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「役立たず」と泥を投げられた聖女ですが、デバッグモードで【人間】と【魔物】の設定を逆にしました〜自分たちを狩る側だと思い込んでいた王族が、スライム(勇者)の経験値になるまで〜

作者: 唯崎りいち
掲載日:2026/02/25

 私はこの世界のテストプレイ用のデバッグキャラに転生した。


 「役立たず」と追放された当日、国は魔境化した。


 ドラゴンが王族を追う中、私は魔王様に抱かれて安全地帯に立っている。


 どんな危険な魔物も偉い王様も、私の前では等しく同じになる。


 人間とモンスターの役割を入れ替えられた王様は、勇者になったモンスターの経験値になって消えた。


◆◆◆


「お前は一体なんだったんだ? 神のお告げを聞いた聖女だというから大事に扱っていたのに、何の役にも立っていないではないか! 今までの費用も請求するから、とっとと出て行け!」


 は? 誰が大事にしろと言いました?


 夢の話をしたら勝手に連れてこられて、贅沢しろというからしてあげてただけよ。


 勝手に勘違いして、勝手に払ってたものを返す義理などありません。


 お城を追放されて、今日は何を買おうか? なんて、無駄な贅沢のために悩まなくていいなら本当に快適です。


 だったと言うのに、


「なんでもお前の望みを叶えてやるから、俺のモノになれ」


 と、魔王様に誘われてしまった。



 『国を傾けた聖女ついに追放!』


 なんなのよ、この号外は!?


「やっぱりな。あの聖女は怪しいと思ってたんだ」


「夢のお告げで、神に国の機能の守護者だと認定されたなんて嘘くさいよな!」


 調子のいい国民たちね。


 『聖女様が現れたー! この国は安泰だー!』って喜んでいたくせに!



 王城から出て、また実家の貧乏長屋に帰って来ました。


「ちょっと、あなた! なんなのその贅沢なドレスは、こんな場所に合わないんだから着替えてきなさい! 全くお城で贅沢ばっかり覚えてきて!」


 お母さん、着替えって言っても買うにはお金がいるんです。


 二年も城で聖女をしてあげたのに、あの王様に着の身着のままで追い出されて迷惑なのよ!


 仕方なくやって来た職業安定所またの名を酒場でも、私のドレスは目立っていて追放された聖女だと即バレした。


「追放されてまでも、あんな贅沢なドレスで歩いているなんて、やっぱりおかしな女だったのよ」


 そんな事を言われても、庶民の服だって一式揃えたらそれなりの値段がするから、買えるまでこの服を着続けるしかないよ!


 ベチャ


 何処からともなく泥団子が振ってきた。


 ドレスに泥の跡がついている。


 周りを見渡すと、何人もの人がいる。


 それぞれが、私を見て笑っているみたいで、誰が投げつけたのか判別できない。


 酒場を追い出されて無職の言い換えの勇者にすらなれない、仕事もなし、お金もなし、そして、泥団子を投げつけられる……。


 この王国で私にできる事はもう残っていない……。


 最後の温情でこの国に残ってやってもいいかと思ったけど、ダメですね。


 精一杯の強がりを言う。


 顔を上にして空を見上げていないと涙が溢れてくる。


 本当にあなたたちが私を必要としていない事がよーく分かりました。


 自分で言って、自分の心臓が抉られる。


 この国の至宝だと持て囃されて、私が幸せになる事が国の幸せだと言われたから、本当に私は無理して贅沢する事が喜ばれると思ったのよ。


 今更、言い訳だと思って誰も聞いてくれないでしょうけど。


 だから、私は出て行きます。


◆◆


 城の城門の外には広大な大地が広がっている。


 数人の勇者候補たちが所々でスライムなどの低レベルモンスターを狩っている。


 服を買うにはスライムを数十匹は倒す必要があります。


 今のドレスではスライムを追いかけるのも大変です。


 なら、人間を狩ればいいんじゃありません?


