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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

高難易度鬱ゲーRPGの世界で、未来へ繋ぐバトンを渡したい

作者: 咲きます



 


 

 

 

 

 

 まだ世界に「勇者」という希望が誕生していないときに、「英雄」がいた。彼は人の理を超えた力や戦闘技術があった。そして、彼は正義感に溢れている博愛主義者であったため善良な人々から崇められ、その名が世間に轟いていた。···だから人々は彼のことを「英雄」と呼んでいた。

 

「···そろそろだな。英雄」が死に、勇者が誕生する。······全く、待たせすぎだ。主要人物たちの好感度も人々の知名度もほぼ限界まで上げたから、やることなくなったのに···時間というものはゆっくりだなぁ」

 

 その「英雄」は15という少年から青年になり、もうすぐ30になるほどの年齢になっていた。

 

「···まぁ、この人生の終わりに意味持たせるための時間だったから悪くはなかったけどな」

 

 あたかも、もうすぐ自分が死ぬかのように、「英雄」はひとりごちる。

 

「···さて、勇者の誕生を邪魔する奴らを止めに行きますか!···この身全てを懸けてな」

 

 まるで、未来が見えてるような「英雄」だが、見えてはいない。ただ知識として知っているだけだ。───彼は転生者なのだから。

 

 

 この世界は自分が日本にいたころ、カルト的な人気のあったゲーム「Loop Despair」だ。ただの村娘がある日突然神からのお告げを聞き、教会で神の加護を受け、「勇者」にならざるを得なくなる。村娘が「勇者」になるために死に物狂いで努力するといったシンプルなものだ。ただ一つ特徴がある。それは···難易度が超超超鬼高いということだ。

 

 

 教会で加護を貰ってはじめに戦うのは、ゲーム中でも屈指の敵の幹部や副幹部たちだ。···もちろん神の加護をうまく駆使したところで元々貧弱な肉体だから、すぐに限界が来る。···いわゆる負けイベントだ。

 負けた後すぐにちっちゃい幼女がくる。メガネを掛け、魔帽子とローブを見にまとっている、いかにも魔法使いですよって言わんばかりの人が。

 その人が転移魔法で一瞬でどっかに行ってしまい、そ・れ・がどんな意味を持つかが分からないまま「勇者」のキツくツラい旅が始まる。

 





 

 ······この幼女の役を本来いないはずの「俺」が務めて死ぬ。 

 

 


 

 

 

 幼女は人間側の切り札的存在にあたる大魔導士だ。···というか、この人以外仲間にしやすく、強い、まともな戦力がいない。そんな人を旅の始まりで見捨てる訳にはならない。

 

 このゲームの1番の鬼畜要素は初めから加護の使える量が決まっていて、それが無くなり死亡することだ。加護の限界が来たり、魔族に取られ死亡するとレベルを引き継ぎ初めからスタートする。いわゆる強くてニューゲームだ。

 ······しょうみ1、2回のループじゃ全く強くないが

 

 

 加護の量は序盤の雑魚戦から、ガンガン使っていくと中盤では簡単に底についているという鬼畜仕様だ。···しかも加護を使わない「勇者」の身体能力は、ただの村娘だから雑魚戦ですら死ぬほど考えなければ、勝てないという鬼畜っぷり。······そして、加護が薄れていく描写が戦闘終了後のリザルト画面や、セリフで一瞬、「何か全力出てないかも?···疲れてるだけかな?」という感じでさらっと流れるだけで初見では殆どがスキップしているか気づかない。

 そのため中盤の戦闘中であったり、無数にある序盤のサブクエの時点で神の加護がなくなるなんてことも珍しくない。

 

 

 

 そして、サブクエはほとんどがトラップだ。序盤の序盤から「勇者」という名前だけ聞いた人たちが依頼を出してくる。護衛であったり、盗賊や山賊の撃退であったり様々だ。······しかし、加護の使える量が決まっている「勇者」にとってサブまで加護を使い行くことは、ただの悪手でしかない。しかも、サブクエは難易度を運営が調整をサボったと思えるほど強かったり、報酬がカスすぎて意味がなかったりする。

