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楽しんでる?

月曜日。

珍しくいつもより早く学校に着いた私は、席につくなり絵を描いていた。


「何描いてるの?」


「うわぁ!?

……な、なんだ伊保さんか。何って……推し、だけど」


「へぇ、見せて見せて!」


「嫌だよ……」


早速フラグ的なのを回収されたのか、絶対に話しかけられないと思っていたのがあっさりと崩された。

学校で描いてた私も私だけど、見られたくないなぁ……。


「見せても分からないと思うし、見せたく……ないし」


「そっかー、残念だなぁ」


何故かショックを受ける伊保さん。

見た所でとしか思わないけど。


「絵描くの好きなの?」


「まぁ……うん」


「チラッと見えたけど、上手だと思うけど」


更に腕で覆いかぶさる。


「そんなに隠さないでいいって。

もっと自信持ちなよ」


「は、はぁ……」


そんなに明るく言われても。

何より年下に言われてるのが少し来るというか……。

向こうは当然同い年という体で話してるから、仕方ないんだけど。


「そっちこそ、いきなりなんで話しかけにきたの?」


「なんでって、気になったから……じゃダメかな?」


「………」


気になったから。

恐らくきっかけは一昨日偶然出会った事だろう。

捻くれてる私は良くないけどこう思ってしまう。

それが無かったら一生話しかけなかったくせにって。


「あたしさぁ……その、飾磨さんともっと仲良くなりたくて」


「たまたま会った、から?」


「かなぁ?

自分でも分かんないや」


屈託なく笑う彼女の笑顔は純粋そのもので、あぁ私には持ってないものを持ってるんだなと感じてしまった。


「ねね、見せてよ絵」


「だから嫌だって」


素早くノートを閉じ、机に仕舞う。


「あぁ、見たかったのに」


「見なくていいの」


チャイムが鳴り、皆席に着き始める。


「あーもうこんな時間。

じゃ、また後でね」


ウインクをして、颯爽と自分の席に戻っていった。

授業の間の休み時間にも度々訪れては、話しかけてきた。

そしてようやく4時間目の授業が終わり、弁当を食べようと荷物を持って立ち上がろうとした時、伊保さんが駆け足でやってきた。


「ちょ、ちょっと待ってて!お願いだから!!」


念を押すように両手で数回ジェスチャーした後、ものすごい速さで教室を去っていく。

多分食堂で何か買ってくる気なのだろう。

正直無視して、早く弁当を食べたい気もするが……居なかったらショック受けそうだし、何より数回は話した仲だ。

言われた通り待つこと5分。

ぜぇはぁと息を切らして、両腕に焼きそばやおにぎりなどを抱えて戻ってきた。


「い、行こっか……って、いつも飾磨さんどこで食べてるの?」


「……ついてきて」


私を先頭にやって来たのは、校舎裏。

ここは日陰になっており、おまけにベンチも設置されてないので人は全く寄ってこない。


「ここの段差に座っていつも食べてるの」


「そうなんだ。

って、冬も?」


「ううん、流石に寒くなってきたりしたら校舎内にいい所あるからそこで」


「夏は?」


「ここも流石に暑いし、夏だけは仕方なく教室で」


「仕方なく、なんだ」


いただきます、と手を合わせ弁当箱の蓋を開けた。


「その弁当誰が作ったの?」


もぐもぐとおにぎりを頬張りながら、伊保さんが聞いてきた。


「一人暮らしだから自分で」


「マジ!?すごいね」


軽く肩をぽんぽんと叩かれる。


「そういう伊保さんはいつも食堂で何か買って食べてるの?」


「うんそんな感じだね〜。

おにぎりだけじゃなく、うどんとかカレー食べる時もあるよ」


「メニュー豊富だもんね。

まぁ、私あんまり食べた事ないんだけど」


「食べたい?」


焼きそばを箸で掴みながら、こっちを見る。


「いや、いいよ。

それは伊保さんの大事な昼ご飯でしょ?」


「ならそっちも一口何かちょーだいよ。

それでおあいこでしょ?」


「……なら、このウインナー1個あげる」


「やった!

あー」


口を開けてウインナーを待っている。


「え、あーんしなくても自分で取ればいいんじゃ……」


「ほら、両手塞がってるから。

あー」


伊保さんと話していると、ペースを持ってかれる。

箸でウインナーを掴み、伊保さんの口の中へ。


「もぐもぐもぐ……ん〜美味しい!

はい、あーん」


焼きそばが段々と近づいてくる。


「ほらほら恥ずかしがんないで」


「あ、あーん……美味しい」


「でしょでしょー?」


お昼ご飯を食べ終わると、私はスマホを取り出す。

うちの高校は校則が緩いから、授業中以外ならスマホOK、髪染めてよし、着崩しありな学校なのだ。


「いつもここでゲームしてるの?」


「うん」


「なんてゲーム?」


「言っても知らないと思うよ」


「どれどれ〜?」


スマホ画面を覗き込み、しばらくじっと見ている。

見られながらプレイするの……苦手なんだけどな。


「うーん、よくわかんないや」


「伊保さんはやっぱゲームとかしない系?」


「なんか暇つぶし簡単パズルみたいなのはやるけど」


「あぁ、そういう感じのね」


「飾磨さんは何系やる感じ?」


ぐいっと一気に距離を詰めて座る。

普通に座ってる時でも拳一つ分ぐらいの間なのに、今は密着状態だ。


「ファンタジーとか、バトル系とか……音ゲーとか色々」


「なるほどいっぱいやってるんだね〜」


「今やってるのはバトル系のものなんだけど、ストーリーもすごく良いんだ。

あ……でも伊保さんはやめといた方が良さそう」


「なんで?」


「ストーリーがその……エグいし、敵もザ・モンスターみたいなものにグロさを足したみたいなものだからさ」


「あー結構過激なやつ?」


うんうんと頷く。


「あたしそういうの大丈夫な気がする。

見た感じ大丈夫そうだったし?」


「まぁやるやらないは自由だし。

案外自分に合ってるとかもあるしね」


なんて他愛のない話をしている間にあっという間に昼休みが終わった。

いつもより時間が早く過ぎていく感覚があった。

もしかして私……楽しんでる?

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