零下
冷たい氷の鎧が身体を包み込んだ。
「水さんとの戦いの時のレイピアといい、今回の鎧といい、刀夜さんはすごいわね」
声のした方に目をやるといつの間にか霊花がいた。
「ああ、そうか。まあさっさと片付けてくるよ」
その姿は氷の騎士と言わざるを得ない。白夜は見とれてしまっていた。刀夜は邪霊と互角に戦っている。邪霊の攻撃は刀夜の予知スキルで綺麗に受けられていく-氷が重い所為かさすがに避けれはしないようではあるが。
「これで終わりかな...で、この氷どうやって解くの?」
「解除」
刀夜を覆っていた氷は跡形もなく溶けきった。白夜のスキルは解除も可能なようだ。
「よし、寮に戻るか」
時計は9時を回っていた。もうくたくただが気分がいい、ゲームよりリアル感がある格闘は好きだ。そう言えばバーチャルリアリティというのもいつかは実現するのだろうか。そんなこ事を考えていると、
「素晴らしいよ。刀夜君。君には是非とも大会にでてもらいたい」
白夜はこの時ぶるっと震えたのだが気のせいか。それよりこの人は、誰だろう?
「あの、あなたは誰ですか?」
「ああそうか、私の顔は企業秘密ということにしていたっけ。私はこの学園の校長を務めている。カヤヒコだ」
「こ、校長先生?」
「校長が刀夜様に何の用ですか?」
白夜は怯えながら?いや警戒心まるだしで校長を睨んで尋ねた。なにかあったのだろうか。
「いや、さっきも言ったとおり、大会にでてもらいたいだけだが」
校長は白い長髪の男性だった。だが、嫌な印象を与えない優しそうな人だ。悪い人には見えないが。
「その、大会って?」
「ああ、スキルを使って試合をするんだ。怪我をした時のために回復のスキルをつかえる者も呼ぶ予定だ」
「やめて、あの殺し合いに刀夜様を巻き込まないで!」
白夜は血相を変えて言った。
「はあ、いまネタバレされては困るんだ」
校長がそう言った瞬間、白夜は思いきり飛ばされた。なぜ俺以外の男性が使えるのか分からないが、それは明らかにスキルだった。
「興が冷めてしまったな。ではまた今度あらためて来るとしよう」
そう言うと、校長は消えた。辺りが静まった。白夜のいっていた「殺し合い」とは何なのか、俺はこの時この学園が恐ろしいと思った。