 人間を一匹狩れば、スライム数十匹よりもたくさんお金が手に入ってお釣りも来ます。


 私は目を瞑って、システムスイッチが浮かび上がるのを待ちます。


 すぐに目の前に開発者用デバッグモードと書かれたシステムが現れます。


 目を開いて周辺一帯を確認。


 人間にはヒューマン(Human)のH、モンスター(Monster)にはMのマークが付いている。


 それをスイッチを入れ替えて逆にする。


 これで人間がモンスターに、モンスターが人間になった。


 私は近くにいるモンスターを後ろから狩る。


 私をまだ味方だと思っているから警戒心がない。


 簡単に倒せたモンスターは経験値とお金をザクザクとくれる。


「これで、やっと服が買えるわ」


 直接服を買えないから、デバッグモードと言っても全然万能じゃない。


「な、なんでシュカ! 人間が人間を倒しまシュた!」


 一息ついていたら、私が倒した人間にやられそうだったスライムが騒ぎ出した。


 この世界ではモンスターは喋れないモノで、人間は話せるモノって分類がある。


 人間になったスライムの話し方……なんて可愛いの!!


 私はスライムを捕まえて、頬ずりする。


「うわわ、やめてくだシュい!」


 ぷにぷにして可愛い!


「もう、絶対、私のペットにする!」


「わわわ、ダメでシュ〜!」


 嫌がったって、スライム如きが、デバッグ機能持ちのテストプレイヤー様に勝てるわけないのよ。


「俺の可愛いペットに悪さをするのはやめてもらおうか」


 何処からともなく声がしたと思ったら、暗く肌の大きな怪物が現れた!


 デバッグモードで見える表記はHのヒューマン。


 だけど、人間じゃない。


 話せるから人間に設定されているだけの魔物……魔王だ!


 最悪だ……。


 私のデバッグモードは最強だけど、魔王だけには効かない。


 話せるヒューマンでありながら、モンスターでもある魔王はHに固定されていてMには出来ない。


 私が絶対に勝てない相手だ……。


 私が絶望したその時、


「俺のペットのスライムを話せるようにするとは面白い奴だ。なんでもお前の望みを叶えてやるから、俺のモノになれ」


 と、魔王様に誘われていた。



「うーん、なんでもって言われても贅沢はし飽きたわ。無理にするものじゃないし……」


 いや、外で一人で暮らすより、魔王様に囲われた方が何倍もマシだけど、それを最初に言っては足元を見られるし。


「そうだ! 私を追放した王国の奴らを見返してくれたら、あなたのモノになりますよ!」


 けれど、魔王様は難色を示す。


 ゲームのシステム的に王国に魔物が入れないのはお約束。


 でも、私がいればそこは問題じゃない。


 私のデバッグモードは、私自身が起点となり、エリア毎に首都を設定して移し替えるというもの。


 どんなゲーム内のテストに必要だったのか知らないけれど、今、一度デバッグモードを使ったから、この周辺一帯が今は首都なのだ。


 さっきまでここにいた、モンスターになった勇者候補たちも首都からじわじわと拒絶され始めて撤退している。


 ここはHのヒューマンだけのもの、元モンスターの楽園になっている。


「つまりお前の力で王国の結界が消えてモンスターが入り放題になったっと言うことか」


 魔王様の理解が早い。


「そうです! 思いっきり暴れて来てください! 魔王様!」


 魔王様はすぐ後ろの城壁にスーッと消えていく。


「ほ、本当に入れたでシュ! すごいでシュ!」


 スライムが可愛く騒いでいる。


 いけない! いけない! せっかく魔王様が私の為に元人間の王国で暴れてくれているのに、スライムの可愛さに見惚れてしまった!


 すでに魔王様が城に火を放ち、多くの人が逃げまどっている。


 私を「役立たず」と言ったり、事情も知ろうとせずに「ドレスを着て贅沢だ」と言った者たちが、恐怖に慄いているかと思うと気分がいいわ。


「タスケテクレ」

「マオウダ! ケッカイガヤブラレタ!」


 モンスターになったからと言って、完全に話せなくなるわけじゃないのね。


 ヒューマンには聞き取り辛くなるってって事なのね。


 全く悲鳴が聞こえないんじゃ、面白くないもの、丁度いいわ。


「元人間相手に、魔王様、やりすぎでシュ!」


 心配しているスライムが可愛い。


 私よりも、スライムの方が優しさを持っているのが皮肉だけど。


 最初にフィールドに出た時に、あなたたちスライムが勇者候補に狩られているのを見た時に、私は同じように感じたのよ。


 一方的に責められるあなたたちが、私に重なった。


 あなたを殴る勇者候補を本気で葬りたいと思ったのよ。


 HとMで狩るものと狩られるものが分かれるなら、私を不快にさせるかさせないかで選んでもいいでしょう?


