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俺の後ろの珍獣人  作者: 京都支社
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変態ヤロウとの日常

 桜舞い散るころ、俺の中学校では始業式が行われた。今年で、俺は中学3年。要は受験生になったのである。この一年間は受験勉強のため忙しくなるのは覚悟しているのだが、青春を放棄したわけでもない。「文武両道」ならぬ「文青両道」。これを目標として行こうと固く決心した…のだが、そう上手くは行かないものである。


 俺の考える「青春」とは、美しいものだ。決して汚れたものではない。


 今日で、3年生が始業してから一週間が過ぎた。同じクラスには、前から友達だった奴と、新しく同じクラスになった奴の半々といった感じだ。別段嫌なヤツもおらず、とても良いクラスなのだが、俺には困ったことが起きていた。


 最近、ホントここ最近、視線を感じるのだ。別に俺が自意識過剰なわけではなく、本当に視線を感じる。それも、特別いやらしいのを。まあ、犯人はすでにわかっている。犯人は俺の席の後ろの『山田屋』と呼ばれる人物だ。『山田屋』は苗字であり、全国的にも珍しく、日本中でおよそ50人程度しかいないと言われている。そんな絶滅危惧種『山田屋』とはこちらが一方的に知っているだけであって、直接面識はなかったはずなのだ。


 始業式の日、俺自身、コミュ力が特別高いわけではないので、ガチ陽キャみたいに出会って5秒で友達になれない。そのため、俺は、去年から同じクラスだった仲のいい友達と会話をしていた。そこに割り込むようにして現れたのが『山田屋』である。


「やあ!久しぶり!」


 これが『山田屋』が俺に発した初めての言葉。


「いや、誰だよ!」


 そうツッコミを入れてしまうのも無理はないと思う。久しぶりどころか、間近で顔を見たのが初めてなのだから。この瞬間、俺は察した、


『やばい奴だ』


 と。


「山田屋、だっけ?俺はお前と会ったことあった?ない気がするのだけれど…」


「はじめまして、かな」


 なら初めからそう言えよ!


「改めてよろしく!はじめ!」


 よろしくしたくねー。しかも、いきなり下の名前かよ!


「ところで、俺に何か用があったのか?あいさつだけ…ってこともなさそうなものだけれど」


「えっ………いや、特には……あっ!今日はいいお天気ですね……」


 はっ?


「し、失礼しましたー!」


 そう言うと、『山田屋』は陸上部でつちかったであろう自慢の脚力で廊下に飛び出し、俺の視界から消えていったのであった。


「いったい何なんだよ。あいつ」



 これ以降、始業式の日、『山田屋』と話すことはなかった。







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