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31.人を映す魔法
「ほうほう、それはどのようなものでしょうかな。もしかして、人物の本でも見せていただけるのでしょうか」
「いや、それじゃあない。けど、それに近いものともいえる」
シャロレッタはそういうと、低めのテーブルの前のソファーに座った。
「面白いものが見えるよ」
シャロレッタがそういって手を前に出すと、目の前の空間がゆらゆらとゆがみ、テーブルをのみこんだ。
「こ、これは……」
じぃが後ろからのぞきこむ。
ゆらぎがおさまった後のテーブルには、街の広場の様子が映っていた。
そこでは、可憐な少女が猫や鳥など様々な動物の形の魔力を自由に動かし操っていた。
「こ、これは……すばらしいですな」
じぃが感動したようにいう。
それもそうだろう。魔道具もなしに別の場所を映すなんてことができるのはわたしくらいだろう。しかも、音まで聞こえるのだ。
とはいえ、今回成功したのは、魔力が安定しているこの書斎であることも大きいが。