい?」

「自分で取りに行くなら不用、持ってきて貰うなら金額の1割に気持ち。ここはちょっと特殊なんだよ」

「へぇ」

 探偵はそう言って、二人分にしても多めにチップを渡します。

「豪勢だね」

「金が入ってね。天下の回り物だ」

 金が入ったというのは、愛嬌からの手付け金です。

「で、微妙って?」

 愛嬌は話を戻します。

「僕の両親なんかは対象には入ってない。両親ともに田舎の役場で働いて、もうじき定年ってところだけどね」

「へぇ、どうして?」

「両親は僕が特殊な力を使えるのは知ってるけどね、それが具体的にどんな物か良く解ってないんだ。火を浴びても火傷しないとか、そんな特殊な体質か何かかと思ってる。この集団に所属してるのだって、そもそもは同じような力を持てる人間の秘密クラブと思ってる。そう言う場合は、寧ろ守らない方が良いだろ?」

「あぁ、関係ないからなのか」

「そうさ」

「二人で終わらせず説明してくれると嬉しいんだがな」

 探偵は、ウェイトレスからコーヒーを貰っていいました。

「関係ないなら無いままの方が良いだろ。わざわざ保護だとかなんとかで関わって、こいつの弱点ならここを狙おうって、やぶ蛇になったら逆効果だ。まともな国の司法なら犯罪者の関係者を拘束する事はあっても、家族は拘束しない。精々事情を聞くだけさ」

「はぁ。そう言うもんなのかね」

「お前みたいにあくどい奴には聞かないだろうがな」

 愛嬌の言葉に佐織は、厳しい目つきで探偵をにらみます。

 それに対して、探偵は何か良く解らない笑みを浮かべて

「そういうもんさ。ないしは、そう言う事だよ」

と良く解らない返事をしました。

「話を戻そう。ニコラは今どうなってる」

「解りません。おそらくは地下だとおもわれますが」

「地下牢か何か?何でそう思うんだ?」

「今回は脱走者という扱いだからな。慣例じゃそこに幽閉、まぁ幽閉と言うか軟禁というか、なんというか」

「なんだよ。それ?」

「幽閉だと監禁で罪になるだろ。監禁にならないように自由に拘束される」

 探偵はマルティンに疑惑の目を向けます。そんな上等な物じゃなくて、子供がおかしな事を言う人間に向けるようような目ですが。

 佐織はそれをみて、何を考えているのか良く解らない、どんな人間かも良く解らないと、首をかしげます。

「飯とかは自由、外に出るのも自由。買い物や友人にあっても良い。ただ常時監視が付く。共同生活で問題起こしたから、罰として部屋が一時的に地下に回される。位はおかしくないだろう?」

「法律的に監禁の要件に当たらないように工夫してる訳か」

「しかし一昔前の金貸しが考える事だろ」

「ですが私達には、あれがありますから」

 佐織の一言に二人は納得しました。

 あれとは、彼等が使う魔術。何が出来るかは解りませんが、人を監視する程度の技術は存在するのでしょう。

「下手な事して警察に逃げ込まれるより、警察がどうにもできない領分でやろうというのが方針さ。君ら位ならもう解ってるだろうが、秘密結社って語るだけあってまともな組織じゃないからね」

「所属している人間が言うのかい?」

「君らにはお見通しだろ?」

マルティンはそう言って、眉をひそめます。その動作に二人は、周りを見渡します。

 常識的な、魔術の話を大真面目にしてる時点でその常識がどれくらい役に立つのかというのは明確には答えられませんが、常識的なカフェテリアの風景です。

「毒でも入ってたのかい?」

「似たような物さ」

 そう言うと、マルティンはコーヒーを飲みます。そこにはコーヒーなどもう入ってません。

「そういえば毒を食らわば皿まで、って言うが日本じゃ皿も食えるのかい?」

「聞いた事無いが、水気がない菓子とかならできるんじゃないかい?」

「ソフトクリームのカップは容器に入るか。でも似たような物なら作れるんじゃないか?僕はあれは嫌いだがね」

「あなた達は」

 佐織は突然話しを下らない冗談に切り替えた3人に文句を言おうとしましたが、それをマルティンは強めにカップをならす事でとめます。

「そうかい?甘いクリームの後に、あのあっさりした味が良いんじゃないか」

 マルティンはそう言い、佐織から二人に視線を動かします。

「口の中が乾くじゃないか。同じ理由でパフェについてる煎餅の切れ端も嫌いだ」

 探偵は飲み終わったコーヒーの代わりにココアをウェイトレスに頼みます。

 数秒思考しメニューをそのまま指さしました。通じたようです。

「こいつはそう言う、口の中が乾く菓子が嫌いなんだ」

 愛嬌は、探偵に目線を投げ、ウェイトレスの背中を目線でおいます。彼女は、二人の後ろに回り別の客のオーダーを取っています。

「あまり女性はジロジロ見るもんじゃないですよ」

 佐織はそう言い、愛嬌を窘めます。そして、視線は自然とウェイトレスに向き、三人が言いたい事に気づき、わざとらしく目を見開きました。それだけでほかの人間には理解したという事が解ります。

「あぁ、そう言う事で。今度来るときは頼むよ」

 探偵は二人に言います。

「と言ってもね。口の中が乾かない菓子って事は水気が有る菓子だろ。そうそう日持ちなんかしないじゃないか」

「そうですよ。イギリスから持って行くんですから。そんな事にまで目を通しておみやげ選びなんてしません」

 佐織も三人の会話に混ざります。

「何時からだよ。今は飛行機だからそんなかからないだろ」

「何時からが何にかかる言葉なのか知らない以上答えられないね」

 何時から、と言うのは何時から見られていたか、それに対して知らない以上答えられない。

「そうですよ。まぁでも行くときに買わないって手もありますね」

「途中で買うって事かい?僕らはカナダ経由で来たが」

「ええ、途中です途中。最初じゃなくて途中で買っていけばいいでしょう」

 まぁ最初からじゃない。おそらく途中から居た。

「それはそれで悲しい物があるな。そう言えば帰りの便はどうする。観光の予定も立ててないぜ」

「とりあえず木曜日には学校があるから、それまでには戻りたい」

「ってことは、月、火、水、で最低でも水曜の昼には出なきゃ行けませんね」

「君らは本当に計画も立ててないのかい?」

 示し合わせたわけでもない暗号の言い合いから、本心がぽろりと出てきました。マルティンは二人を見て呆れます。

「計画なんてのは、現地で決める物だ」

「パックツアー、と言うわけにも行かなかったからね。見たい場所も見たい場所だったし、君らとも会いたかったしね」

 計画は現地を見て、そして二人にあってから考えるしかない。彼等が言いたい事はそう言う事です。

「そうか、じゃぁあまり長居するのも店に悪いから、歩きながらお勧めの場所を紹介しよう。僕も彼女もこの界隈の事なら詳しいつもりだ」

「イベント事も近くありますから、それも紹介しましょう」

 そう言って二人は席を立ち、日本から来た二人組も席を立ちます。そして、ウェイトレスがその行く道をふさぎます。四人は身構えますが、ウェイトレスは英国の綺麗な英語で、何かを四人に語りかけます。二人が明確に聞き取れたのはただ一言

「ココア」

 仕方がないので4人ともまた座りました。

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