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幼馴染に女装させたら予想以上に可愛すぎた

 まず、前提として言おう。


 涼太りょうたはとてつもなく可愛い


 涼太は私の幼馴染で幼稚園の頃からの付き合いだ。それだけ付き合いが長い私でさえ小学3年生くらいまでは本気で女子だと間違えてしまいそうなほどだった。

 そしてふと思った。


「女装させたらめっちゃ可愛いんじゃない?」


 善は急げと思い、次の日勉強をしに来た涼太にそう言った。


「涼太、一回女装してみない?絶対似合うよ」

「はぁ?何言ってるの。そんなことよりペンを動かそうよ」

「お願いだからさぁ」


 涼太は「まったく、こうなったらいつも止まらないんだから」と呟きながらしぶしぶ了承してくれた。


「はぁ、一回だけだぞ」

「え、いいの?やったー!」

「あっ、ちょっ、おまえ!抱きついてくるな!」


 顔を赤くしている涼太は放っておいて、クローゼットからお目当てのものを取り出すとバーンと広げた。


「とゆーわけで、涼太くんにはこれを着てもらいます!」

「え、これ本当に着るのか...?」


 手に持ってるのはフリルがあしらわれたワンピース。いわゆるゴスロリってやつだ。


「さすがにこれはちょっと...」

「ほら、服脱いで。私が着せてあげるからさ」


 そう言い、シャツを脱がせようとすると涼太が抵抗してきた。うまく脱がせられないじゃん。抵抗しないでよね。


「脱ぐくらいは自分でもできます!」

「はいはい、脱げたら言ってね。そのワンピの着方わからないでしょ?」

「そもそもなんでこんな服持ってるの...」


 30分間にわたる攻防(?)の末、着ることができた。


「やっと着終わった...」

「私の見立て通りだ。やはり可愛い」

「はいはい」

「メイクもしていい?」

「もうお好きにどうぞ...」


 カバンからコンパクトを取り出して涼太に化粧を施していく...


「君が普段使ってる化粧品付けられるのなんか恥ずかしいな...」

「...っ」

「どうしたの?」

「可愛すぎる!!」

「え?」

「ねぇ撫でていい?抱きついていい?写真撮らせて?」


 涼太は、にげだした。しかし、まわりこまれてしまった!


「かーわーいーいー!」


 ちょっと嫌そうな顔も不服そうな顔も全部がかわいすぎる。やはり私は天才だ...

 テンションが上ってきた私には、もはや涼太がボクっ娘にしか見えなくなってしまった。


 そして約10分が経った。


 その間に何があったかは私の尊厳...もはや無に等しいけど、を守るために伏せておこう。


「おーい、夢の世界から戻ってこーい」


 いたっ、頬を軽く叩かれてしまった。


「ごめんごめん、涼太が可愛すぎて...」

「もう十分堪能できた?この服結構重いんだよね。女性の苦労を感じたよ」

「ふっ、やっとわかってくれたか」

「普段こんな服着ないでしょ...で、これどこで入手したの?今まで見たことなかったけど」

「いやー、一時期こういう服に興味があったけど着れなかったんだよね......やっぱり服のサイズはしっかり確認して買うべきだったなー」


 私は視線を下ろし、同年代と比べると大きいものを軽く持ち上げて言った。


 あっ涼太、顔真っ赤になってる。そういうところも可愛いなー。


「...それで、結局堪能し終わったの?」

「あっありがとう。もう十分堪能したよ。それじゃ、脱がしてあげるねー」

「ちょっ、待って、まだ心の準備がっ...」

「はいはい、暴れないの」


 来ているのが私の服のせいかシャツを脱がせようとしてきたときより暴れなかった。

 ただ、ワンピースを脱いだ途端に元々着ていたシャツを掴んで逃げようとした。しかし、私の部屋からリビングに降りると私の親がいる。結局は逃げると言っても部屋の端に移動しただけだった。