 ······村を救った報酬が薬草2個とかザラだ。というか、まだそれは実用性があるだけマシな部類だ。1番クズなのは、その辺に落ちてる石ころとか虫とかだ。···イカれてる。

 

 ···加護を使わずに倒すことは1周目ではほぼ出来ないし、仮にできるほど「勇者」のレベルを上げることが出来るのは中盤以降で序盤では無理だ。

 中盤ですら、加護抜きで戦うと雑魚相手でもほぼ負ける難易度だ。笑えるな。

 そして、序盤のサブクエはメインストーリーの進行度が中盤に入ったり、プレイ時間が一定の時間を超えた瞬間に変化する。悪い方向で···。

 例えば護衛のミッションなら、護衛の対象が魔族や賊に襲われて死亡した。なんで依頼を受けなかったのかと受付嬢から文句と共に言われ、賊の撃退に向かうと、村の面影がなくなるほど荒んでいたり、賊に支配され洗脳されている村が出来ていて手遅れだったりする。

 ······賊を倒して、村人たちを解放したときでさえ、助けられた側の村人たち最後のセリフも強烈で、「もっと早く助けに来いよッ!!今更助けられたってオレたちはもう死ぬしかないんだよッ!!」そう言って村人全員が自殺する。

 また、魔族だと倒したヤツが実は人体実験の失敗作の処理であったり、中身が犯罪行為の援助だったりするものもある。総じてクソだ。

 

 このような胸糞が、これでもかというほど入っているのが「Loop Despair 」の魅力だ。

 ···1周目では中盤にたどり着くくらいで加護が消え死に、2周目は反省を生かし、メインストーリーだけ進めても中盤の真ん中あたりで結局魔族にボコされて、加護を無くされて死ぬ。ボス級の魔族に負けると加護が無くなるという仕様を、ここで初めて知るという、どこまでも不親切な設計だ。

 ······ちなみに加護が残っている状態で死ぬと、高確率で追い剥ぎにあって武器や防具が奪われたり、所持金が小銭だけになっていたりする。···こまめにセーブしないといけない。

 あと死にすぎると、強制終了になる···

 

 

 仲間からの裏切りや初見殺しなどに「勇者プレイヤー」発狂しそうになりながらも繰り返していき、加護を途中で魔族に消されず戦っていけば、10回ほどのループで始めの負けイベが勝てるようになる。そこからがゲームの始まりだ。

 初めの負けイベ勝つと魔導士が魔法を教えてくれるイベントが起こる。···ちなみに、これ以外の方法で魔法を使えるようにならない。魔導士の数は希少だが、それが理由ではなく加護持ちの「勇者」が気に食わないという理由で誰も教えてくれない。

 

 

 

 このゲームの数少ない救済ポイントを挙げるなら、勇者の魔法適正が死ぬほどあることだろう。

 加護抜きで行うレベル上げに慣れ切っている、プレイヤー廃人にとって魔法は、ゲームが変わったと思うほど変わる。MPは寝れば回復するので、普通のRPGのようにレベル上げができる。···経験値は渋いが···

 

 ······と、このようにレベル上げに夢中になっていると、サブクエが手遅れになっていたり、師匠の魔導士が魔族によって殺されていたりする。

 また、消費MP少ないくせに威力がバカデカい自爆魔法というのもあり、初見では「これ使ってツッコめば、レベ上げ楽勝か?」と思うが、経験値は入らない。しかも自爆魔法から復活すると逆にレベルが下がっている。

 ······忘れてはならない。このゲームは高難易度鬱ゲーであることを。

 

 サブクエはプレイ時間の超過。魔導士は定期的に彼女のもとに訪れないと殺されるという意味がわからない仕様となっている。···魔導士が殺される=ゲームオーバーなので早めに切り替えよう。