◆◆


 魔王様が散々暴れて帰ってくる。


 パチパチパチ


 私とスライムが拍手で迎える。

 

「お前たち……」


 魔王様はなんだか照れているっぽい。


 スライムを膝に乗せると、「ありがとう」と囁いて優しく撫でている。


 ……。


 と、尊いです!


 私の事を自分のモノにするって言ったのに、スライムばかり可愛がって、私は放置って酷いですよ、魔王様!


 でも、魔王様とスライムの絵面が尊すぎて入っていけない……!


「聖女も魔王様に、よしよしして貰いたいでシュか?」


 スライムが聞いてくれる。


 してもらいたいです!!


「いや、それは駄目だろう……」


 魔王が難色を示す。


「こんな何も視界を遮るような物がない場所で、せ、聖女を可愛がるなど……!」


 恥ずかしがり屋ですか!? 魔王様!


「ここは首都に設定されたので、すぐに建物が建ち始めて、お店とかも出来始めるはずですよ、魔王様!」


 私が勢いよく言うけど、「そうか……?」と魔王様は分かっていない様子。


「聖女は魔王様に、よしよしして欲しいんでシュよ」


 スライムが私の代わりに言ってくれる。


「な!」 


 魔王様も真っ赤になっているけど、私も真っ赤です。


「わかった、聖女は俺のモノだから、建物が完成したらたくさん可愛がろう」


 魔王様に言われて、とっても楽しみです。


◆◇◆


 首都機能が元の王国から移転して数ヶ月。


 私と魔王様の部屋に、国王が勇者になったドラゴンに追いかけられる声が響いた。


 走れそうにない身体の国王が、みっともなくドラゴンから逃れようと必死に走る。


 国王の鈍足にドラゴンは動く事なく、国王を射程距離に捉え続けている。


「タスケテクレ、セイジョ!!」


 ドラゴンの炎が王を焼き尽くす。


「ウワワアアアアアアア!!」


 モンスターになった王様は燃え尽きて消える。


 チャリーンとコインが落ちて、経験値がドラゴンに入る。


 王様だったものがあっけなく消える。


 けれど、数時間後にまたリポップする。


「ウワワアアアアアアア!!」


 死んだ時の顔のまま、苦痛をともなってのリポップに掬いが有るとは思えない。


 それでも、何度も同じ事を繰り返して飽きないんだから、あれはあれで楽しいんでしょう。


「ワシハ、オウサマダ!」


「ワタシハ、オウヒヨ!」


 王様以外にも、王妃様や、王子王女達が残って勇者に退治される日々。


 権力に固執する様子に、こちらに移ってきた王子と王女が呆れていた。


 王族以外の貴族も王国を去り、教会も廃墟同然。


 ただ、今だに王族のように権力に固執するもの達が魔境となった国に住んでいる。


 国民も信者もいないのに、威張っているのは裸の王様だけよ。


 魔王様が元人間の王国を襲撃した日にルールが変わったの。


 理解した人々は、私に土下座して、即日こっちに移住して来たの。


 残っているものは、立場に固執しているか、モンスターの方が性に合うのか、理解できないほどの間抜けのどれかよ。


 モンスターが性に合うような人たちが主導権を握っていて、王国はスラム化が進んでいるけど、それが彼らの望む生き方なら、尊重すべきよね?


 こちらに移ってきた人間たちは、誘っても来なかった人たちに見切りをつけているらしく、モンスターを見るような目を向けていた。


 彼らの間で一体何があったのか、追放された私には分からない。


◆◆


「聖女! 魔王様! 勇者の服でシュ!」


 スライムが私と魔王様に勇者姿を見せてくれる。


 実は勇者になるのが夢だったスライムは、魔王様と訓練してドラゴン並みの火を吹けるようになっていた。


「国王を倒してくるので見てくだシュい」


 そう言って旅立つスライムを私と魔王様は安全地帯から見送る。


 魔王様はスライムが居なくなると、私にグッと近づく。


 私は座っている魔王様の膝にまたがって魔王様と密着する。


「魔王様……」


 魔王様の背中に腕を絡めて、スライムには見せられない格好でスライムの初陣を見守るのはなんだか恥ずかしいけど……。


「聖女、約束通り、永遠にお前は俺のモノだ」


 最強のデバッグモードを持つ私は、自分の安全地帯の中で、唯一操れない魔王様に可愛がられながら、もっと強く守られる。


 何も心配いらない中で、小さな可愛いスライムに追いかけ回される国王の姿を見る、至高の時間。


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