97話 17歳 スティナラニアのレイド
7月の中頃になったところでしょうか。今日はスティナラニアのレイドの日ですよ。どうも、ヘルマンです。小魔金貨の両替も沢山してきたので足りないという事は無いだろう。どれだけ集まるか解らないけれど、今回は戦ってもらうレイドですので、戦えない奴は置いていくぞ。
集合場所に向かった時に、ジュリオさんと一緒になった。盾使いで騎士爵は珍しいかもしれないが、盾使いは有用だからな。何人いても良いんだけどなあ。パーティーに1人欲しいよね。ヘイト管理できる奴が。そんな訳で集合場所に集まると、200人くらい集まっている。…今日は楽に稼がせてやらんから命が惜しいものは置いていく。多分いつものレイドと思って参加している奴もいるだろうからな。さて、一発言ってやらねば。ルカさんとマウロさんはすでに揃っている。では、話をしてから出発しましょうか。
「今日集まってくれた者には感謝する。今日はスティナラニアのレイドだ。スティナラニアは僕たち騎士爵4人で相手をする。今回のレイドはそれ以外の魔物を相手にしてもらう。道中は魔物を相手にしなくていい。スティナラニアとの戦闘が始まったら他の魔物が寄り付かない様に討伐してくれ。今日は押しつけをやるレイドじゃない。戦ってもらうレイドだ。ケルピーを相手に出来ない奴は残れ。死にたくない奴は残れ。命の対価に見合うと思ったものだけ連れて行く。質問がある奴はいるか?」
「討伐した魔物の取り分は?」
「僕たちレイドを起こした者に取り分の権利があるものと考えてくれ。今日の報酬はスティナラニア1体に付き小魔金貨1枚だ。そんなはした金の計算をしたけりゃついてこなくていい。」
「何体か狩るのか?」
「時間の許す限り狩る。スティナラニア2体の所には突っ込まない予定だ。ミズチであれば2体でも行く。3体は引くと考えてくれ。」
質問はそれだけで良いのか? どんどん受け付けるぞ? まあ、覚悟が決まってない奴は離れて行ったがな。今回は楽させてやれないからな。さてと報酬の使い道も話しておこうか。
「さて、質問もない様だし、報酬の使い道について話しておこう。この夏、何度もこのレイドを起こす。そして小魔金貨を10枚貯めてくれ。そして僕のお店に来てくれ。そこで星の川という錬金アイテムを買ってもらう。それは自分に振られた星を4つ増やすものだ。…ここまで言えば解るか? そうだ、君たちに騎士爵を目指してもらいたい。今日募集したのは星4つ以上の者たちだ。そうすれば星8つ以上になるはずだ。それだけ星を振られたらミズチくらいは倒せるようになる。騎士爵の年金は大魔金貨5枚だ。金が欲しいもの名誉が欲しいもの、結婚相手に要求されているものは是非とも頑張って貰いたい。以上だ。では行くぞ! 目標はスティナラニア! 最低でも1体! 僕に続け!」
「「「「「「おう!」」」」」」
さてさて、魔境を駆け足で走り抜けていく。邪魔な魔物を斬り飛ばしながら奥へ奥へと進んでいく。目標はスティナラニアの討伐だ。まずは1体で孤立している奴を狙わないとな。ミズチが混じる可能性も考慮したとしても、30分以上は戦うことになるだろうからな。気合を入れていくぞ。
奥に入って2時間、まずは1体目のスティナラニアを捕捉した。さて、一声かけないといけないだろうな。浮足立ったりされても困るし。100人弱に減ったレイドに向かって激を飛ばす。
「全員止まれ! スティナラニアを発見した。これより作戦行動に移る。諸君らはスティナラニアの周りの魔物を狩るだけでいい。こちらには参戦してこなくていい。やることはいつもとは違うぞ。気合を入れていけ!」
「「「「「「おう!」」」」」」
「ジュリオさん!」
「解っていますよ。魔物呼び! ―――来ますよ!」
スティナラニアがこちらに突っ込んできた。僕は飛剣で削りながらジュリオさんに任せる。そして体当たりを、衝撃を地面に受け流すように盾で受けたジュリオさん。星分の仕事はしてると思いますよ。
「首を狙います! ルカさん! マウロさん!」
「任せろ!」
「はああああああ!」
首を狙って全力で振りぬく。マウロさんが鞭で削った所にブロードソードを叩き込む。…硬い。ミズチと全然違うぞ此畜生。燕返しをする余裕すらない強撃を乗せた全力の振り下ろしだったんだが、8分の1も削れたか? 反対側からはルカさんが削りにかかっているが、そちらも2,3撃叩き込んだようだが、芳しくない様だ。
「いったん離脱! 暴れさせて突進を誘発させる!」
「止めるのは任せてください!」
「おいヘルマン! 思ったよりも削れてねえぞ!」
「想定の範囲内です! 30分は戦いますよ!」
「まったく! 辛いレイドだな!」
首の傷が痛いのか暴れるスティナラニア。あの硬いのを一撃で落としていた鉄迎派の人は本当に人なんだろうか? 鍛錬が足りていない。筋肉が足りていない。そんな僕は黎明派。でもやってやれないことはない。何度も何度も斬ればそのうち首は落ちる。ジュリオさんが暴れるスティナラニアを受け流しつつ、頭を押さえつける隙を狙っている。僕たちは遠距離攻撃で首を狙うだけだ。鞭でも槍でも飛剣と同じことは出来る。星が増えたので多分できる様になると伝えていたが、ちゃんとできる様になっているみたいで。遠くからでも削れるぞ。お前は突進してくるしか無いんだよ。