 

 

 

 これほどまでに魔導士という存在は大きい。だから俺が足止めという役をまっとうする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「······ハハッ」

「───この状況で笑うんはバケモンかよ」

「···気にすんな。ただの思い出し笑いだ」

「そっちのほうが怖いわ。···おっさん、お前もう動けないしMPもほぼないだろ?終わりだよ」

「確かにな笑」

 

 瀕死の絶望的な状態におかれても、どこか楽しげな「英雄」。それを見て魔王は気味悪がっていたのと同時に疑問が浮かび上がっていた。

 

「···もういい加減倒れろよ、おっさん。お前1人じゃニンゲン風情は守れない。······というか、何でおっさん1人で攻めてきたんだ?お前の命、身体は人間どもにとって最重要なんじゃないのか?」

「···何でかーそんなもん理由わかってんだろ?なぁ、魔王サンよ」

 

 少しニヤつきながら、「英雄」はそう言った。

 彼の言う通り魔王は薄々勘付いてた。

 

 

「───あの勇者もどきのためだろうな。暗殺計画の直前にお前が来るなんて、偶然にしては明らかにタイミングが良すぎる」

「やっぱ分かってんじゃん笑」

「···お前は本気で、あんな小娘が勇者になれるとでも?···もし、そうならとんだお笑い草だな。英雄サマの名が泣くぞ笑」

 

 魔王が言ってることは間違っていない。······少なくともこの時点では。

 流石に幼すぎるし、他者への共感性が大きいし、ワガママだ。村娘Cみたいな立場の方があっている性格をしているが、神からの加護のおかげ(せい)で戦闘能力がずば抜けていて、魔法適正は自前で化け物レベルだ。···経験が浅いから、まだまだ雑魚いが。

 

 しかし、彼女は色々な人や魔族と出会い、戦い、罵倒され、殺しながら成長していく。今はまだ蕾なのだ。途中で折れたり枯れることが許されない花を咲かすための準備段階だ。

 

「何も知らないなら笑っておけばいいが、じゃあ何で魔王サマともあろうお方が小娘一人に構うんだ?普段のように踏ん反り返っていたらいいんじゃないか?」

 

「英雄」がそう言うと、馬鹿にするように笑っていた魔王が一瞬で真顔となったが、すぐニヤついた顔となり

 

「···俺は完全勝利が好きなのさ!だれがどう見ても完全なる勝利を挙げたいからな!···それにクソッタレな神の加護持ちなんざ早めに潰しといたほうがいいにきまってるっ!!害虫駆除みたいなもんだろ?笑······まぁ、今回はこっちの方が潰されたが」

 

 途中まで笑いながら言ったが、辺りの惨状を見て「魔王」は表情を引き締めた。

 勇者暗殺に向かうはずであり信頼をおいていた幹部や副幹部が半数以上が亡き者となっていて、それ以外の大半の部下たちも動ける状態ではなくなっていた。

 

 

 

 

 

 突如現れた人類のヒ・カ・リ・によって

 

  



 

 辺りを一瞥し、魔王は、

「だがな、俺ら対テメーはの戦いは俺らの勝ちだ。馬鹿野郎がッ」

「何でお前1人なんだ?何で勇者候補を死んでも守ろうとする?」

「訳が分からない···まぁこっちとしては甚大な被害を被ってまでも人間側の最大戦力を潰せたからいいが······お前は理解しているのか?お前以外のニンゲンはゴミばっかだ。まともに人類のため動いているのはらあのチビ魔導士くらいだろ?他のヤツらは俺ら外敵に目をつむって、内輪揉めしかしてないのにな笑···英雄様そこんとこどうなんだ?」

 

 「英雄」はそれを理解していた。だって転生者なのだから。ゲームの展開は知っていたし、人間の醜い部分も知っている。

 ···確かに、打てる手はあった。しかし、それらの一つ一つは「勇者」の成長の糧となる。人の善意に触れ、悪意を知り、人や魔族とはどういうものかを理解する。······そこに自分が勝手に介入する訳にはいかない。そう思っていた。

