建国祭の夜(First round)
かくして、女王ヴィルヘルミナは「婿を決める」という、期限一ヶ月のどでかい宿題を渡されたのだけれど。
「無理だー!」
あっという間に時間は流れ、建国祭の当日。
これまでの間、婿候補についてじっくり考える……こともできず、女王としての仕事をこなしたり覚えるべきことを覚えたり、建国祭の準備をしたりよその国の偉い人に挨拶をしたり……とかいろいろしていると、あっという間に一ヶ月が経ってしまった。
主人公ヴィルヘルミナは要領がよくて頭もいいという設定だけど、国政はまた別問題だ。それに女神に造られた存在だから、国についての知識とか外交については疎い。
公務に関してはアンネや結婚候補の一人であるインテリが手伝ってくれるのだけれど、それでも恋愛にかまける余裕はなかった。
アンネも野暮ではないので、「まだですか」ってせっついたりはしない。でもさすがに今日が約束の日だからか、朝から彼女に意味ありげな視線を送られたりしている。
……ごめん、アンネ。ごめん、五人の仲間たち。
私、結婚相手を決められていません!
そりゃあもちろんビジュアルとかの面では王子様一択なんだけど、それで伴侶として選ぶのはどうなの? と考えてしまう。
五人は多少の身分の差はあれど皆貴族だし、女神の使者である私の仲間として戦ったという戦歴もある。女王の婿として不足はないどころか十分すぎるくらいの逸材だけど、私は誰か一人を選ぶよりは五人にはよき仲間、臣下としてそばにいてほしいと思っている。
もちろん、ずっと独身でいろというわけでもなく、私以外のいい人がいれば結ばれてほしいとも思っているし。
……あー、でも、今日がとうとう約束の一ヶ月後、建国祭当日だ。
昼前から夕方までは式典があったりパレードをしたりと忙しいから、アンネが返事を聞きに来るのは夜だろう。それまでになんとか返事を考えれば――
できませんでした。
「ごめん、本当にごめん、アンネ! 今日は勘弁して!」
「女王陛下!?」
建国式典が終わり、王城付近は落ち着いたものの城下町ではあちこちでどんちゃん騒ぎ……という時刻、私は自室に籠城していた。
部屋のドアをアンネが焦った様子で叩くので申し訳ないと思いつつも、ベッドで毛布にくるまって丸くなる。アンネは合い鍵を持っているだろうに無理に開けてて突撃せずにいてくれる優しさが、嬉しくも申し訳なくもある。
「今日は疲れたから、結婚の話はまた明日以降にして!」
「ですが……」
ドアの向こうにはアンネだけでなく、五人の結婚候補たちもいるのだろう。
彼らにも申し訳ないけれど、今は顔を合わせたくなかった。
「明日、明日にして! おやすみ!」
「女王陛下ぁ……」
その後もしばらくアンネたちは居座っていたようだけど、しばらくして足音が遠のいていった。
結婚候補たちは「おやすみなさい、女王陛下」「お疲れでしょうし、また明日」と声をかけて行ってくれる。
ぐうっ……罪悪感がすさまじい……申し訳ない……。
こんな子じみたかんしゃくを起こすなんて、情けない……年齢不詳ではあるけれど一応大人なのに……。
……とにかく、明日ちゃんと皆に謝ろう。
今すぐに婿を選ぶことはできなくても、今日の悲惨な振る舞いについて謝って……それから……。
……ぐう。