「もう、恥ずかしがりすぎ。昔何回か一緒にお風呂入ったことあったでしょ?」

「そんなこと覚えてないし、それとこれとじゃ話が別でしょ...」


 ワンピースをクローゼットに戻し終わり、後ろを向くと、元々着ていた服を着直して机に突っ伏していた。


「ごめんね今日は。あまり勉強も進んでないみたいだし」

「いい息抜きになったからいいよ。それよりも自分の課題の進みを心配したほうがいいよ」


 うっ、痛いところをついてくる。流石に夜にでも進めないと。


「それじゃまた明日学校で。課題ちゃんと終わらせてきてよね?」

「今日はありがとうね。ちゃんと課題終わらせておくよ。流石に呼び出しは嫌だからね」


 涼太が不意に扉の前で振り向いて言った。


「それと...思ったより悪くなかったよ」


 ......え?今なんて言った?ちょっと待って涼太、って逃げ足早っ。もう玄関出てるじゃん。


 その日の夜、言われた通り課題をちゃんと終わらせたあとにベッドに入った。思い出すのは最後に涼太が言った言葉。


「思ったより悪くない、か」


 そう言われるのは予想外だった。だとしても申し訳ないことしたな...あんまり課題進めれてなかったし。流石に反省しよう。今日あったことを思い出しているうちに深い微睡みに沈んでいった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 次の日学校に行くと涼太は教科書を開いて今日の予習をしていた。


「おはよー」

「おはよ、ちゃんと課題はやってきたの?」

「なんと、やってきたんだよ!えらいでしょ!」

「はいはい、えらいえらい」


 うぅ涼太からの扱いがひどい。私、泣いちゃうよ?


「ねぇ...」

「ん?何?」


 少し恥ずかしそうに涼太は言った。


「今日も家に行っていいか?」

「えっ、まぁいいけど...着せ替え人形にしちゃうよ?」


 昨日の反省?そんなの記憶にありませんねぇ。


「他にどんな服があるのか気になって...」

「え?ほんとに着せ替え人形にしていいの?」

「いいけど...」


 えっマジで?やったー!うれしすぎる。


 家にある服のレパートリーを思い出しながら今日一日、上機嫌に授業を受けた。

 抜き打ちであった数学のテストはボロボロだったが。



「ちゃんと普段の勉強やってないからこうなるんだよ?」


 放課後、家に来た涼太にそう言われてしまった。


「服着てくれるって言ったじゃーん。なんで勉強についての説教されなきゃいけないの?」

「流石に点が酷すぎたからだよ...横から点数見えたけど普通に赤点だぞ?」


 そう言われ、テストの復習を始めた。

 えっ、全然わからないんだけど。これどうやって解くの?涼太ー、助けてー!


 格闘すること30分。やっと一通り終わったので聞いてみた。


「涼太ってどんな服着たいの?見たいって言ってたけど」

「んー、可愛い系とか王道の清楚系を着てみたいかな。他にはキュロットパンツとかを合わせたボーイッシュな感じの、君がよく着てるような服も着てみたいな」

「ほうほう...」


 なーんで私がよくそういう服着てるの知ってるのかなー。

 普段よく見られてるってことを意識するとなんだか恥ずかしいな...


