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建国祭翌日……!?

 ――ガタン、ゴトン、と何かが倒れる音。

 うわ、こぼれちゃった! おいおまえ、騒ぐと朝から近所迷惑だろう、という声が聞こえてくる。


「……う、ん?」


 とろとろと眠りから覚めたけれど、なかなかまぶたが開かない。しかも、体が異様にだるい。主人公特典なのか、寝れば体力前回復するのがウリの体なのに……。


 まあ、どうせループしたら元気になるものね。

 気にしない、気にしない……。


「……。……ん?」


 あれ、と思い目を開ける。そこに広がっていたのは見慣れた自室のではなくて、黒っぽい木目調の天井。


 そして、私の胸あたりに何かがのしかかっている。抱き枕にしては重量があるこれは……人間の、腕だ。


「……ん、んんん?」


 横を、見た。そこにあるのは、黒髪の青年の寝顔。


 ……。……おや?

 これは一体、どういうことだ?


 私は昨夜……うん、そう、レクスと両想いになって、彼の唇を奪った。

 そうしていると最初は躊躇いがちだった彼にもだんだん火がついてきたようでキスを返してもらい、彼に抱き上げられてリビングの隣にある寝室に入って――


 ……朝チュンである。

 住宅街だからかチュンではなくてガタンゴトンだったけれど、とにかく「熱い夜を過ごした」後の朝だ。


 ……え、いやいや、おかしいでしょう?


 なんで朝になって……それも、レクスの家にいるの? 私、一ヶ月前にループするんじゃなかったの? 

 ループすると思っていたから、思い切ってレクスを誘ったんだけど?


 改めてまじまじと、自分の隣に寝るレクスを見つめる。なんというか、きれいな寝顔だ。

 ぐっすり眠っているようですうすう寝息を立てていて……わっ、服、着ていない! いや、私もだけど……。


 私の胸の上に乗っかっているのは、レクスの左腕だった。よく見ると彼の腕に小さな爪の跡があるのが分かり……う、うわああぁぁぁ!


 ……よし、逃げよう!


 私はそろそろとレクスの腕を押しのけて、あちこち悲鳴を上げる体にむち打ってベッドから下りた。

 そして部屋の随所に散らばっていた自分の服をかき集めて身につけ――その後城にある自室に戻るまでの記憶が、いまいちはっきりしていない。


 多分、あの城壁の穴をいつもとは逆向きに通って城に戻ってきたのだろうけれど、とにかくここから逃げなければ、と必死だったあまり、記憶から飛んでいる。


 証拠隠滅のために着ていた服やらなんやらをクローゼットに押し込んでネグリジェに着替え、ベッドに入ってからガタブルしてしまう。


 ……いや、待て。今はまだ、早朝だ。アンネが起こしに来るまで、まだ三時間ほどある。


 二度寝、二度寝だ!

 二度寝して目が覚めたらきっと、一ヶ月前に戻っているはず!


 おやすみ!

 ……ぐう。










 朝になった。窓の外で小鳥がチュンチュンさえずっている。朝チュンである。


「おはようございます、女王陛下」


 コンコン、とドアがノックされて、女官長のアンネが入ってくる。

 彼女はベッド周りのカーテンをさっと開けるなり、そこで寝ていた私の顔を見てぎょっとしたようだ。


「へ、陛下? どうかなさいましたか?」

「……アンネ。昨日の出来事は、何?」


 髪がぼさぼさ、虚ろな眼差しになっている自覚はあるもののまずそう尋ねると、アンネは困ったように首を傾げた。


「昨日は、建国祭がありましたよ。……もしかして、お疲れが取れていないのでしょうか? リラックスできるお茶を淹れて参りますね」


 アンネはそう言って、部屋を出ていった。


 ……これまでだったらアンネのセリフは、「昨日は戴冠式でした」のはず。それなのに彼女は、今日が建国祭翌日であると告げた。


 アンネの言葉からしても。

 クローゼットの下の隙間からぺろんと覗いている、ワンピースの裾の存在からしても。

 体のあちこちの不調からしても。


「なんでっ……! なんで今回に限って、ループしないのよぉ!」


 ループ、しなかったのであった。

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