「無理にでも狙って行きますから、攻撃は任せますよ。」
ジュリオさんが暴れるスティナラニアの頭を押さえに向かった。無茶な気がするが、本人が出来るっていうなら任せましょう。受ける攻撃は苛烈になったが、隙があったんだろう。頭を押さえつけるのに成功した。やりますね。
「一斉攻撃!」
「はあああああ!」
「うおおおおお!」
削れている傷口をさらに抉って行く。中に行くほどに硬い。想定以上に時間がかかりそうですね。まだ、4分の1も削れてませんが、痛いところまで抉ったのかスティナラニアがまた暴れた。そうして少し暴れた後に若干静止して狙いをこちらに付けてきた。
「ウォーターボールが来ます! ジュリオさん受けきって! 威力を削りますよ!」
飛剣、飛槍、飛鞭がウォーターボールに飛ぶ。少ししか削れないが、受け止めてくれよ! ジュリオさんに向かってウォーターボールが飛ぶ。受けきれるか…⁉ オッケー立ってる。それだけで十分。
「受けられます! また押さえつけに行きます。」
「任せます!」
暴れるスティナラニアに向かって行くジュリオさん、やっぱり盾使いは必須だよなあ。あの暴れるのにむかって行くのは怖すぎる。…何発かいい感じの攻撃を喰らっているようですが、ジュリオさんは無事だし、作戦に変更はなし。隙をついてまた首を地面に押さえつけた。
「頼みます!」
「任された!」
「おらあ、削れろ!」
強撃を乗せた攻撃を3回目。骨に若干触れたか? さらに硬いものに当たったぞ。次で行けるかな? そう思っているとジュリオさんから指示が飛んだ。
「連続で押さえつけますので、そのまま攻撃を!」
「了解!」
「落ちろぉ!」
「うらあああ!」
骨まで届け! ―――いった! 斬った!
「骨まで行きました! 弱りますよ!」
「後は任せろ!」
「削り切れ!」
剣と鞭と槍の攻撃が乱れ飛び、首を落とした。予定よりも速い撃破だが、これで戦えることが判ったが、1日に何回出来るかなこれ。体力がかなり削られますね。とりあえず、レイドを集合させましょう。
「討伐終了! レイド集合! レイド集合!」
ボロボロになっている冒険者もいるが、上級ポーションを使っておいてくださいね。…ケチるのは良くない。万全の状態にしておいてくださいよ。
「1時間程休憩する! 各自外周を警戒! 今度は皆で叩くぞ!」
この場で1時間の休憩です。この場なのはこの場を粗方掃除したからです。魔物が湧くのも暫く時間がかかるでしょ。
「お疲れさん。ジュリオ、まだやれるか? お前次第だ。攻撃側の方が余裕があるだろ。」
「まだまだいけますよ。…上級ポーションは飲みますが、それだけで良いですから。まだ行きましょう。」
「解った。無理すんなよ。」
「同感ですね。ジュリオさんがこのパーティーの核なので。」
「重い責任ですね。ですが、先ほどの感じだとまだやれそうな感じですし、…ヘルマンさんからピッタリ長靴を聞いていて良かったですよ。麦藁靴じゃこうは行きません。」
「確かに戦いやすいよな。靴が違うとこうも違うのかって思ったぜ。」
和やかに会話が出来るくらいには皆さん余裕が有りそうですね。…僕もまだまだ鍛錬が足りませんね。体力は才能では無いですからね。雑魚専でも良いんですが、やっぱりレイドで強敵に挑むのはワクワクしますね。…鉄迎派では有りませんよ、黎明派です。解っているつもりなんですがねえ。
そうして、時間いっぱいまでレイドをこなしました。合計で3体のスティナラニアを狩れました。ミズチもついでに4体狩りましたが。冒険者ギルドの職員には頑張って貰おうじゃないの。ああ、ケルピー以下の死体も回収しましたよ。そう言う約束のレイドですからね。冒険者たちには小魔金貨3枚を渡しつつ、人数を数えていた。…87人か。思ったよりも少ないな。…この中の何人がミズチを倒し、騎士爵を手に入れるんでしょうか。楽しみですね。星の川も今回のスティナラニアの水晶鱗で沢山作りますからね。…錬金術ギルドからまた大量購入ですよ。スティナラニアは最近は討伐されていないと言っていましたが、素材は有ったので先に購入して星の川作りは開始しているんですよ。都合100個程作って有ります。まだまだ作りますよ。今回は87人でしたが、だんだんと増えていくでしょうしね。…とりあえず、次回はまた7日後で良いでしょう。久しぶりにこれだけ全力戦闘しましたからね、疲れました。いつもの雑魚戦の連続は戦闘というより作業感が半端ないですからね。全力戦闘すると、なんかこう、生きてるーみたいな感じがして良いんだよね。…当方黎明派ですが。そんな訳で今日は疲れました。お風呂に入ってゆっくりしましょ。錬金術の方も進展が有れば良いんだけどなあ。無いんだよね、これが。まあないものは仕方ないので、何とか考えましょうね。とりあえず、今日の所はまず風呂! 疲れた後の風呂は気持ちいいぞー。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。