「それじゃ、ボーイッシュな服にしてみる?まぁまぁ種類あるから見て選んでくれたらいいよ」


 クローゼットのドアを全開にするとそこには多種多様な大量の服がかけられていた。

 ふふん、全部私が定期的にお手入れしていたかいがあった。もっと私を褒め称えよ。


「結構量多いけど服の系統とか種類ごとに分けてるからわかりやすいと思うよ」


 涼太は目を輝かせながらクローゼットの中の服を見ていた。


「これ着てみていい?」

「どーぞどーぞ、どれでも好きに着ていいよ。私が普段着ているやつでも涼太が気にしないなら着ていいよ」


 涼太が少し顔を赤くしながら言った「君が気にしないならいいけど...」というつぶやきはテンションが上っている私の耳には届くことがなかった。


 ボーイッシュな服を着た涼太もやはり似合っていた。男なんだからボーイッシュな服は似合うだろと言う人がいるかもしれない。だけど言葉では言い表せない何かがあるのだ。


「さいっこうに可愛くて似合ってるよ!」

「そ、そうかなぁ...」


 その照れてる顔も可愛くて最高だ...神に感謝を。


「この服、肩が出てるからこの時期ちょっと肌寒いかな」

「確かにその服オープンショルダーだからこの時期ちょっと肌寒いかも。クローゼットの左下の方の棚にカーディガン的なやつあるから羽織っていいよ」


「この完成度なら軽くメイクすれば外出ても気づかれないんじゃない?」

「いやー、それは流石に無理でしょ...」

「試してみないとわからないって、一回やってみよ?」

「はいはい...」


 涼太は呆れ半分諦め半分の様子で頷いた。すでにその時には涼太に目もくれずにメイクの準備を始めていたが。



「いやー、やっぱり寒いねー...って涼太震えてるけど大丈夫?寒いの?」

「ちょっと寒いけど、知り合いに見られないかが不安すぎるんだよ」

「だいじょーぶだって。私が完璧に仕立て上げたんだからね。安心できるでしょ?」

「まったく安心できない...」


 背中で「ありがとうございましたー」という少し間延びした店員の声を聞きながらコンビニを出ると涼太が店の外で待っていた。


「店の中入っとけばよかったのに。店の中暖かかったよ」

「女装したままコンビニに入るのは気分的に難易度高すぎるって...」


「すでに何回か人とすれ違ってるから気分的には変わらないと思うけど」と苦笑しつつ、さっき買ったチューブアイスを食べていると前から見知った二人組がやってくるのが見えた。


「涼太、やばいよ前から知り合いが来てる!」

「フラグ回収が早すぎるって...」


 前からやってきていたのは学年で有名なバカップルで、家がそこそこ近いこともあり私や涼太とも仲が良い二人だ。あの二人は涼太が女装していることを気づく可能性がある。かなりヤバい。


君歌(きみか)ちゃーん、やっほー。今日も服可愛いね!」

「うん、ありがと。ふたりとも今日はデート?」

「そうだよー、そういえば君歌ちゃんの隣りにいる子、誰?」

「えっ、えっと〜」


 ヤバい!どうしよう。まだ涼太って気づかれてないし別人ってことで流すしかない。


「中学校の頃からの友達で、涼子ちゃんって言うんだー」


 うぅ、涼太からの視線が痛い。明らかにお前隠す気無いだろって目が言ってる気がする。


「ラブラブなお二人さんの時間取るのも悪いしそろそろ帰るね」

「そんなに遠慮しなくてもいいのにー。それじゃまた明日ね」

「うん、また学校で」


 彼氏の雄介は何も言わずにじっと私たちを見つめていたが、彼女の澪がこちらにブンブン手を振りながら歩いてしまったので急ぐことを余儀なくされていた。


「雄介に気づかれてないといいけどなぁ...」

「気づかれてないか本当にドキドキしたんだからね?まぁ澪は気づいてなさそうだったけど」

「ごめんね、私も油断してて...お詫びの品と言ってはなんだけどこのアイスいる?まだ二口しか食べてないから」

「まぁ、ありがたくいただくよ」


 涼太は「これ新作のやつじゃん」と呟きながらチューブアイスを吸っていたが、ふと顔を見るとさっきまでと比べると顔が赤くなっていた。


 「どうしたの?熱でもある?」と言いながら涼太の額に手を当ててみたけど熱があるようではなかった


「いや、熱はないんだけど。これって...間接キスだよね...?」


 ブワッと自分の顔に熱が広がるのを感じた。なぜ、気付けなかったのか。たとえ幼馴染でも間接キスは恥ずかしい。

 そんな私を見て、からかうように涼太が言った。


「君も顔、真っ赤だよ」

「...涼太のばか」



「ふぃ〜やっぱ家の中はあったかいなー」

「やっぱ結構外寒かったね。風邪引かないように気をつけてよ?」

「はいはい、わかってるって」


 「まぁそれならいいけど...」と微妙に不服そうな顔で言われたが、そんな風邪引きそうな行動をした記憶が全くない。純粋に体調を気遣ってくれただけなのかもしれない。涼太にしては珍しいな。


