6話
三話同時投稿の一話目です。
グレッグさんとアンナの親子はロイゼンに雑貨店を開くみたいで、店の準備が出来たから今住んでる所から引っ越してる最中だったみたいだ。
ロイゼンの新店ではアンナのお母さんが待っているそうな。
開店したら是非行ってみよう。
「ね、それって剣……よね? キーアは魔物と戦ったりするの?」
だいぶ慣れたアンナが、自分の剣を指差し聞いてくる。
「そうだよ、いざとなったら僕が守ってあげるからね」
力こぶを作って答える。……この身体は思ったより筋肉がないみたいだ。要鍛錬だな。
「ははは、それは心強いな。最近は魔物が増えたらしくて、ここいらも街道まで出てくる時があるんだ。だが君がいれば安心だな」
話を聞いていたグレッグさんが笑う。ふむ、魔物が増えてるのか……普通の人にとったら厄介だろうな……というか
「だったら護衛とかは……」
「そう思うだろう? 街から街への移動は、普通は護衛を雇ったほうがいいんだ」
「ならなんで?」
「それが聞いてよ! お父さんったら新しいお店にお金かけ過ぎて、護衛を雇う分残してなかったのよ!」
いいのかおじさんそんなんで! というかどこからロイゼンに向かってたのか知らないけどよく無事だったな!
「あっはっは、まぁまぁアンナ、キーア君に出会えたから良しとしようじゃないか」
ううむグレッグさん、ある意味大物かもしれない。
「ま、まぁ……それも、そうね……」
アンナが顔を赤くしてチラチラとこっちを見てくる。いや、嬉しいけど丸め込まれてるよアンナ。
「はは……、それはともかく、今向かってるロイゼンってどんな所なの?」
気を取り直して聞いてみる。
ゲーム内で聞いた事がない地名だったのもあるが、単純にどんな街なのか気になったからだ。
質問にグレッグさんが答えてくれる。
「そういえばキーア君は行った事がないんだったね。ロイゼンはアルディミナの端の方に位置する街で、場所こそ辺境だけど色んな街に通じる道が伸びているんだ。だから沢山の人や見た事もない美味しい食べ物が集まってる!」
「へぇ、なんだか賑やかそうな所なんですね」
食べ物のとこで声が弾むグレッグさんをアンナが苦笑いしながら見ている。うんうん、微笑ましいな。
……しかし、今の話からするとアルディミナがこの国の名前、って事か。
さっきから続いているがアルディミナという国もゲーム内では存在していなかった。
ラヴァンの森といいロイゼンといいアルディミナといい、ゲームとこの世界の地名が尽く一致しない。
ここはゲームに似た別の世界って事かな……よくわかんないけど。
ブラッドウルフとドロップアイテムの件といい、考えても埒が明かない。
転生したは良いけど目的も目標もないんだし、とりあえず異世界観光を楽しむしかないか。
今のところの目標は……ロイゼンの食事処と甘味処の制覇!!
小さな目標を決めた自分とグレッグさんとアンナ親子を乗せた幌馬車は、ゆっくりと確実にロイゼンに向かって行くのだった。