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世の中はつまらない。
俺の場合、やろうと思えば簡単に出来てしまう。
だが、その考えも彼女に関することであるならば、通用しなかった。
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気づいたのは偶然だった。
俺が通るところには人が集まる。男女問わずだ。
女は俺に媚びる為。男は俺と親密になり将来出世するため。
魂胆が丸見えで全く面白くなく、全て無視したいたが、それでも寄ってくる。
まるで蝿みたいな連中だ。
そんな奴らを冷たい眼光をして睨んでいたとき、大衆とは全く反対の方向、つまり俺のいる場所から離れようとしている奴を見つけた。
その表情は俺ではない誰かを見て様子を伺いつつ、そいつから逃げようと試行錯誤しているようだった。
その誰かを見ると…
「キャ〜キャ〜溯夜様ぁぁぁーーー!!!」
ああ。こいつか。
鬱陶しいやつの一人、常盤姫香。
見るだけでも嫌だ。
こいつらは俺と目を合わせようと必死になっていて、目を合わせるとまるで自分が俺にとって特別な存在だと誤解する。
すぐに目線を外して奴の姿を見ようとするのだが…
いない!?
あの一瞬の間に奴はその場から立ち去ったというのか?
他の連中とは違う行動をする奴に好奇心が湧き上がり、今すぐにでも追いかけたかったが、連中の所為で出来ない。
仕方が無く、俺は生徒会室へ向かうことにした。
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「…溯夜、そいつは常盤姫香の姉だ」
生徒会室。
ここには生徒会の役員しか入らない規則になっている。
学生証をかざすとロックが外れるオートロック制だ。
防音も完璧で中の会話が外に漏れることはない。
だから皆生徒会に入りたがるが、人事は会長である俺にあるため、俺にまとわりつく輩はここに入ることが出来ない。
役員は俺を含めて四人。
本当は六人入れるが他の三人が有能でわざわざ入らせる必要がない。
そこで、俺は副生徒会長である葛ノ葉馨に奴のことを聞く。
こいつは俺の側近の一人で、情報収集をしており、俺の目から見ても将来優秀な片腕の一人となりうる人物だ。
「姉?あいつに姉などいたのか?」
「…半年前に転校してきたんだ」
常盤姫香などには興味が無かったため、そんなことは知らなかった。
馨から奴、いや朱莉の知っている情報を全て聞き出す。
「溯夜、どうしたんだ?頭でも打ったか?」
「めずらしいわね。一体どうしたの?」
俺の珍しい行動を見て、他の奴らも寄ってくる。
一人は俺の側近で副生徒会長である暁修斗。
もう一人は俺の幼なじみで協力者の立場にいる庶務の瑞貴朧。
二人は許嫁だが、関係は良好。将来結婚するだろう。
「いや、面白そうな奴を見つけてな」
「いや~その子が可哀想だな。よりによってお前から興味を…」
「修斗」
「イエ。ナンデモアリマセン」
修斗を視線で黙らせ、馨の方を向く。
「常盤朱莉のことを調べろ」
「…了解」
「それと、朱莉のことを俺自身が尾行する」
「「ええっー!!!」」
修斗と朧が揃って声を上げる。
馨も滅多に動かない表情を動かして驚愕していた。
「どちらにしろ俺は暇なんだ。何をしようが自分の勝手だろう?」
「いや、そうなんだけどさ。そこまでその朱莉ちゃん?にのめり込んでいるなんて俺は知らなかったよ。
だっていつも溯夜は尾行する側じゃなくて、される側だったでしょ?」
「そうか…?」
「いやぁ、面白そうね。私も一緒に尾行するわ‼ 修斗も手伝いましょう‼」
「…ああわかったよ‼ 俺も溯夜が面白がる相手が気になるからな」
そして俺達生徒会メンバー全員によって朱莉の調査が始まった。
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『愛の戦士、ワンダァァァアアアーーイエロー!!!!!』
「キャー‼ 朱莉ちゃん可愛い‼」
生徒会室。
朱莉は俺の思っていた通り、いやそれ以上に面白い人物だった。
連れ子とはいえ一応お嬢様という立場でありながら、ご当地戦隊をやっているとは誰が想像するだろうか?
この学園内に警備のために置かれている隠しカメラ(カメラの存在は俺たちと叔父である校長、あとごく一部の人しか知らない)を全て朱莉に集中させた。
誰もいないことを確信していたのだろう。彼女はポーズと台詞の練習をし始めた。
俺たち生徒会役員はわざわざ学園にとどまる必然性はない。
俺は世界で一番と言われる大学を飛び級の更に首席で卒業している。
だがここにいるのは修斗と馨が卒業するのを待つためと、他の連中の顔を憶えておく必要があるからだ。
しかし朧も含めて三人は高校卒業程度の学力は取得しており、既に大学の勉強をしている。
俺は仕事をやっているがすぐに終わらせてしまい、大抵暇なのだ。
朧は朱莉を完全に気に入ったらしい。
可愛いばかりを連発している。
「あっ、また邪魔が入ったわー‼ 」
邪魔というのは、常盤姫香の連中のことだ。
画面ではそいつらに怒鳴りつけられている朱莉の姿が見える。
彼女らは朱莉のことを虐めている。
奴らは自分では何も出来ないくせに、立場の弱い者を群れて虐める。
そんなことが許されていいものではない。
時間がかかったが、朱莉を俺の腕の中に閉じ込める準備が整った。
行動するとしたら、目立つ学園の中ではなくてショーのときだ。
俺は口角を上げて笑みを作った。