 

「···知ってるに決まってるだろ。それが人間というものだ。だけどな、俺はそれでも人を救いたかったのさ」

 俺は本来いなかった存在だ。だから好き勝手にやって勇者の成長を妨げてはならない。その想いだけでここまで来た。絶対にメインストーリーの本筋が変わらないような立ち回りをしてきた。

 報酬がカスだったり、救う対象の人たちがクズのサブクエばかりこなした。

 あとは過程はどうあれ、最終的に勇者に友好的になる奴らの好感度を上げ、来るべき「勇者」への助力を約束させた。

 

 ここまでは順調だ。

 あとは、勇者の育成を魔導士に任せて俺は死ぬだけだ。

 この世界で生き返れるのは、神の加護を貰ったものだけだ。復活魔法やフェニックスの尾なんてものはない。

 神の加護というものは「勇者」のように選ばれたごく少数のものしか与えられない。俺は持っていないから、死=ゲームオーバーだ。

 

 このゲーム、「Loop Despair」は文字通り絶望の繰り返しだ。

 神の加護を貰っても魔族にボコられ力の差に絶望する。

 加護の量を知らず無くなり、ただの村娘になって絶望する。

 サブクエは助けてもなんの得にもならず、難易度がイカれてるため絶望する。

 加護抜きでの戦闘は、村娘の力しかないため勝てず絶望する。

 加護を気にして、メインストーリーだけ進めても結局ボス級の魔族に加護を奪われ死亡し、絶望する。

 師匠となる魔導士を助け、魔法が使えるようになっても、師匠が魔族に殺されて絶望する。

 自爆魔法特攻をしてレベル上げをしようとするも、経験値が入らず使ったことにペナルティでレベルが下がり絶望する。

 etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.etc.

 

 このような絶望の繰り返しが死ぬほどあるこのゲームが人気な理由に「エンドがいい」というのが多い。

 このゲームはマルチエンディングシステムであるため、「勇者」の終わりは様々だ。

 例えば、魔王に勝てず世界征服される「征服エンド」や、人類に絶望し人類を皆殺しにする「皆殺しエンド」。勝てないことや強制的に戦わされることを神の加護のせいにして神にキレてしまい、神が怒り殺される「喧嘩エンド」など多種多様だ。

 

 そのなかには、魔王に打ち勝ち人類を平和にさせる「平和エンドI」がある。これを「勇者」にまずは取ってほしい。このエンドは通称「表面上の平和エンド」と呼ばれるほど薄っぺらい平和ではあるが、1つ目に取れたら満点だ。魔法を使えるなら充分狙える。

 

 

 

 

 

 

 加護を持たない俺には人類を救えないが、「勇者」なら救える。

 師匠となる魔導士がいて、信頼できる仲間がいて、加護を貰った「勇者」なら······

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 では、「過去」より「未来」へバトンを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「···コイツのせいで完全に計画が狂ったが、俺があの小娘をぶっ殺せば俺らの勝ちだ。あとのチビ魔導士は傷が癒えてからでいい」

「···なぁ魔王サンよぉ、1人で楽しそうに話してるとこ悪いが···」

「そんな状態で何ができんだ?笑 口以外動かないのに笑」

「口が動けばいいさ。···知ってるか?MP消費が少なくて、威力がバカデカい魔法を」

「───は?」

「ハッ笑。マヌケ面のままイけや魔王」

「ガチかッ!バr」

「じゃあなッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 未来へ繋げたぞ

 あとは頼んだ「勇者」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――― ―――― ―――― ―――― ―――― ――――

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

「······?何か胸がキューってなったけど、なんだろ?神様の加護貰うときに緊張してたのかなぁ?」

「勇者ッ!!無事か!?」

「ロリ魔女??」

 



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