転機
俺は月森 刀夜。
早速だが、死にそうだ。両親と一緒に旅行へ行く途中、乗っていた飛行機が事故に遭って、死んだ。......と言おうと思ったが、俺はまだ生きているようだ。
「刀夜君、つかまって!」
誰かがそう言ったが意識がもうろうとしていてよく聞こえなかった。誰かに手をひかれる気はしたが、そのまま意識を失った。
目を覚ますと、同い年位の女の子が立っていた。ちなみに俺は高一だ。
「もう大丈夫かしら」
そう言うとその子は何か考えたように、
「あの、君はこのあとどこか行く宛はあるの?」
俺は首を横に振った。
「そう、丁度良いわ。君、スキルスクールに入学してみない?」
最初は意味が分からなかった。スキルスクールなんて、聞いた事もない。そもそも、なぜ俺は病院に搬送されていないのか、飛行機の事故に遭ったのだから、普通なら治療が必要なはずだ。まあ入院中の記憶がとんでしまったという可能性が少なからずあるが。
「あの、両親の事は残念だけど、君の行く宛がないなら、その居場所を提供してあげることができるわ」
俺は施設かなんかだと思ったが全く違った。全寮制の学校なのだという。まあ行く宛もないので頷いておいた。
「どういう学校なんですか」
「説明しづらいのだけれど、スキルを使えるようにする学校よ」
またわけのわからないことを言ってきた。スキルは、日本語訳すると、能力という意味になるが、それを使えるようにする学校とはどういうことなのか。
「あの、スキルって......」
「ええ、そのままの意味よ。男子ならスキルとかアビリティという言葉は格好いい感じがして好きだと聞いているけど」
あくまでそれは厨二病のことだ、と心の中で言った。
「まあ、いきなりスキルがどうと言われても困るわよね。見てて、そのために傷を少し残しておいたのだから」
まるで、自分が治したみたいな言いようだな。
だが、俺は本当に彼女が治したと信じざるを得なかった。なぜなら、残りの傷は彼女が手を触れてしばらくすると、治ってしまった。
「信じてくれた?」
「うん、分かったよ。でも入学って言っても入学金とか授業料とかはどうするの?」
「そのへんは気にしないで、多分、特待生扱いで入学できるから」
「でも、成績は普通位しかないし、スポーツも特にできるものはないんたけど?」
「うん、まあ行って見てのお楽しみ?」
そう苦笑いして言うとこっちだと言わんばかりに、学校まで道案内してくれた。
なぜ特待生なのだろう。普通な俺が。
なんとなく嫌な予感がしたが、あそこで死ぬよりはましだと自分に言い聞かせた。
それに、もしあの時名前を呼んだのが彼女なら、前から何か狙っていたということになる。
やっぱり嫌な予感しかしない。
続く