邪霊退治
授業が終わり、俺は白夜に言われた通りの教室の前で待っていた。
「白夜の奴遅いなー」
「ごめんなさい。少しごたごたがあって遅れました」
向こうから白夜が息を切らして走って来た。
「だ、大丈夫か?」
「大丈夫です」
俺たちは安全を確認すると、ドアを開け、中に入った。中には白夜の言っていた邪霊らしき生命体がいた。どこか犬っぽいが。
「あいつか?」
「はい。そうです。私が気を引くので、刀夜様はその隙に小槌で気絶させて下さい」
そう言うと白夜は俺に小さな小槌を渡してきた。そしてそれは彼女のスキルで凍っている。これで叩けばそれなりのダメージが期待できる。
「まあ、やるか」
「はい。先に行きますね」
そう言うと彼女は邪霊に向かっていった。俺は気付かれないように横から回り込む。邪霊は白夜に気付いたようで、警戒態勢をとっている。俺は気付かれないようにゆっくりと壁を背に近づいていく。
「グオオオ」
そう呻き声をあげると邪霊は白夜に突進した。白夜はこれをかわす。この時、俺はもう邪霊の真後ろに立っていた。これで叩けば簡単に任務完了だ。
「刀夜様、今です!」
「いや、駄目だ!」
その瞬間邪霊は足を軸に、くるりと一回転し俺に爪で引っかいてきた。俺は何とかかわした。そのまま攻撃していたら俺は確実にお陀仏だっただろう。
「白夜、作戦は変更だ。俺らの策はこいつには通じない」
「え? あ、はい。刀夜様」
白夜も状況を悟ったらしく、構え直した。さっきと違うのは俺の立位置で、白夜と並ぶようにして構えている。後ろから叩くのが駄目なら二人で戦うしかない。白夜は氷結晶を飛ばして応戦しているが、相手は一向に弱る気配が無い。俺は試しにもう一度近付いてみるがどうしても攻撃が届く距離まで近づけない。予知スキルのお陰で直撃こそしないものの、ときどき服の端をかすめているのが分かる。これ以上近付くと、予知スキルありでも回避が間に合わなくなってしまう。これでは攻撃の当てようがない。
ふと、ある考えが思い浮かんだ。
「なあ、白夜」
「なんですか?」
「ちょっと無謀な作戦なんだが...」
俺の考えた作戦ならごり押し-無理やり押し切る-ことができるはずだ。水と戦った時のやつの応用だ。
「じゃあ、白夜、俺の関節と顔以外を全て氷で覆ってくれ」
「...! はい、わかりました。」
年上年下の呼び方は2話を(以下略