「普段、部屋着薄いけど暖房効かせてるから大丈夫だって。それよりそろそろその服脱ぐ?涼太の方が寒くそうだけど」

「そうしよっかな。あっ、恥ずかしいからちょっと後ろ向いてて」

「おっけー」


 着慣れてない服だからか、かなり脱ぐのに苦戦しているようだった。時折「えっと...確かこうすれば脱げるはず...」や「よ...いしょっと」と言う声が聞こえてきた。なぜか私はそれを聞いて心臓の鼓動が速くなっていくのを感じた。


(えっ、なんで今私ドキドキしちゃってるの?ただ後ろで涼太が着替えてるだけなのにっ)


 その理由が涼太が着替え終わってもわかることはなく、またもや顔が赤くなっていた私は熱がないか、心配されてしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あの日のあとは期末テストが近づいていたこともあり、涼太が家に来ても勉強をしているだけだった。涼太の女装をまた見たいが、普段あまり勉強をしていないため涼太に教えてもらいながら課題をやらないとさっぱりわからないのだ。


「りょーたー。やる気出ないよー」

「常日頃からちゃんとやらないから...赤点取ったら追試になるんだからね?」

「わかってるけどさー。やる気が出ないんだよー」

「なら、全科目合計で校内偏差値60以上取れたら好きに着せ替え人形にしていいよ」

「え!?ほんとに?」

「それでやる気が出るなら...」

「絶対に偏差値60取るぞー!まぁ取れたこと数回しかないけど...」


 涼太はそんな様子を見て苦笑しながらも、私が行き詰まっている問題を優しく教えてくれるのであった。



 そんな私が妙にやる気を出した勉強会はテスト前日まであった。テストの手応えもなかなか良く、自己採点も普段よりかなり点数が高かった。


「やればできるじゃん」

「ふふん。私すごいでしょ?」

「偏差値60.3でギリギリだけどね...」

「60超えてるんだからいいじゃーん」

「まぁそうだけどさ。普段からこれだけがんばればいいのに...」

「そりゃ今回はモチベーションがあったからね」

「まぁ約束したし好きにしていいよ」

「やったー!じゃあ一緒にショッピングモール行かない?」

「いいけど...行くなら早めにいつ行くか決めてね」


 ウキウキしながらクローゼットを開き、似合う服を探すこと約10分。涼太に試しで着てみないか声をかけようとしてふと、自分の中に疑問が生まれた。


ーーー涼太は本当に女装したいのか?


 涼太は約束だからきっと着てくれるだろう。だけど本心では本当に着たいと思っているのか。あのとき「思ったより悪くない」と言ってたけど大衆の面前では着たくないかもしれない。


「ねぇ、涼太...」

「ん、何かあった?」

「涼太って...本当に女装したい?」

「どういうことだ?」

「ずっと私が涼太の女装した姿が見たいから着てもらってた。だけど本当は嫌じゃなかったのかなって...」


 涼太は「まったく...君は...」と呟きながらこっちに近づいて言った。


「確かに最初はしょうがなく着た」

「なっ、なら次は拒否したら...」

「君は僕が可愛いものが好きなこと知ってたでしょ?昔から一緒にいるんだから」

「まぁ...そうだけどさ」

「一度、いいって言ったんだからいいの」

「で、でも、人前で着るの嫌じゃないの?」

「まぁそりゃ恥ずかしいさ。だけどそれが君の望みなんでしょ?」

「...うん」


 軽くため息をつきながら涼太が言った。


「やっぱり君はこういう時に限って急に腰が引けるよね。昔も何回か頼み込んでおもちゃを貸してもらえたら急にやっぱいいいよ、って言うんだから」


 恥ずかしさを誤魔化しながら「それが君のいいところなんだけどね」と呟いたのは私の耳にはっきりと届いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その後のことはあまり覚えていない。なぜなら私が泣き出してしまったからだ。今でもなぜ泣き出してしまったのかはよくわからない。涼太が私のことをよく見ていてくれたことが嬉しかったのか。それとも...


 ピンポーン


 玄関のチャイムが鳴ったので思考を中断することを余儀なくされてしまった。


「おはよー。ほら入って入って」


 今日は約束のショッピングモールに可愛い服を買いに行く日。だから約束通り女装するために家に呼んだのだ。


「服は全部お任せで」

「おっけー。今日のために考えてきたからね。大船に乗ったつもりでいて!」

「はいはい」


 今日のために選んでいたのはいわゆる清楚系のパンツスタイルだ。涼太は女装するとお淑やかな感じになるから絶対に似合うはず、と思って今日は選んだのだ。


「やっぱり君ってセンスいいよね」

「でしょでしょー?」


 かなり涼太からも好評のようだ。選ぶのに時間をかけた甲斐があったね。



 着替えた後に話したりしていたらショッピングモールに着いたのは1時過ぎのことだった。昼食は二人とも私の家で早めに食べていた。私の作った料理は涼太の口に合ったようで嬉しかったな。


「それじゃまずはどこに行くの?」

「えーっとね...この店!」


 私が指差した先にあったのは私がよく服を買っている店だった。かなり品揃えが豊富で、涼太が好きそうな服も多数置いてある。


「これとー、それとかおすすめだから気に入ったら試着してみてね」

「それじゃいいのあったら試着してくるね」


 フッフッフ。やはり私の見立ては間違っていなかった。涼太も気に入ってるみたいだし、かなり嬉しい。


 試着した涼太はどうだったのかというと...


「ど...どうかな?似合ってる?」


 控えめに言って最高だった。涼太は服のセンスがとてもいいのだろう。とても似合っている。


「さいっこうだわ」

「語彙無くなってるけど大丈夫?」

「涼太が似合いすぎててさ...」


 その後も涼太はいろいろな服を試着していた。その度に私は語彙が消滅していたため「大丈夫?」と何回も心配されてしまいかなり恥ずかしい。


 涼太が「これが一番気に入ったなぁ」と言いながら手に持っていたのはオフショルのブラウスとジャンパースカートがセットになっているものだった。


「それじゃ支払ってくるね」

「えっ、それは...」

「いいの!そもそも私が誘ったんだし、この服私も着てみたいから。こういう服持ってるって家族に知られたら恥ずかしいでしょ?」

「まぁそうだけどさ...」



 その後、涼太が奢ってくれたレモネードを飲んだりしていると、すでに日が落ちかけていた。


「いやぁ、日が暮れるの早いねぇ」

「確かにもう12月だからね」

「去年は高校受験で忙しかったからさ、今はかなり気楽にゆっくりできるよー」

「来年は大学受験のこととか口うるさく言われるだろうけどね」

「イヤだー!ずっとこのままがいい!」


 確かに進路のことを考える時期がやってくるのだろう。ただ...何をしたいのかがハッキリとせず、モヤモヤとして残っている。前に涼太に聞いてみたときには「そんなもんでしょ」と返されたけど。


「それじゃ、そろそろ帰ろうか」

「そうだね。遅くなりすぎるとお母さんに文句言われるから」


 そしてふと思った。私は今日本当に言いたいことを言えたのだろうか...いつか後悔しないのだろうか。今言わなかったら絶対に後悔するだろう。しかし、言ってしまったら...なんと言うだろうか。考えることすら怖い。だけど、今しかないんだ。


「ねぇ涼太」

「ん、なに?」

「今日は...楽しかった?」

「うん。すごく楽しかったよ。ありがとう」

「それと...」


 口に出そうとしても喉がカサついてしまったように、うまく言えない。だけど言ってやるんだ...精一杯の笑顔で!


「涼太、大好きだよ」


 それを聞いた涼太は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして...またいつもの微笑みに戻ってこう言った。


「僕もだよ」

はじめまして、瑠璃色ぽてとです。私の処女作いかがだったでしょうか?この話は「女装」をテーマに書いてみました。感想を書いていただけると励みになります。日本語がおかしいところなどがありましたら、教えてくれるとありがたいです。

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